第7話 フクオカ君を救え!
星系レーダーとのリンクによって、正確な情報が、ハナの旗艦メルローニャにリアルタイムで届く。
エルミナの右翼隊はトーナ星系への脱出口を封鎖すべく、大回りで進軍しているため、救出戦には間に合わない。
そして最大船速で進む、ハナの本隊も敵、”黒光る甲殻”による挟撃開始には間に合いそうにない。
(フクオカ君、耐えて耐えて!絶対に助けるから!!)
前方でレーザーの撃ち合う光や、その爆発が小さく見えた。
「始まったか!!」
ハナは極力、表に不安を出さないように努めている。だが、目に涙が溜まっていて、顔を見られたらバレバレだ。
フクオカ左翼隊は倒し切れなかった甲殻分艦隊と本隊によって、左右から挟まれるように撃たれて、至る所で爆発が見える。
その時、ハナは艦隊レーダーに映る、民間コロニー船を発見した。
海賊に狙われないように星系レーダーでは民間船は敢えて非表示にされていて、近づかないとわからない。
ジソリアンの略奪から逃げ延びた民間人が隣の惑星に避難しようとして、逃走中にこの分艦隊に狙われたのだろう。
フクオカ中将は途中でそれに気づき、まずは民間人保護を最優先にした。
結果、攻撃の手が緩み、相手に持ち直す隙を与え、戦闘が長期化した。
守りながら戦う。
言うは易いが、実行するのは相当難しい。
フクオカ中将の左翼隊はそのコロニー船を守るようにじりじりと後退しつつ戦っていた。
(フクオカ君っ!!やっぱり……。
フクオカ君がこんな奴らに勝てないわけが!!
もう!!優しすぎ!民間人を守るだなんて………そういうところ
……大好きっ!
あはぁぁぁん~!)
「全艦!背後より敵分艦隊に集中攻撃、まずは挟撃を解除せよ!!
撃てぇ!!!撃て撃て撃て撃て撃てぇ!!!」
いつもと違う鬼気迫る射撃指示に艦橋クルーがちらりとハナを覗く。
「全弾撃ち尽くせ!民間人を襲うような虫どもに容赦するな!
シールドのエネルギーも全て射撃に充てろ!!
撃て撃て撃て撃て!!」
ハナの本艦隊の苛烈な攻撃により、甲殻分艦隊は呆気なく大破していく。
そしてフクオカ中将に通信を繋いだ。
「フクオカ中将、包囲は解除した!敵は名将クル=ポク。
すぐに立て直してくるぞ!
その隙を与えるな!!民間人は私達が必ず保護する!!
やり返してやれ!!」
「提督っ!!ありがとうございます!助かりました!!!
全艦、シールドに回したエネルギーを攻撃に転換!
反撃だ!
本隊と連動し、奴らの回頭に合わせてこちらもスライドせよ!
常に包囲状態を維持するんだ!!」
本隊の一部が民間船を取り囲み保護に成功、今度は本隊と左翼による包囲戦が始まった。
二人の連携はスムーズで、さすがのクル=ポク提督でもこの包囲を解くことが出来なかった。
徐々に形勢が第7艦隊有利に傾いていった。
クル=ポク提督も退き際をわきまえている。
”黒光る甲殻”艦隊が壊滅する前に徐々に後退に転じた。
そこへ背後からエルミナ分艦隊が現れて3方向からの包囲が完成した。
「全艦、集中砲火!ジソリアンは誇り高い種族だ。
最後の一兵まで決して降伏しない。
ここで撃滅することが、彼らに対する礼儀と心得よ!
撃てぇ!!!」
ハナの最後の指示により、第7艦隊の圧倒的な挟撃射撃が展開された。
威名轟く”黒光る甲殻”はコロンニャ星系で終焉を迎えた。
トーナのゲートウェイを使った強行という、誰も思いつかない大胆な戦略は、名将として名高いクル=ポク提督の裏をかき、各個撃破を導いた。
それにより”黒光る甲殻”と名将クル=ポクを撃滅するという大戦果をあげることができた。
第7艦隊はコロンニャ星系要塞の軍事ドックに寄港した。
修理と補給が迅速に行われる。
ハナが下りてくると、エルミナが満面の笑顔で走り寄って来た。
「ハナさ~ん!さすがです!さすがです!すごいすごい!」
(えっと……エルミナの”さすがです”ゲット……いや、数えなくていいや)
「上手くいって良かったよ。
全クルーに危険を負わせると思ったら押しつぶされそうだったんだ。」
「ハナさん、責任感強いですもんね。
……、もちろん当艦隊にも犠牲は出ました。
ですが、あの相手で、ここまで犠牲を抑えたのはハナさんだからです。」
「そう……。犠牲になった方のご家族には手厚くフォローして。」
「はい、わかりました。任せてください。すぐに手配します。
それと、もう一つのご報告ですが………。
やはりジソリアン襲撃による、この地域の被害は甚大で……。
もし3か月遅れていたら………。」
「被害を小さくできて、本当によかったわ。
エルミナ、立て続けに仕事を与えて申し訳ないけど…。
この状況をまとめて司令本部に報告して。支援を要請するの。」
「はい、分かりました!これも任せてください!
迅速にまとめ上げて、必ず手厚い支援を勝ち取って見せます。」
ハナはにっこり微笑んだ。
(エルミナが参謀で本当に良かった……。
恋の参謀としてはちょっと心もとないけど……。)
「頼んだわ!」
エルミナが忙しそうに動き回りながら去っていった。
そして、人の気配を感じて振り返ると、そこにフクオカ中将が立っていた。
(うえあぉ!?びっくりしたぁ)
「フクオカ君?」
「提督、この度はありがとうございました。」
「いえ、フクオカ君らしいと思ったわ。民間人を守る。
これ、口では簡単に言えるけど、軍人として実行できるのは尊敬に値する。
私はフクオカ君を誇らしく思ってるわ。」
(いやーん……上から目線で言っちゃった。嫌われる!?)
「あ……ありがとうございます。
僕の方こそ、先ほどの提督とエルミナの会話を聞いて胸が熱くなっています。」
(え?え?それって恋したってこと?!)
「宇宙軍大将にまでなって、そこまで一兵卒や、民間に目を向けられる方はいません。
尊敬の念が絶えません。」
(………。そ…ん…け…い……? いらんよ、そんなの!!)
「あの………。提督!!」
(うわお。何いきなり力込めて)
「今度、お食事でもご一緒にいかがですか?」
(はああああぁぁぁぁあぁ!? デート!?)
「助けていただいたお礼がしたいのです。」
(お……れ……い? まぁ、良いわ。
こういうのの積み重ねよね!これも大分類ではデートよね!)
「えぇ、喜んで。フクオカ君と食事か。少しだけ楽しみ。」
ニッコリと微笑んだ。フクオカ中将の瞳孔が少し震えた。
「えっと……帝都のニャントルホテルのレストランで良いですか?」
(ニャントル?えっと……雰囲気はいいけど。ただの会食じゃん。)
「あ……。リクエストがあれば、率直にお願いします」
(あ…顔に出てた!?えっと…。こ……こここ……個室がいい)
「や・・焼肉食べたい」
(ああぁぁ!?なんちゅーロマンのかけらもないことを!!?)
「あ、はい。わかりました。
焼肉、なかなか我々の立場ではいけないですもんね。
えっと。穴場的な個室がある美味しいお店を探しておきます!」
(あ……個室きたぁぁぁ!)
「うん、楽しみにしている。」
そういうとフクオカ中将も一礼して、副提督としての山積みの作業に戻った。
(……個室デートきっっったぁぁぁぁぁ!!!)
【あとがき】
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今回のお話、軍事的で難しいなぁ、読み疲れたなぁって思った方、
安心してくださいっ!軽く流し読みしていただいてOKです。
ハナちゃんは凄い!これだけ分かればOKです。そして
次回からまた日常シーンです!
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『タイトル:提督の焼肉デート日誌』
来たぁぁぁ!デート!個室焼肉デート!!
ハナです!宇宙軍大将、勝利しました!
今回の勝利は、フクオカ君の優しさと、エルミナの頼もしさ、そして私の奇襲作戦、全てが噛み合った結果です!民間人を守りながら戦うフクオカ君を見たとき、**「やっぱりこの人が好き!」**って、改めて思っちゃいました。
そして、勝利の直後、フクオカ君からまさかの食事のお誘い!
(最初は会食っぽかったけど、個室焼肉にグレードアップ!これって実質、大将公認・秘密の初デートですよね!?)
戦場での緊迫感から一転、私の心は焼肉の炎のように燃え上がっています!
しかし!
喜んでばかりはいられません。フクオカ君を尊敬しているのは分かりますが、まだ**「恋」の領域には踏み込んでくれていません。
次のデート(会食?)で、ハナ大将は、このポンコツな恋をどう進展させるのか!?
毎週日曜日 朝8時更新!
どうぞ、次回日曜朝8時に、ハナのドタバタな恋の行方を見守ってください!
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(ひろの)
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