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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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第一回スタンピード対策会合

 今、私たちは一つの扉の前に立っている。

 この扉を開ければ中にいるのはAWOを始めたばかりのプレイヤーでさえも一度は耳にしたことのある名の売れた猛者どもだ。

 それが理由で入るのをためらっているわけではないがあいつらは一癖も二癖もある面子なので常識人の私は彼ら彼女らに合わせるのが大変なのだ。


 そうそう、話は変わるが、今私がいる場所はお察しの通り冒険者ギルドだ。

 王都に着いた時点で会合の時間が迫っており、直ぐにギルドに向かうことになってしまったと言うわけだ。

 時間があれば観光でもしてみたかったのだがよくよく考えればこの時間で空いている店は少ないだろう。そう言う意味では暇な時間を作らないで済んだとも言える。


 まあ、そんな話は置いておくとして、ギルドに着いてからは時間があったのでCランク昇格試験の予約をしておいた。

 何と言ってもCランクにならなければクランを創設することが出来ないのでどうしても受けておきたかったのだ。それに昇格試験は明日を逃せば5日後になる。そんな事態になれば何のためにダンジョン攻略を転移石ありでやって来たのか分からなくなってしまう。


「入るか」

「俺は問題ないぞ」


 隣にいるのは一刀だけだ。

 教授たちのおかげで冒険者ギルドの会議室を借りることが出来たが部屋の広さはそこまで大きく無かったようで各クランにつき2人までとなった。

 私たちはまだクランに入っていないが、どうせ近日中に設立する予定なので今回の会合に参加するのは私と一刀だ。


「随分と遅かったですね。ギリギリですよ」


 早速とばかりに扉を開けて部屋の中に入ると入り口近くに座っていたアーサーから声を掛けられた。

 どうやら私たちが最後だったようだ。

 少しばかり室内を見回せば強者の匂いを漂わせている者が数人ほど私と一刀を見ている。時間ギリギリの登場は僅かばかり注目を集めてしまったらしい。

 まあ、しかたがない。71階層攻略から急いで来たが余裕を持った行動とはとても言えなかったからな。


「私は野暮用だ。斯く言うお前も入りは遅かったようだな」

「はは、私も野暮用ですよ」


 さしずめダンジョン攻略だろう。

 私たちが乗った馬車にはいなかったところを見ればそれより1つか2つほど前の馬車に乗って王都に向かったに違いない。


「これで全員集まったようですね。それでは夜も遅いことですし、早速ですが本題に入りたいと思います」


 円卓を囲むように座席が並ぶ中、出入り口から一番離れた席に座っていた教授が立ち上がった。


「今回の会合に集まってもらった方々については各々が既に存じていると思われますので紹介は省かせてもらいます」


 確かに全員がβの時からの知り合いなので自己紹介は必要ない。

 しかし、製品版になって選択できる種族が増えたため外見に多少の差異が生じている。それに髪色が変わっていたりと大学デビューしちゃいましたと言わんばかりに派手なイメチェンをしたヤツもいる。


「まずは現状について話しておきましょう。私たち叡智の探求者が調べた限りでは、現在スタンピードと思わしき現象は見つかっておりません。また、掲示板の情報も精査しましたがこれと言った手掛かりは掴めませんでした」


 ワールドクエストが発生してから8時間ほど経過したが未だ魔物の大群を見ることが出来ていないようだ。私もここに来る途中、掲示板を利用して情報収集をしてみたが教授と同じ結論に至った。


「そもそも前提が違うってことはないのかしら? スタンピードが魔物の大量発生じゃないとか」


 離れた場所にいるミサキさんがそもそもの疑問を投げかける。

 私としてはスタンピードは魔物の氾濫と言う意味で使われていると思うのだが固定概念に縛られない視点は重要だ。


「いえ、スタンピードは魔物が大量発生することを指します。これは王都にある王立図書館で確認したので間違いはありません。参考にした王国史によるとスタンピードとは魔泉、所謂魔力溜まりが何かしらの要因で決壊する時に起こるようです」

「そうだったのね。話の腰を折ってごめんなさい」

「疑問があれば聞いてください。スタンピードが始まればこちらも個ではなく集団で挑むことになります。その時にトッププレイヤーとして名が知られているあなた方が先導するためにも多少の専門知識は知っておくべきですからね」

「そうか。じゃあ、質問なんだがスタンピードの発生場所が魔の森だと言う根拠はなんだ」


 ミサキさんに続いて質問をしたのは大手生産職クランであるライブラリのマスター、エストさんだ。

 種族はドワーフでファンタジーによくある小柄でムキムキの見た目をしている。設定上、そこまで身長はいじれないので現実でも同じくらいの背丈なのだろう。


「その情報に断定できる根拠は有りません。しかし、我々の推測でも魔の森がスタンピードの発生場所で間違いはないと考えています。これには二つほど信頼性を高める情報があり、その一つが魔の森には魔力溜まりが発生し易いと言うこと。二つ目が長く続く王国の歴史において魔の森では何百回とスタンピードが起きていることです」


 スタンピードが三桁以上の回数起こっていたのか。

 まさか、数年に一度起こるようなものではないと思うがそれなら住民の中にも戦闘経験者がいるかもしれない。その者たちの協力を得られれば多少は私たちも動きやすくなるだろう。

 こういう時こそ権力を振りかざすべきなので、後で教会に寄っておくとしよう。


 それから数十分ほど知識のすり合わせを行い、議題はこれからの行動方針に移った。しかし、スタンピードがどこで起こるかが確定していない状況では打てる手は少ない。

 そのため、少しの斥候を魔の森付近に派遣し、当分はワールドクエストの失敗条件となっている王都に滞在しながら様子見と言うことで話は纏まった。


 だが、そこでこの世界は本物だとする世界派のクランが主要五都市以外の街はどうなるのかと言い、飽くまでもこの世界はゲームであるとする遊戯派が効率を重視するなら見捨てるべきだと言い返したため場の空気は最悪のものとなった。


 私は中立派だが、これまでの経験から住民をただのAIと言い切るのは難しくなってきたので他の村の扱いがどうなるのかは気になるところだ。場合によってはここを一刀たちに任せるのも良いかもしれない。


 そんな風に考えていると話に折り合いがついたのか、世界派クラン筆頭のメビウスと【少女】愛で隊【幼女】が明日、明後日で周囲の村にいる住民の避難を率先することになった。


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