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プリン・荒モード!  作者: 都月 奏楽
一章『凸凹コンビ結成前哨編』
12/28

小話1ノ段 『ヒーローズ・ショートエピソード』

深優姫と陽輔のちょっとした二話です。


前者はおまけ話、後者は二章の零話みたいな感じです。

【衣笠深優姫のオタクになったキッカケ】


 深優姫は一応隠しているらしいが、オタクである。部屋はフィギュア、ゲーム、アニメグッズなどのオタ一色(イーソー)と化していた。

 部屋にあるゲームや漫画を勝手に借りていたラメイルとヴァニラは一つ質問をしてみた。


「そういえばミユキ、君がこの趣味にハマったのはどうしてなんだい?」


「急に何よ?」


「いや、君は疾しい事してるみたいに隠してるじゃないか。そんな気恥ずかしい趣味を持つキッカケって何かなと思っただけだよ」


 そうねぇ、と深優姫は唸りながら思い返してみる。やっぱりあの時かな、と思った記憶が一つあった。


「あれは確か、十年前だったかな……」



 深優姫がまだ五、六歳だった頃。まだ遊び盛りで近くの公園で動き回る事が多かった歳であった。


 深優姫には兄がいた。その兄がリビングのテレビで何かを見ていたのである。


「お兄ちゃん、何見てんの?」


「ん? これはガン●ムシリーズの一つ、∀ガ●ダムだよ。俺が昔見ていたヤツでね。今再放送しているんだ」


 深優姫が見たものとは、白を基調としたボディの、ちょっと顔が変な人型巨大ロボットが戦うアニメであった。その躍動感ある動きと圧倒的パワーで敵を無力化する、このシーンに深優姫は思わず言葉を漏らした。


「か、カッコいい……」


「おお!! プリ●ュアにも興味を持たない深優姫にも分かるのか!! しかもコレをカッコいいと来たか!! ちょっと待ってろ! 別の作品も持ってくるから!!」


 兄が大好きな幼少期の深優姫は兄と一緒に全作品の●ンダムシリーズを網羅した。

 こうして、彼女はアニメに興味を持ち始め、ガンダ●以外のロボットアニメは勿論の事、色々な作品を見始めた。



「ま、ざっとこんな感じかな。今でもロボットアニメが一番好きだけどね」


「道理でフィギュアよりもプラモデルが多いと思ったワケだよ」


「にしても、君がロボットが好きだなんてね。意外だよ」


「私は何でも食わず嫌いするヤツが一番嫌いなんだよ。ちゃんと見てから意見を言えっつう話。私は兎に角見るに限るね! 勿論アニメだけじゃなくても特撮も映画も見てるし、ヤオイ物も百合物も、泥臭い作品も萌え作品も、シリアス殺伐系もほんわか日常系もどんと来いって感じ!」


 珍しく熱く語る深優姫に思わず言葉を失うラメイルとヴァニラ。


「君はとんでもないオタクバカだね」


「有難う。最高の褒め言葉だ……って誰が馬鹿だってぇ!?」


 ラメイルの失言に深優姫は頭をグリグリさせて制裁を行った。

 褒め言葉だって言ってるじゃないか、という使い魔の言葉を無視して彼女は徹底的に痛めつけるのであった。


【春日陽輔の誰かに見られている】


 陽輔は悩んでいた。それは、休み時間に誰かに見られているという事であった。放課後以降はそんな気配が無くなるので、尚更不気味と感じるのである。


「そりゃお前、追っ掛けの誰かだろ。自覚無いみたいだけど、お前ってモテてるんだぜ? つうかそんな自慢すんなよな全く……」


 友人に相談してみたが、嫌みを言われてまともに取り合ってくれない始末である。

 確かに自分の面識の無い知らない女子に声を掛けられる事はザラだったが、まさか、そんな……。陽輔は友人の言葉を聞いて考えてみたが、やはりガセに過ぎなかったな、と決めつける始末であった。


 最近、ようやく自分をコソコソと見ているヤツの正体が分かった。教室前の廊下から見ている隣のクラスの小倉杏子とかっていう女子だ。

 噂によれば、他の男子からは結構憧れの存在であって、告白されては軽くフッている高嶺の花らしい。

 そんな子が何で俺の事を? 陽輔は自意識過剰と思われそうだったので、誰にも言わずにいたが、気になって仕方が無いのである。

 友人と一緒に歩きながら考えていると、曲がり角で誰かとぶつかりそうになってしまった。

 ぶつかりそうになったのは、小倉杏子と一緒に居た女子の一人だった。

 そういや、小倉杏子が見ていた時に、この子も居た様な気が……。記憶を辿りながら女子を見ていると、彼女は怪訝そうな表情で口を開いた。


「……え、何?」


「い、いや、何でもない。おい、行こうぜ」


 慌てて陽輔が逃げるようにすれ違っていく。すると友人がニヤァとした顔でからかいだした。


「どうしたどうした? 衣笠に一目惚れかよ?」


「衣笠?」


「お前がさっきジーッと見ていた隣のクラスの女子だよ。にしてもお前、あんな地味ィで大食いなヤツが好きだったなんてなぁ。意外にも程があんぜ」


「ちげーよ。そんなんじゃあ」


 とんだ勘違いをしている事に陽輔は鼻で笑いながら軽く小突いて教室に戻っていくのであった。


「ねぇ聞いた? 今日のプリンちゃん!」


「あぁ、昨日は学食でカレー三十皿完食してたんでしょ? ホント、同じ性別とは思えないわよねぇプリンちゃんだけは」


 衣笠、ね。何となく男子に不評なその女子に興味を持った陽輔は、また小倉杏子と一緒に来ないかと期待するのであった。

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