表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/107

深夜の危険な探索と一つの成功例

「はぁ……」

 気持ちを落ち着かせるために、飛び切りの豆を使ってコーヒーを作ってみたが、それでも浮上することはできなかった。


 ――助けられなかった。むしろ、サナを危険な目にあわせてしまった。あのとき、手が届いていたはずなのに。


 それが羅那の心に深い影を落としていく。

「くっ……」

 サナを守るため。それが自分の存在理由だというのに、だからこそ、努力して、ここまで力を得てきたというのに。

「まだ……足りないのか……?」

 羅那は知らない。それが自分を追い込むことに。それでも、止められなかった。

 守護者としての自分を、維持するためにも……。



「うーん、やっぱり気になるっ!!」

 サナはあの最後に入った展示室のことが気になって、気になって仕方ない。

 普段ならば、気にならないはずなのに……あの囁き声が脳裏に残っていた。


『綺麗な魂……『王妃の器』に……相応しい……』


 そして、自分を狙ってきている。

「今、羅那くんについてきてなんて、言えないよ……」

 自信を失い、意気消沈してしまった羅那を何とかしたいのはやまやまだったが、それよりも、あの言葉の意味が気になって仕方ない。

 だからこそ。

「ごめんね、羅那くん……私、やっぱり行くよ!」

 サナはこっそり、浅樹家を抜け出して、そのまま例の博物館へと向かったのだった。



 羅那は落ち込みながら、ふと、眼下の道を見下ろしていた。

 ある意味、それは偶然。

「!!!!」

 サナが抜け出して、外に出て行っている。

「あの……馬鹿……っ!!」

 だからといって、放っておくわけにはいかない。ミラーシェードを付けて、カリスにサナの向かう場所をトレースしてもらう。

 ふと、足が止まった。

 こんな自分で……サナを守れるだろうか? 今は恐ろしさの方が上回っている。けれど……。

「失う方が、嫌だ……」

 ぎゅっと拳を握り締め、羅那もまた、闇の中へと追いかけていくのであった。




 夜の博物館――展示室は閉館後の静寂に包まれていた。

 サナは単独で資料の確認と遺物の検査を行っていた。床に残る微かな魔力の残滓を確認し、慎重に魔導具で調べていく。何度も確認したが、それでも確かめずにはいられない。魔道具がサナの魔力に反応して、調査結果を映し出していく。

『問題なし』

 反応がなくなってしまった布切れは、完全な布切れになり果てていた。思わずため息が零れそうになる。

「それじゃあ、今度は……」

 別の対象を調べようと、体を起こした次の瞬間だった。


「きゃっ!!」

 背後の空気が急に冷たくなり、乾いた気配に染まった瞬間、白い包帯が床から滑るように伸びて、サナの足首に巻き付いてきたのだ。いや、その包帯はサナの足首だけではなく、体中に巻き付いてくる。

 サナはそのまま態勢を崩されながら、包帯はまるで意思を持つかのように彼女を拘束する。

「ふぐっ!!」

 口をふさがれ、身動きができない。ならばと、ブレスレットの弓を取り出そうと手を伸ばしたそのとき。

「王妃よ……乾いた王国へ戻ろう……そのためにも、その魂を、いただく……」

 低く、冷たい声が響く。

 ネフェル=ザークが、床の影から現れたのだ。しかも、包帯の魔力がサナの体から微細な力を吸い取り始める。

 全身が冷たく痺れ、胸の奥がざわつく。サナは必死に抵抗し、結界を展開するも、包帯の魔力に押される。

(嘘っ!? こっちが魔力高いはずなのに!? ううん、違う、吸われているから、もしかしたら……)

 このままでは、また大変なことになってしまう。

 一人で調査なんてしてたから……。

(……私、やっぱり一人じゃ……無理だよ……)

 思わず、サナの目に涙が浮かんだ。助けを呼ぶのは、すぐ傍でいつも見守ってくれている……。


「……そうはさせるかっ!!」

 展示室の空気が不自然に揺れ、その言葉と共に、羅那の魔力が……生命の力が熱を帯び、空間を押し広げるように炸裂した。

 必死だった。

 何も考えられなかった。

 ただ、奪われる未来だけが見えた。

 サナが拘束されて、虚ろな瞳を見せていたから。

 だから。


 周囲の瘴気や封印結界が一瞬で吹き飛び、床に積まれていた巻物や埃が渦を巻く。

 白い包帯は熱を帯びて縮み、サナの体を覆う束縛を焼き切った。


 ネフェル=ザークはその熱波に押され、後退せざるを得なかった。

「……まだだ……次こそは必ず……」

 彼は石の壁に身を隠すように退却する。


 魔力の爆発の反動で羅那は後方に倒れ込む。全身に熱が残り、息を荒くしながらも、その瞳はサナの方を向いて。

(今回は、何とか……守りきれた……)

 はぁ……はぁ……と息が切れるのは、この場所が自分に不利な場所だからか、それとも……。

 と、サナにぎゅっと抱きしめられた。

「もう……無茶しないで……」

 サナの手の温もりに、羅那は小さく笑うように目を細める。

「守りたかっただけだよ……サナを……」

 けれど、今回は何とか成功したが、この次は……。

「ありがとう、羅那くん!!」

 にこにこと抱きしめてくるサナを無下にはできない。こんな甘いご褒美を受け取る資格が果たして、自分にあるものだろうか。

 ずきりと、胸が痛くなる。

(まだ……何も解決していない。必死に抵抗しただけだ……)

 自分の未熟さを痛感するだけ。けれど、サナはそれでもと言葉を重ねていく。

「羅那くん……ありがとう。本当に……来てくれて、すごく嬉しかった」

「……うん。無事でよかった」

 上手く、笑えているだろうか?

(……よかった、じゃない。失いかけたんだ。それが、何より怖い)

 抱き着いてくるサナを、それよりも強く、羅那は抱きしめた。この温もりを、離さないようにと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ