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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』  作者: 橋本 直
第二十六章 差し入れとはまり役

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第119話 あまりのはまり役

『見つけたぞ!熊っころとおまけ共!』 


 突然響いたのはかなめの声だった。現実に引き戻された小夏とサラはもみの木の巨木の上に立つ女性の影に目を向けた。それはランではなく胸の膨らみを強調するような衣装を纏った新たな機械魔女の姿だった。


木の枝に立って唇を舐め上げるタレ目の女幹部の表情が拡大されていた。他でもないかなめがその役だった。その手に持った鞭の扱い方はまさに現役の『女王様』らしく手慣れたものだった。


「やっぱり鞭ですか、武器は。デザインしておいてなんですが、西園寺さんに鞭は似合いすぎますね。さすが現役の『女王様』。いつもあれでかえでさん達をいたぶっているんですね。僕はかえでさんと違ってマゾじゃないのでぶたれるのは嫌ですが」 


 誠は興奮気味に画面に吸いつけられた。カウラは誠の上昇していくテンションについていけないというように誠の顔を見つめた。


「おい、あいつ嫌だとか言ってた割にはのりが良いな。やっぱり鞭で敵を倒せると言う設定が気に入ってるんだろうな。本当に根っからのサディストなんだな、かなめ坊は。我が姪ながら恐ろしいものだ」 


 そう言って嵯峨は茶をすすった。春子は空になった嵯峨の湯飲みに緑茶を注ぎながら様子を伺っていた。


「西園寺さんはお祭り好きですからねえ。きっとお祭り気分で演技してるのよ」 


 そう言って春子は微笑んだ。だが、誠は狂気をたたえたタレ目で小夏達を見下ろしているかなめから離れなかった。いつも射撃レンジで銃を取ったときの近づきがたいかなめの姿を髣髴とさせて背筋に寒いものが走った。


『貴様達などメイリーン様の手を煩わせるまでも無い!行くぞ』 


 そう言って鞭を掲げてかなめは飛び降りた。小夏とサラがその鞭に弾き飛ばされた。


『小夏!』 


 何とか鞭をかわしたグリンがバリアのようなものを展開した。その中で小夏は足に怪我を負いながら立ち上がろうとした。


『結界……愚かだな!その程度の魔力でこのキャプテンシルバーの鞭を防ぎきれると思ったのか!』 


 そう言ってキャプテンシルバーことかなめは鞭を振り下ろした。


「こいつ実は好きなんだな。こういうの。そのまま特撮物のオーディションにでも出ればいいのに。パチンコの台には特撮物をテーマにしたものもあるからな。その中当たりは大体、敵の女幹部を倒す場面になる。西園寺はその女幹部に最適な雰囲気をしているな」 


 カウラはそう言いながらおはぎを口に運んだ。誠は画面の前で手に汗握って画面に集中しているアンに苦笑いを浮かべながら茶をすすった。


「西園寺さんらしいというか……」 


 誠はそう言いながら再び画面に目をやった。


『小夏、サラ!願って!』 


 絶え間なく振り下ろされるキャプテンシルバーの鞭を受けながらグリンは必死になって叫んだ。


『何を願うのよ!小夏。逃げましょうよ!』 


 サラがそう言ってよろよろと立って、鞭を振るうキャプテンシルバーをにらみつけている小夏の手をとった。


『逃げないよ、私は!』 


 そう言うと手を天にかざした。彼女の手が輝き魔法の杖が現れる。高らかなファンファーレと共に小夏の体が光りだした。


『森の精霊、生き物の息吹。私に……力を!』 


 その叫び声と共に小夏の全身が光り始めた。そのまま来ていたTシャツが消え去り、素肌を晒しが小夏が画面の中でくるくると回った。


「あのさあ、神前。なんでこういう時ってくるくる回るの?」 


 嵯峨が誠の耳元でささやいた。驚いて飛びのいた誠は珍しく純粋に疑問を持っている顔をしている嵯峨を見つめた。


「そのー、まあお約束と言うか、視聴者サービスと言うか……」 


 かなめと同じ質問をしてくると言うことはやはり嵯峨も甲武育ちなんだと誠はしみじみと感じていた。


「なるほどねえ……これがサービスになるんだ。俺も会議の際にはくるくる回れば上の覚えもめでたくなるかね」 


 そう言って嵯峨は口の中の餡の甘みを消そうと茶を啜ってそのままぐちゅぐちゅと口をすすいだ。


「隊長……下品なことは止めてくださいよ」 


 カウラはそう言いながら苦笑した。


「すいません。根が下品なもので」 


 謝る嵯峨。彼を見て春子は自然と微笑んでいた。画面の中ではかなめの鞭に次々とシールドのようなものを展開して攻撃を防ぎ続ける小夏の姿があった。


『小夏!守ってばかりじゃ勝てないわよ!』 


『お姉ちゃん!そんなこと言っても!』 


 いつの間にか変身した姿で手に鎌を持ってサラは宙に浮いた。質問したいことがいくらでもあると言うような顔で誠を見つめているカウラにどう説明したら良いかを考えながら画面に目を移した。


 そこには火炎の玉を目の前に展開する小夏の姿が写っていた。


『森、木々、命のすべて!私に力を貸して!』 


 そう叫ぶと小夏が杖を振り下ろした。何度か変則的に曲がって飛ぶ火の玉。そしてその周囲の空間がそれ自体が燃えているように画面を赤く染めた。


『なんだと!これは……うわー!』 


 そう叫んでキャプテンシルバーことかなめはその火炎を受け止めるべく鞭を握って結界を張るが、勢いに負けて吹き飛ばされて崖へ追い詰められた。


『こんな……こんな筈では……私ともあろうものが……』 


 あちこちコスチュームがちぎれて非常に際どい子供には見せられないような姿を晒した。それにあわせて画面に夢中のアンはさらに近いた。


『私が……負ける……?そんなことは有ってはならない!有ってはならないんだ!』 


 アップにされたかなめの姿を良く見ると腕やふくらはぎから機械の様な色を放つ内部構造が見えた。



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