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悪役令息だけどキャラメイクでルックスYを選んでしまいました  作者: バッド
2章 アカデミーに悪役令息は通う

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60話 誰も責任を取らない会議ってあるよね

 アカデミー崩壊! その急報は王都中を駆け巡った。デザートワームが作り上げた穴から侵入してきた敵はアカデミーを襲撃し、その由緒ある建物の実に7割を破壊した。叡智の詰まった魔法塔も、様々な素材や魔道具のあった倉庫も、歴史ある講堂も全て。神をも恐れぬ所業であり、デザートワームという魔物を使った敵がいたことからプトレマイオスと思われた。その話はたちどころに噂となり、破壊された魔法塔や倉庫からなにかアイテムを盗むためなのだろうと、恐るべき盗賊団と名前が轟くのであった。


 アルマゲスト王国の中心地。アルマゲスト王都のさらに中心。金色に輝く王城レオ。政治を司り、人々を守る部の要にて、王たちは会議室に集まり、アカデミー崩壊について紛糾していた。


「陛下! この度の不始末、どのような処罰を学長に処するおつもりでしょうか? そして、この事態を防げなかった、プトレマイオス捜索にあたっていた騎士団長の責任は?」


 巨大な木を削って作り上げた芸術品とも言える円卓に座っていた老齢の男性が、テーブルを強く叩く。その名はリーベル・アリエス。アリエス侯爵家の当主であり、貴族派筆頭の男だ。野心を固めて作り上げたような男で、その目はギラギラと欲に支配された光を宿している。


 円卓に座っているのは王と貴族たち。その半分の貴族がやはり厳しい顔で国王を睨む。即ち、半分は貴族派ということだ。


 国王は、その厳しい視線に晒されて唸る。国王の名前はトリオ・レオ。世間一般では平々凡々な国王と言われており、良くも悪くもない国王だ。優柔不断であり、良き政策も悪い政策も取ることはせず、先代からの前例を元に無難に政をする男だった。


 だからこそ、ここ最近の出来事は頭を悩ますことばかりであった。


「うむ………。学長については引退をしてもらう。だが、その罰をもって、隠遁させるほど我が国には余裕がないため、宮廷魔術師への再任を命じることとする。騎士団長については、数多くのプトレマイオスの者たちを捕まえている功績もあることから、功績を相殺して不問としよう」


「騎士団長はそれで良いと思いますが、学長には罰にならぬのでは?」


「あやつめは学長となってから自由気ままに行動をしていたことが判明している。アカデミーには半分も出仕しておらず、研究や旅に明け暮れていたとか。あの自由なる性格の者を宮廷魔術師に任じればそれだけで罰になろう。なにせ、毎日出仕して、事務仕事をしなくてはならぬからな」


 迷うことなく答弁を返す国王に、リーベル侯爵は僅かに口を噛む。この話の流れを予想していたのだろう、周りを見ると、学長を制御できるのならばと、賛成多数の雰囲気だ。


(ここは折れるとするか。あまり強硬にしても、反感を煽るだけとなるかもしれんからな。しかし学長を隠遁させるとばかり思っていたが、宮廷魔術師に再任するとは誰の入れ知恵だ? 愚鈍な国王の考えではないだろう)


「わかりました、陛下の素晴らしいご判断に敬意を。して、これからはいかがいたしますか? アカデミーは才ある者たちを育てる場所。しかしながら、もはやほとんどの建物は破壊されました。すでにまともな授業を行える学舎は数棟を残すのみ。生徒数を鑑みると、3割も授業を受けられないでしょう」


「被害が大きくなったのは、魔法使いたちが炎魔法を使ったせいでもある。その魔法使いたちは、そなたの縁者だと記憶しているが? 火球ファイアボールでのゴリ押しの攻撃で倒したらしいではないか」


「デザートワームという化け物に対しては仕方ないと思っております。炎魔法は魔法使いにとって、最強ともいえる攻撃魔法。功績こそあれ、まさか罰を与えることなどできますまい」


「ならば、学舎が破壊されたことも罪とはなるまい。今後の授業場所を考えるしかなかろう。誰か良いアイデアはないか?」


 全てはデザートワームと鼠のせいだと結論づけて、国王は家臣たちに目を向ける。しかるに、その視線を皆は受けることはなく、目をそらし意見を口にできるものはいなかった。


 なにせ学舎がないのだ。教えようがない。静かになった円卓にて、リーベルが国王の責任問題にすり替えようと口を開こうとしたとき、一人が挙手をした。


「陛下、一考するに残念ながら、アカデミーでの正常な授業は不可能です。ここは我らが音頭をとって、授業の場所を提供する、というのはどうでしょうか? 王城には使用していない部屋は数多くありますゆえ、保安の問題もクリアでき、学生たちは安心するでしょう」


 銀髪碧眼の整った顔立ちの青年だ。名前はアルケイデス・レオ。レオ王家の国王の三人の子供の一人で、第一王位継承権を持っている今年で20歳になる青年だった。

 

 そして、強硬に王権に権力を集中させようとする筆頭であり、通常は会議の前に貴族に根回しをするものだが、この王子はそんなものをする必要はないと、いつも勝手に政策を提案し、貴族から嫌われていた。


 今回の提案もあからさまだ。


「なりませぬ、アルケイデス王子。それは王城に貴族の子息を住まわせることと同様。忠実なる臣の私は問題にはしませぬが、口さがない者たちは王家は人質にしようとでも噂するでしょう。その話は通りませぬ」


 貴族派筆頭のリーベル侯爵の言葉に、皮肉めいた笑みを浮かべるものもいる。が、その言葉通りであり、貴族たちの影響を考えるとさすがに国王派も賛成する様子はない。


「忠実なるそなたらならば、反対に喜ぶと思ったのだが? 誰ぞ賛成する者はおらぬか!」


 それでも諦めないアルケイデス王子の強引さに鼻白む。


「アルケイデス王子、この提案は聞かなかったことにいたしましょう。それともそれだけ強行なさるのは、最近、頓に光る才を見せておられる第二王子のことを気にしているからですかな?」


 アルケイデス王子は第一王位継承権を持ってはいる。だが、その出自は第二王妃の息子であった。第二王妃の後ろ盾は弱く、後ろ盾の強い第一王妃の産んだ第二王子を王太子にとの声が上がっている。これは第一王妃がなかなか子供ができなかったことに起因しており、第二王子は第一王子と歳が5歳離れている。


 昨年辺りから、第二王子は人が変わったように剣や魔法に才覚を見せて、優れた政策を提案するようになっているため、歳が離れていたからと、油断していた第一王子は戦々恐々としていることも噂されていた。


「レグルスなど関係ない! これはアカデミーの生徒たちのためを思ってこその提案なのだ!」


 そして、それは図星であったのだろう、アルケイデス王子は声を荒げてリーベルを睨みつける。リーベルは内心でほくそ笑み、さらに第二王子との溝を深めようと口を開き━━━。


「アルケイデス王子の提案、非常に考えさせられる有益な方法と思います。しかるにやはりリーベル侯爵のおっしゃる通り、王城では無用なる反発を買うことが予想できます。ならば、我ら高位貴族が屋敷を提供しましょう。生徒たちを分散させれば、我らの屋敷は余裕で教育の場所として使えるでしょうから。また寮代わりとして各自寄親の屋敷に滞在させましょう。そうすれば問題はないのでは?」


 国王派筆頭のピスケス公爵が口を挟むのであった。最近、急速に力を増しているピスケス公爵の言葉は一考する価値があり、皆がざわめき肯定的な意見が口にされる。


「ふむ、それは良いことだな。それこそが貴族の義務というものだ。寮も破壊された。そのようにしよう。各自、授業に提供できる屋敷を報告するように。それと敵対する家が授業場所となれば、反対するものもいよう。その場合欠席もやむを得ぬが、テストでの合格点をとることを免責事項とする」


 国王が緩やかに宣言し、アカデミーの足りない教室は各自の屋敷となるのであった。


「それと、下水道から出現した敵の話だが、なにか分かったか?」


「最近になって様子がおかしい下水道を調査していた冒険者ギルドが病魔鼠の数に驚き、緊急放水を行ったと報告されております。これは冒険者ギルドの優れた判断によるものです。ですが、敵の正体は不明。恐らくはプトレマイオスでしょう」


「そうか、鼠の死体は病の元となる。冒険者ギルドに金を弾んで片付けさせるように」


「はっ、了解いたしました、陛下」


 冒険者ギルドは責任問題となるのを隠蔽し、反対に功績となるように虚偽を報告した。そのため、ニアの名前も、幼女ドワーフの存在も消されたため、誰も知ることはなかった。


          ◇


 リーベル侯爵は会議が終了し、城内を歩きながら、先ほどの提案を吟味していたが━━━すぐに無理だと結論づける。


(我が屋敷には見られては不味い施設や資料、そして裏の人間たちがいる。屋敷の提供は無理だな。貴族派の無難な奴に提供させるか。そうしないと国王派の洗脳授業となる可能性もある。だが、貴族の屋敷ならば護衛をつける理由ともなる。監視があれば、無茶なこともあるまいて。アカデミーの方はこの程度で良いか)

  

 つまるところ、国王の責任問題としたいだけであり、子供たちにしても、たった3年間しか通わないアカデミーなど、どうでも良いとリーベル侯爵は結論づけた。


 次なる作戦へと思考を向けつつ、廊下を歩き、金髪碧眼の少年の姿を見て取ると、早足で近づきにこやかな愛想の良い笑みを向ける。


「これはレグルス王子。このようなところでお会いできるとは僥倖です。アカデミーの方は大丈夫でしたかな? 生徒会長のお仕事大変かと思われます」


「あぁ、リーベル侯爵か。お久しぶりですね。アカデミーはもう生徒たちで対処できるレベルを大きく上回ったから、僕たちは力なく傍観するのみさ」

 

 レグルス・レオ第二王子。第一王妃の息子にして、アカデミーの2年生。そして、優秀なるアカデミーの生徒たちの中で、生徒会長となった優れた少年だった。


「さようですか。レグルス王子は優れし才能をお持ちですが、相応しい権力がありませぬからな。………その苦難を思うと臣リーベルは心苦しく思うところであります。どうでしょうか、私にお任せくだされば、せめて会議には出席できるように尽力いたしますが」


 泣きそうな顔となり、沈痛な声でリーベル侯爵はいかにもレグルスのためを思っていると言うが、レグルス王子は肩を竦めるだけだった。


「申し訳ない。僕はリーベル侯爵の神輿には乗れないよ。なにせ、不器用なので王族として頑張るだけさ」


「……さようですか。であるならば、何も言いませぬ。ですがお心変わりありましたら声をかけてくださいませ」


 その後、幾つかの世間話をしてリーベル侯爵家は別れると、難しい顔となる。


(去年までは自分こそが王に相応しいと嘯いていたのに、どんな心変わりだ? くそっ、貴族派筆頭に持ち上げて、混乱をもたらそうと考えていたが、あの様子では無理だな)


 去年から様変わりしたレグルス王子に舌打ちしつつ、リーベル侯爵は王城を立ち去ると馬車に乗る。


 王城を離れて暫し。馬車の中で嵌めた指輪を触ると、誰もいないにもかかわらず呟く。


『リーベルだ。どうもすべてがうまくいかない。資金調達もセツロが殺されて、何者かに迷い家を奪われたため、密輸が不可能となり厳しくなっている。ガニュメデス、そちらの方はどうだ?』


『あぁ、リーベル殿か。こちらは魔道具がそろそろ完成する。本来は神器を扱うからもっと時間がかかるはずだったが、壊れた破片を素材としたので、早かったですね。ただ効果範囲は数十分の一程度となってしまいましたが』


 指輪は遠く離れた者と話せる『念話の指輪』であった。リーベル侯爵はプトレマイオスの一員であり、組織の活動をしつつ、戦乱の世を企む男であった。


『ふむ、具体的にはどれくらいだ?』


『街一つくらいなら覆える性能です』


『分かった。では、早速に使用してほしい。ターゲットは王都、ピスケス公爵家、そしてアスクレピオス侯爵家だ』


『アスクレピオス侯爵家も? あの家は最近復興した貴族では?』


『そのとおりだ。調べたところ、『水霊の祝福水』やポセイドン王国との窓口の形成など、最近のピスケス公爵家の躍進の裏にはアスクレピオス侯爵家がある。しかもかの侯爵家には魔法騎士団があるとか。後々に邪魔になることは明白だ』


『畏まりました。では吉報をお待ち下さい』


 思念が切れて、リーベル侯爵は肘掛けを指で叩く。


「少しずつ王権を弱めるつもりであったが、行動を早めねばならぬか。なぜこんなことに。運が悪かったのか? だが凶作となれば混乱は必至だ。その時こそ、愚かなる貴族たちを扇動するとき。作物が無くなり混乱する国王派の顔が目に浮かぶわ。それと………冒険者ギルドに手も回しておくか。少しは金を使った分を取り返さんとな」


 そう呟くと、リーベル侯爵は野心に満ち溢れた醜悪なる笑みを見せるのだった。

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― 新着の感想 ―
分からない…誰が悪いのか… それはともかく謙虚堅実に生きる原初にして正統派悪役転生者っぽいの登場!
リーベル侯爵、デザートワームにチューチューされるのと水中でピチピチされるのと、取り囲まれてヒャッハーされるのとどれがいい? とりあえずさっさと幼女にないないされてほしいっす。
リーベル「むっ!? 誰かに聞かれていたような気がしたが、ただのダンボールか」 蛇な潜入工作員がアキにも欲しいですね。
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