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魔法少女めぐ☆める  作者: 荒三水
魔法少女めるめぐ
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魔法少女めるめぐ 4

 

 その後は無事何事もなく着替えを終えた。

 かろうじて彼女達にも良心というものがあったようだ。

 

「めぐるちゃん、これで身も心も女の子だね!」

「心はいぜんとして男だよ」

「そのわりには着替えなれてない? スカートはくのとか」

「すごい手間取ったよ! ……でも一応小さいとき、環の着替えを手伝ってやったこととかあったからかも……」

「そ、そんな……、兄妹でそんなことしてるなんて信じられない!」

「い、いや今はしてないよ? そんな未知の生物を見るような目で見ないでくれるかな……」


 完全にヤブヘビだった。

 しつこく追求されるかと思ったが、その間花奈が手早く着替えを終えたためメルの興味をそちらにそらすことができた。

  

「わあ、クリちゃん、すごい、カッコいい! カッコカワイイ! まじかっけーわー、抱かれてもいいわー」

「これは……、なんで今まで気がつかなかったのかしら……これなら新しい層を取り込めるじゃない……」


 男装した花奈は勝手に一人で感動していた。

 おおかたその格好で男子に成りすまし女の子を落とそうとか、よからぬ事を考えているに違いない。


「ねえ髪切ろうよ、きっと似合うよ」

「確かにもう少し短くするのもアリかもね……。でもそんな焦る事もないか」

「え~なんでー?」

「私はね、道程とマコト……うまく二人の間を立ち回って、一年間女の子食べ放題を合法的に確約したのよ!」

「そんな食べ放題聞いたことないよ! そんなの合法もクソもないからね!?」

「だからどっちがお兄ちゃんになろうが知ったこっちゃないのよ。でも面白そうだから私もついて行こうかしら」


 花奈はさらにその上を行っていたようだ。彼女こそ真の勝ち組なのかもしれなかった。

 

「ごめんねクリちゃん、リリちゃんは二人乗りなの。それとメルちゃんに対して純粋な愛を持っていない人は振り落とされちゃうから。ね、めぐるちゃん」

「そういう遠まわしなのはやめて欲しいなあ。それに最高にウソくさいし」


 巡はなぜか、の○太に「この車三人乗りなんだ」と言うス○夫を思い出した。


「……まあどうでもいいわ。こっちはこっちでよろしくやらせてもらうから。でも、気をつけなさいよ?」


 ここで意外にも花奈は、深刻そうな顔で気遣いの言葉を口にした。

 確かにマコトがなにを企んでいるのか定かではない。歓迎すると言っていたが罠の可能性もあるし、無計画のまま二人で突撃するのは危険かもしれない。

 巡にだってそのぐらいのリスクを想像することはたやすい。


「メル、勢いあまって死人を出さないように。あと間違っても大災害を引き起こさないようにね」

「はーい!」


 しかし花奈の懸念は巡のそれとは違っていた。そしてすぐに巡も認識を改める。本当の危険は一番身近にあることに。

 ……うわ、ぜんっぜん信用できない返事。「一緒に世界を滅ぼそうね!」って言っても同じノリで返事されそう。

 

「じゃ、いこっか。めぐるちゃんのパンツがトランクスなのが最高に納得がいかないけど」


 巡は無視してメルの後ろにまたがった。

 なんで僕はスカートはいてホウキにまたがってんだろうと軽く鬱になりかけた時、ホウキはふわりと宙へ浮かび上がった。 


「よーし! いっくよー、学園まで飛ばすからね!」


 元気よく叫ぶメル。と同時に二人の体は凄まじい勢いで空へと飛び立った。

 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 びゅんびゅんと風を切って上空を高速移動するホウキ。

 はるか下の電車をも軽く追い越す相当なスピードなのですぐに到着するかと思ったが、まだその気配はない。

  

「ねえメルちゃん、学園ってどこにあるの?」

「ちょっと遠いからね。本当はワープ装置を使って行き来するんだけど、それだと向こうに筒抜けになるからこうやって直で飛んでいくの」

「にしてももうかなり飛んできたような……」


 最初の頃は飛ぶたびにその景色に感動を覚えたが、それもだんだんと慣れてきた。

 ホウキの周辺は特殊な力が働き別空間になっている。空気の抵抗等もないためとても安定していて、部屋でリアルなフライトゲームをしているような感覚。

 揺れもなく振り落されるようなことはないが、このままの姿勢で長時間かかるようだとちょっとつらい。

 

「大丈夫、もう着くよ。あの森の辺りだから」


 眼下の景色は緑ばかりで、人工的な建物はほとんど見当たらない。かなりの田舎のようだ。

 しだいにホウキは高度を下げ、大量に生い茂る木々の頭上を低空飛行する。

 さらに進むと森が終わり、急に視界が開けた。

 と同時に西洋風の城のような建物群を前方に発見する。

 

「あっ、見えた! あれがまほ学? すごい大きい! 学校っていうかお城みたいだね。でもなんかところどころ破損してる……?」

「昨日ちょっとね、派手にやっちゃったから」


 昨日とは、あの不自然な外出の事だろう。

 メルがいなくなっていたのは三十分程度だったはずだが、その間に一体なにがあったのだろうか。

 さっきのマコトの話によると学園の魔法結界がどうたらということだったが……。

 

 ホウキはレンガつくりの校門を飛び越え、巡の通う高校と同じくらいの広さの校庭の上をあっという間に通り過ぎていく。

 そしてそのまま校舎中央の大きな時計があるあたりをめがけてホウキは滑空を続け、


「ちょ、ちょっと飛ばしすぎじゃない!? もう減速しないと……」

「ちょうどあの時計の下が校長室(お兄ちゃんの部屋)だよ! めんどうだからこのままつっこんじゃおう!」

「えーっ!? そ、そんなことしたら、下手すれば環が……」

「たまきちゃんごめん! わたしが未熟なばかりに、リリちゃん急には止まれないの!」

「いやさっきメチャクチャ使いこなしてたじゃん! 昨日だって!」

「いっくよー! えーい! くったばれー!」


 ズドォオオオン!! 


 ガラガラガラ……。

 

 窓を割ってなどという生やさしいものではなく、壁ごと破壊して部屋に巨大な風穴を開けた。

 ホウキの周辺は見えないバリアのようなものがあるのか、こちらはまったくの無傷。

 かくしてメルと巡は、モクモクと煙がたちこめる室内に侵入を果たした。

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