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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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王都

 ガタゴトと車体を揺らしながら私たちが乗っている馬車は街道を進んでいた。

 かれこれ2時間を超える馬車旅は座席の不快さも相まって優雅な旅路とは言えないが、私たちは訪問者なので時間が来るまでログアウトして各々が現実世界で暇を潰していた。

 斯く言う私も先ほどまではダンジョン攻略の疲れを癒すかのように一杯ひっかけていたところだ。


「あれが王都か」


 流れるように景色を映す窓から外を覗けばそこには白亜の城があった。

 時刻としては22時を回り、夜の帳が既に降りきっているが悠然として堂々たる白亜城は僅かな月光を反射させながらその存在を示していた。


 馬車に乗っていても数十分は掛かるだろう道のりが残っていると言うのに、かの城は魔の森の如き巨大さを誇っている。


「センチメンタルぽいところ悪いけど会合の場所は冒険者ギルドだってさ。ギルドの方にも協力を要請したみたいだけどまだ僕たちの信用は薄いみたいだね。場所の提供だけしてもらえただけだって」


 滾る戦欲も殆ど鎮火し、一種の燃え尽き症候群のようになった私を馬車内に戻して聖は今後の予定を語った。


 ワールドクエストによって引き起こされるスタンピードと言うことで教授たちは冒険者ギルドに協力要請を出したようだが断られた。と言ったが、さもあらん。

 なんだかんだ濃厚な日々を過ごしているせいで忘れがちだが私たちがこの世界に降りてからまだ2週間も経っていないのだから。


 私個人は師匠の弟子になったことで多少の信頼を寄せてもらっている。まあ、信用されているかは微妙なところだが。それはさておき、私以上に住民たちに信頼も信用もされていない訪問者なら協力要請など受け入れられるはずがない。

 特に冒険者ギルドと言う旧大陸を除く全大陸に支部を持つ強大な組織ならばなおさらだ。それでも会議室を借りられたのは単に教授たちの尽力のおかげだろう。


「それと今回の会合に来るのは何時もの面子だね。急遽決まった会合だから集まれるクランは少ないはずだけど想像以上だったよ」

「個人組は来ないって話だったよな?」

「明日には王都に向かうって連中もいるが今はダンジョン攻略がブームだからな。王都近郊ではまともに稼げんし、こっちに来るプレイヤーの方が少数だろ」


 一刀の言った通り森林の街から迷宮の街まで向かう定期馬車は尋常ではない程に混雑していたのだが私たちが今乗っている王都行きの定期馬車は夜と言う時間帯を考慮しても圧倒的に空いていた。


 まあ、それも仕方がないことだ。

 王都に辿り着いたところで大したコンテンツもないのだから。確かに国の首都として他の街よりも広く、賑やかと聞くが王都近郊には大した魔物も出現しないらしい。

 それ故に王都にいるプレイヤーは大手クランの者たちか他街とは違い、贅を味わうために訪れる者くらいだ。


 これもプレイヤーのレベル帯がもう少し底上げされれば変わるのだろうが何はともあれ現状は変わらない。


「王都にプレイヤーが集まるのもどうかと思いますがね。それにしてもちょうど良いタイミングでワールドクエストが始まりましたな」

「てか思ったんだけど始まりの街とか危なそうじゃね? あの街のプレイヤーの数は少ねぇだろ」

「ま、仕方ねえよ。俺らが行く予定はないし、鉱山の街にいるプレイヤーが稼ぎを目当てに移動するんじゃねぇか?」


 今のプレイヤー分布だとどうしても偏りが生じてしまうのは仕方が無いことだ。

 進行具合的に考えても大抵のプレイヤーは初心者と言う枠から脱し、経験値や上質な装備やらを求めて次なる町に向かうからな。

 その中でも高レベルのプレイヤーは迷宮の街でダンジョン攻略を進めている。

 だが、ゲーマーとしてこの大規模イベントを見過ごすことはないだろう。

 人が集まる街はどうしても一人当たりの稼ぎが少なくなるわけだから目聡い連中は過疎地に移動して経験値稼ぎをしようとするはずだ。




「そろそろ王都に着きますよ。支度をしといてくだせぇ」


 御者から声が掛かり、会話を中断して身支度を整える。

 王城が見え始めてから幾分と経ったが遂に王都に辿り着くことが出来た。


 訪問者が活動しているからなのか知ることは出来ないが、随分と遅いと言うのに壁門は開かれており、問題なく馬車は入って行った。


 あれだな、定期馬車に乗って移動すると身分証の提示をすることなく入れるので楽だ。

 冒険者ギルドに入会しているので入市税は掛からないが門を抜ける時に見た長蛇の列に並ばななければいけないと思うと億劫だ。


 見た限り、王都に入るために並ぶ列にはプレイヤーらしき者は数人しかいなかったのでその殆どが住民なのだろう。果たして彼らはスタンピードが起こると知ってここに来たのか。


 私が出向いたことのある場所は王都を含めれば主要五都市と呼ばれる王国の中でも王家に連なる者が統治する街だけだ。

 無論、それ以外にも街や村はあるようだがこれと言って特徴もないため立ち寄ることは無かった。

 しかし、そこにも住民たちは住んでいるわけで、今回のスタンピードの震源地になるのではと噂される魔の森の近くにも村々が点在している。


 誰これ構わず手を出すほど正義感に溢れているわけでも、若くもないが......もしスタンピードが魔の森で起きた時、一番に被害を被るのは彼らなわけだ。

 少しは気に掛けておくようにするか。


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