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No.15「転校生と向日葵の花言葉」

 チャイム。聞き慣れた音色。味気のないつまらない音。


 もう聞き続けて何年になるだろうか。年数を唱え、ゆうに二桁を越えている事に気がつけば、学生の本分を全うするのも楽ではないなと、誰でも一度は思うだろう。


 人生の半分以上は学校以外で過ごすのだから、学生の内は辛くても勉学に励めと無責任な事を言う大人達もまた、その道を通過してきた人達だ。だからこそ学校や勉強に疑問を覚えながらも、日々自分への甘えと戦いながら登校する。


 しかし学生達は、生まれてこのかた学びの場以外を知らないのだ。つまり学校が全てで、社会の縮図である教室という檻の中で翻弄され続ける。そんな子供達に、大人が将来の為、社会の為にと説いたところでまるで実感が湧かない。現実味がこれっぽっちもないのだ。もちろん全ての人に当てはまる訳ではないが、過半数を占めるのが実態である。


 ただなんとなく流れに身を任せてきた。「そこに山があったから」そんな精神でいた方が楽だ。けれど、それでは夢もなく目標も明確ではない。それが苦痛にもなり得るので、思いつめすぎずに将来について考えるのは難しいものだった。


「はいおはよう。今日は挨拶とかいいから座ってて。紹介したい人がいるんだ」


 そんな学生達が学校生活に面白味を求めたところで、(バチ)は当たらないだろう。転校生を紹介する時の前振りに、早くも教室内は湧いていた。


「ねぇティアちゃん、転校生ってどんな人だろう。楽しみだね!」


「あはは、そうだね」


「入っていいぞー!」


 丁寧に開かれる教室の扉。現れたのは白髪(しろかみ)の男性だった。


「バルドゥイーン・フォンシラー君だ。イギリス生まれで六歳に日本へ来て……? 次の年、小学生になってから今年まではアメリカに留学していたんだっけ? うん、確かそうだ」


 面倒な経歴に頭を掻きながら思い出しているようだった。担任の曖昧な記憶の信憑性はかなり低く半信半疑だったが、本人が否定しないのだから大きく間違っているという事はないだろう。


「バルって呼んでください。今日からよろしくお願いします」


 笑顔が素敵な王子様風の帰国子女。女子からの熱い視線を集めるには、充分すぎるくらい充分な肩書きと容姿だった。


「ねぇねぇティアちゃん、バル君ちょーイケメン! やばくない? 何あのハイスペックさ!」


「あはは……」


 ――あくまで他人のフリをしよう。仕事は仕事、学校は学校だ。


 バルは人外対策局の人間だとは知られていない。つまり、わざわざ公言する必要はないのだ。顔としてマスコミに売り込まれた右京隊とは違う。トラブル回避をするには、それが一番望ましかった。


「席は一番後ろにあるから、そこに座って」


 やはり転校生の席は後ろのようで、同じく転校生のティアの隣だ。机が新たに追加されている事に気づけなかったのは、考え事をしていたからだった。


「やあティア、Good morning! 清々しい朝だね」


「……おはようございます!」


 バルは長年付き添ってきた友達と変わらぬ態度をとるが、数秒の躊躇いの後、ティアが返してくれた挨拶はとても他人行儀なものだった。


「なんで他人のフリをするんだい?!」


「だってここ、学校だし……?」


「そういうスタンス?!」


「私が知り合いだって事で、退魔師だとバレたら面倒でしょ? ……人間にとって、私達は絶対的な正義の味方ってわけじゃない。私達がしくじって、沢山の人が死ぬような事があったら、その組織に所属している人間が白い目で見られるのは火を見るよりも明らかだし……」


「今までそんな事がなかったから深く考えてこなかったけど……そうだね。でも俺は隠すつもりはないよ。誇りを持って退魔師をやっているからね。しかしまだまだ全国の人達が人外を信じきっている訳ではない。だって視えないんだからさ。見返りを求めるわけではないけど、いつかこの努力が報われる日が来るといいな」


「霊感は遺伝で移るのが一般的だから、どうしてもその人口は少ないよね。私はそれでいいと思ってたんだけど、見えない恐怖に怯えるよりは、危機回避できる霊感は必要だとも思えてきたよ」


「人外が見えないからパニックにならない代わりに命の危険がつきまとうなんて、気づいたら死んでいたとかよくある話になりそうで怖いよ。先天的なものじゃなければ、人外と触れた事のある人にも霊感が現れたりするね。あとは俺みたいに人外との契約をした人とかね」


「……バルが、人外と?」


 初耳だと告げると、意外だと言いたそうな顔をする。


「読まれていると思っていたんだけど、そうじゃなかったみたいだね」


「ある程度コントロールできるから、人の過去とか思考を勝手に視るのは良くないと思って。でも、強い想いや記憶はそのまま入ってきちゃう事もある。……それで、なんの人外と契約をしているの?」


「悪魔だよ。まあ簡単に説明すると、俺の家は代々悪魔と契約しているんだ。それなのに神父の家系なんだけどね」


「神父って教会にいる、あの……?」


「そうそう。人外(あくま)を祓う者の事を、俺の国ではエクソシスト。日本では退魔師(たいまし)って呼ぶんだよね? なんでエクソシストでもある神父が悪魔と繋がっているのかって俺も最初は思ったんだけど、人外との契約って退魔師の中では間々ある事みたいだね。神父だとしても普通なのかも。うちは特殊で、悪魔を封印する為に契約って形をとっているだけなのだけれど」


「封印?」


「これは父に聞いた話なんだけどね。一つの街を荒廃させてしまった悪魔を、神父である俺の曽祖父に悪魔払いをお願いしたらしいんだ。しかしあまりにも悪魔の力が強すぎて倒しきれなかったんだって。それで仕方がなく封印する事にした。しかし強力な魔力を持つ為に、常に監視下に置こうして選んだのが自分の体だったんだ。けれど、寿命がくれば悪魔の封印は解かれてしまう。だから子に託す事にしたんだ。血縁関係の子供にのみ契約する権利があって、子供が十歳になったら封印するための体を父から子に移すんだ。だからほら……」


 アメリカ製の制服のYシャツをはだけさせ、鎖骨辺りを指差した。そこには半径二センチほどの不思議な紋様があった。


「魔法陣。封印の為だけど、契約しているから力を借りる事もできる。おかげで爆弾抱えているけれど、これはこれで便利かな」


「それは……一つの体に二つの魂が存在しているって事だよね? 人外が起こすかもしれない自我の喪失は大丈夫なの?」


「あはは、そうだね。危険っちゃあ危険だよ。……獣を飼っている気分さ」






 *






「もう。こんなに重い物を皆からの手伝いを断って、一人で持っていこうとするのは無理があるよ」


「皆部活があるから、頼むのも悪いかなって」


「じゃあなんで俺の手伝いも断ったの? 俺は部活もないでしょ」


「転校初日は疲れるかなぁって!」


「ティアはもう少し人を頼った方がいいよ。少し強引なくらいの人がティアには丁度いいのかもね」


 教師にはバルが人外対策局に所属している事は明かされている。面識がある者同士が気楽だろうとの事で、学校案内を頼まれたのはティアだった。そしてちゃっかり本の返却も頼まれたのだ。辞書なので厚さもあり、かなりの重さだ。


 しかしバルが十冊、ティアが三冊。最初十冊持っていたティアから七冊を取り上げた。そんな行動にバルの過保護さが垣間見える。重そうな顔一つしない涼しげな表情は、まだまだ幼稚な同年代の男子よりも大人っぽかった。


「わあ、すごい美男美女……! 誰あれ!」


「転校してきた一年生らしいよ。男子はイギリス人で、しかもアメリカ帰りの帰国子女。女子の方はほら、ティアちゃんだよ! 王子様とお姫様みたいだよね!」


「髪結んでる男子嫌いだったけど好きになっちゃった。ティアちゃん、いつもは綺麗なストレートなのに今日は巻いてるんだね!」


「なんか絵本から抜け出してきたみたいな二人だよね!」


 単体でいても周りを騒がせるほどなのに、二人が肩を並べて歩けば、人集りは倍以上に膨れ上がった。


「そういえば、今日のティアの髪はふわふわだね」


「愛ちゃんが巻いてくれたんだ!」


 ティアと愛花の仲の良さがひしひしと伝わってくる。一見真逆な二人だが、だからこそ相性が悪くないのかもしれない。


「とても似合ってるよ。ピアスは紫陽花モチーフなんだね」


「そうなの。夏だから向日葵とかシェルモチーフがいいかなって思ってたんだけど、忙しくてそれどころじゃなかったからなぁ」


 六月から今まで、本当にいろいろな事があった。穏やかに笑う横顔で、彼女が入院していた時の事を思い出し、今という時間がどれほど大切なのかを実感した。


「……じゃあ学校案内はいいから、今から買いに行かない?」


「本当?! じゃあ皆にもメールす、る……ね?」


 ポケットから取り出したスマホをバルが取り上げる。ティアが怪訝な面持ちで見上げると、彼は困ったように笑っている。


「そうじゃなくて、二人で」


 すぐにスマホを返すバル。ティアが小首を傾げた際、耳元の紫陽花がふわりと揺れた。






 *






「わあ、綺麗!」


 まるで宝石箱の中にいるようなお店の内装に、ティアの表情は輝いていた。以前に紫陽花のままだったピアスに気づき、店を探した甲斐があったなとバルは微笑む。


向日葵(ひまわり)もある! シェルも沢山! うーんどれがいいかなぁ。……あっ、これ愛ちゃんに似合いそうだよね?」


「愛ちゃん? ……ああ、愛花か。うん、良いと思うよ!」


 ティアが手に取ったのは、マリンカラーのシュシュ二つだった。愛花は髪を耳の下で緩く二つに結んでいる。バルはあまり興味のない愛花の顔をはっきりと思い出せないので、そこはいい加減に返事をした。


「よし、これ買ってくる!」


 意気揚々とレジに向かうティアを止める。


「今日はティアのピアスを買いに来たんだよ?」


「あ、そうだった。……あはは、浮かれすぎてたかも! うーん、この二つで迷ってたんだけど、どっちがいいかな?」


 ティアの「どっちがいいかな」という言葉がバルの脳内でリフレインし、ズッキューンという効果音が体の中から流れた気がした。恋人同士であるかのような錯覚さえ起こす魅惑の響きだ。

 彼女の掌には向日葵モチーフのピアスとシェルモチーフのピアスが乗っている。彼女の向日葵(ひまわり)のような明るい笑顔。彼女のマーメイドのような美しさ。どちらも素敵だった。


「そうだなぁ、向日葵が個人的には好きかな。よかったら、俺からそのピアスをプレゼントとして贈らせてよ」


「そ、そんな、本の返却も手伝ってくれたのに悪いよ!」


「学校を案内してくれたお礼だと思って、受け取ってくれないかい?」


「でも結局、今日は案内できなかったし……」


「後か先かは、些細な問題だよ」


 断れそうもないほどに輝くバルの笑顔に、ティアは困ったように笑う。ちゃっかり「後」にもう一度学校案内を改めて頼む彼に隙はない。


「ありがとう! じゃあ、私は愛ちゃんのを買ってくるね!」


「それも俺が払うよ」


「んーん、私が愛ちゃんに贈りたいの!」


「分かった。じゃあ、お先にどうぞ」


 シュシュを持ってレジに向かうと、店員が営業スマイルを浮かべながらテキパキとレジを打つ。遠くからティアの手の中を覗くと、二つの袋があった。もう一つはなんだろうかと不思議に思った。


「ありがとうございました! 次の方どうぞ」


「お願いします」


 定員が密かにウインクをしてきたのは、二人を恋人同士だと勘違いしているからだろうか。しかしバルは悪い気など全然せず、カップルに見られる事を嬉しく思った。


「ありがとうございました!」


 窓辺に置いてある金魚鉢をティアの紫の瞳が覗いている。ツンツンとガラスを突つくと、金魚が指によって来る。そんな微笑ましい彼女の姿をいつまでも見ていたいとも思ったが、暗くなる前に帰らなくてはと思い声をかける。


「ティア、出よう」


「うん、()()さに負けるな〜!」


「あははっ、もう負けてるよ!」


「不戦敗?!」


 本人は言い間違いに気づいていないようだったので、あえて訂正という行為は避けた。そして店の自動ドアを潜ると、一瞬にして夏の空気に包まれる。


「日本の夏は相変わらず蒸し暑いね……」


「夏は毎年来るのに、なかなか慣れないなぁ」


 毎年夏は来るものなのに、この暑さに慣れる事はない。そうやって毎年四季を楽しむ。ティアにとっては、楽しめる変化の内の一つだった。

 歩きながらバルは向日葵のピアスが入った包みを手渡す。


「ありがと! これ、私からも」


 そう言い、ティアも一つの包みをバルに渡した。


「あ、ありがとう……! なんだろう、開けてもいい?!」


「どうぞ!」


 開けてみると、落ち着いた青色の、髪を結ぶ為のリボンが入っていた。バルは感極まって涙ぐむ。


「ありがとう、嬉しいよ!」


「いえいえ! ……前につけてたのは、私を助けてくれた時に海でなくしちゃったんだよね? 助けてくれてありがとう」


 その通りで、今は味気ないただの黒いヘアゴムで結んでいたのだ。


「こちらこそ気づいてくれてありがとう! それは読まれてしまっていたんだね」


「意識は朦朧としていたけど、だからこそ能力がコントロールできなくってね。どれだけ皆に迷惑をかけたのかと思うと、申し訳なくて……」


「仲間なんだから当たり前だよ。生きていてくれただけで、俺は嬉しい」


「……ありがとう」


 こんな時も、いつもの困った笑みを浮かべる。そんな彼女にバルは優しく笑いかけた。


「じゃあ今結び直そうかな!」


「私も付け替える!」


 ティアの耳には向日葵が咲き、バルの後頭部には感謝の気持ちが結ばれた。





「ただいま」


「おかえりー!」


 アイスを片手に、リビングから愛花が顔を出している。部屋着でくつろいでいたようだった。


「珍しく遅かったね。どこか行ってたの?」


「うん、バルと雑貨屋さんに」


「……はあ?!」


 遠くから、愛花と夜斗の見事に重なった声が聞こえてくる。リビングに着き、いつもの定位置にカバンをソファに降ろしてから自分も座る。すると、そんなティアに鋭い目を向ける夜斗。


「ど、どうかした?」


「いや、別に……」


 拗ねたようにそっぽを向いてしまう。機嫌が悪いのかなという考えで完結した。


「あ、ピアス可愛い。向日葵だ!」


「あはは、ありがとう。バルが買ってくれたの」


「はあ?!」


 過剰ともとれるほどの夜斗の反応に、愛花がついに痺れを切らす。


「夜斗はさっきから何なのよ! ティアはあたしと話してんの。入ってこないでよ!」


 愛花の怒りを買ってしまった夜斗は、鼻を鳴らしてソファに寝転がった。


「それでね、これは私から愛ちゃんに!」


「うそ……?! ありがとう! あたし、初めてプレゼント貰った。開けていい? ねぇ開けていい?!」


「本当? なんか私も嬉しいなぁ。どうぞどうぞー!」


 夜斗とは対照的に普段と比べ何倍も素直な愛花は、口元が緩むのを実感しながらも渡されたプレゼントの包装を解く。


「シュシュだあ、可愛い! ありがとう、ティア! 明日から付けてくね!」


 女子同士で盛り上がる二人を夜斗が外野から眺めている。今さっき寝室からリビングに出てきたアルは、子供のようにはしゃぐ愛花を微笑ましく思った。そして全てを知っているような顔で夜斗の隣のソファに腰を下ろす。


「夜斗ったら素直じゃないのー。本当はティアに渡そうとしてた物があるんじゃないの?」


「……ねーよ、んなもん」


「またまたぁ。そんなに意地張ってると、ティアがバルに盗られちゃうよ?」


「元々俺の物じゃねぇだろ」


「ボクの先見の明が言っている。バルは最大の敵だって……!」


「マジで?!」


「遠くない将来、ティアとバルが手を繋いで歩いている姿が視える。これは、この二人の関係はっ……!」


 外野を決め込もうしていた夜斗の顔には、みるみる内に暗雲が立ち込めていく。焦燥感が顕著に表に出てきた時、イタズラな笑みを浮かべたアルが真実を告げる。


「うっそぴょーん! ほーらみなよ、焦ってる」


「は、うそかよ?! この野郎……!」


 騙された事に更に苛立ちを覚えながらも、その中に安堵もうかがえた。


「えぇ、野郎? 万年不機嫌夜斗ちゃんの事かなぁ? ……じゃーんっ!」


 ニヤニヤしながら煽るアルの右手には、夜斗が背後に隠していたはずの向日葵の花束が握られていた。


「は、なんで?! マジシャンかよ、返せ」


「何なのよ夜斗。今日やけにうっさいんだけど……って向日葵?」


 アルから取り返したばかりの向日葵を持つ夜斗に、いつの間にやら女子二人の視線が注がれていた。実にタイミングが悪い。アルが持っている状態だったのならどうにか誤魔化せたかもしれない。しかし、これも全てアルの思惑通りの事だった。こうなった以上、引き返せない空気が漂う。


「…………そのだな、ティアに」


「私? わあ、ありがとう!」


「お、おう……!」


 驚き、その後浮かべた心からの笑顔を見るや否や、つられて夜斗も笑顔になる。思った以上の好感触に、照れくささが重なった。


「何でティアに向日葵なのよ?」


 愛花はいつも痛いところを突いてくる。空気を読めないのか、あえて読まないのかは分からない。


「いつも部屋にティアが花飾ってるじゃねぇか。だから買ってきたんだよ。たまにはってな。……そんだけ」


 愛花の質問に精一杯の真の嘘をつく夜斗を見て、隣で何かを言いたげな笑みを浮かべるアル。


「ははっ、ティアも愛花も向日葵の花言葉を知らないの?」


 意地の悪い笑みが板についている。しかし重要な事は口にせずにもったいぶっていた。この年齢ならば面白がってバラしてしまいそうなものだが、それをしないのは大人なのか傍観者気質なのか、はたまたやはり焦らしているのかは判断し難いものだった。


「おい、絶対に言うなよ。だいたい店員がペラペラ喋ってたからだな……」


「その店員がペラペラ喋ってた内容、ちゃんと覚えてるんだね〜?」


「他に音がなかったんだよ」


 慌てる夜斗と、終始笑顔のアル。ティアと愛花はそんな二人を見て、訳も分からずに笑った。


「じゃあ私は花瓶に移してきまーす!」


 ティアの入院中に花は枯れてしまい、空になっていた寂しい花瓶を両手に持った。クリスタルガラスで作られた花瓶はそれなりの重みがある。


「それにしても、バルも夜斗も向日葵をプレゼントしてくれたけど……アルが言っていた向日葵の花言葉ってなんだろう?」


 慈しむように向日葵の花びらを撫でた。艶やかな黄色の雫は優しく肌を滑らせる。



 ――――向日葵の花言葉。


 『あなただけを見つめます』

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