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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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PK戦 その6

 盾を構え守りの姿勢を見せるタンク。この体勢に入れば確かに並大抵の攻撃では倒し切るのは難しいだろう。だったらと待機させておいたバーサークを行使した。基本的にタンクはVITが高い傾向にあるがMNDまで同レベルで上げているプレイヤーは少ない。

 そして剣士が避けたデバフが殆ど効いていた所を見ればバーサークのレジストに成功する確率は低い。


 漆黒の虫のような物がタンクの身体に入り込む。......どうやら、判定に成功したようだ。PKは大抵が偽装や隠蔽と言ったスキルを習得しているのでステータスを覗くことは出来ない。しかし、デバフによるエフェクトまで誤魔化すことは不可能だ。


 樹王を上段に構える。タンクは盾を構えて不動を保った。


 さて、この一撃を防げるか。間合いに入ると同時に樹王を振り下ろす。空気を切り裂き、風を鳴らしながら進む刃はタンクの持つ盾にぶつかった。上半身を隠せてしまうほどに巨大な盾であるが樹王に触れたと同時にゴッ、そんな音を立てながら拉げた。


 盾が凹み、それでも刀は止まることなく進む。衝撃に耐えることが出来なかったタンクの腕が弾かれ、胴ががら空きになる。その隙を突くように返す刀で切り上げ、顎を撃つ。

 しかし、それでもタンクは死なない。ヤツのVITが高いのもあるだろうがヘルム越しに顎を撃つだけでは脳震盪を引き起こすだけだからだろう。

 なので私は一歩距離を詰め、掌底を放った。確実に殺すために胴体ではなく、頭部に。一拍置いて衝撃が解放される。


 震撃は防御不能の攻撃。ヘルム越しであろうと振動が届く限り、死は免れない。ヘルムのスリットから光が漏れるのを確認し、剣を構えるだけで距離を詰めようとしてこない剣士を見る。


 タンクは結局オリジナルスキルで抵抗してこなかった。実は既に反撃系のオリジナルスキルを使っていたと言う可能性も捨てきれないが今の状況を鑑みるにつまりそう言うことなのだろう。


 縮地を使って剣士との距離を詰め、樹王を横に振るう。すると剣士は今までのPKのようにカウンターやパリィと言ったアーツを使うことなく、直ぐさま後方へ跳んで回避した。

 最初から私と戦う気は無く、ひたすら回避に集中するつもりだろう。それが意味することは事を構えればオリジナルスキルの制約に反すると言うことだ。

 剣士でありながら攻撃をしてはいけない、将又ダメージを受けてはならない。これらの制約を科した効果は厄介極まりないものであるのは想像に容易い。


 白黒の十字架を横目で見てそれぞれ10個以上展開されているのを確認し、反撃覚悟で攻勢に出る。


 踏み込みと同時に刀を押し出し、突きによる攻撃。それを剣士は大きく右に跳ぶことで回避する。続いて上段から下段へと斜めに切り裂く。しかし、またもや剣士は前転の要領で回避する。


 楽をしたがる思考が私に導魔へ得物を変えろと誘惑してくる。しかしと、意思の力で誘惑を断ち切り、意識を先鋭化させる。今ここで導魔をメタモルフォーゼで取り出せば黒茨の槍が送還されてしまう。

 虚刀は便利であるが技を衰退させる諸刃の剣でもある。この先、導魔一本で戦い残れるほど甘くはないだろう。


 攻之術理 羅刹


 漏れ出す殺気を一点に集め、放つ。それが羅刹と言う術理。遥か昔、戦でひたすらに人を斬った剣士が編み出した相手の行動を封じる技である。


 通常の何倍も濃密な死の気配が剣士を襲った。仮想現実でありながら死の恐怖は脳裏にこびり付き、思考に空白の時間を生み出す。生まれたての小鹿のように手足が震え、足を止めた剣士の首が跳んだ。

 心が弱い者、命を賭けた戦いを知らない者ほどこの術に掛かりやすい。この剣士も動きこそはなかなかだったが殺意に耐えられる程の死線は超えていなかったのだろう。


 剣士が光となって消える。同時にガラスの破砕音が響いた。警戒を顕わにし、周囲を窺うも変化はない。


「結界型の効果だったか」

「お前を逃がさないようにする結界だったんだがな。てめぇのせいで計画を練り直さなきゃいけねぇ」

「それは済まないことをした」

「うるせぇよ。ああ、時間稼ぎなんて考えなきゃ良かったぜ。最初からこうしてればな」


 黒茨の槍に突かれ、樹に縫い付けられていた魔戦士は込められたMPが尽きたことで茨が消滅したのを良いことに拘束から抜け出していた。

 タンクが意味深な行動をするものだから先に殺してしまったが本来ならこの魔戦士を先に潰しておきたかった。戦闘が始まってからそれほど時間は立っていないがそろそろPKの増援が来る可能性がある。


「ぶっ殺してやるよ。来い、魔剣エレメント!」


 やはりこの男は沸点がかなり低いようだ。勝手に自分で納得し、勝手に怒りだす。もしや! コイツが七つの大罪、憤怒の持ち主か!? と、意味のない現実逃避をする。


 男が持っていた剣が炎に包まれた。男は二つ目のオリジナルスキルを使用した。名称からして魔剣を呼び出すものであるがヤツが魔戦士であることを考慮すれば魔術に関連する効果だろう。


「お前は確実に殺す」


 男が二度剣を振るう。それだけで炎の剣と槍が生み出された。


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