三幹部の集い
博物館の地下――立入禁止の封印室。
湿気と埃が漂う空間に、三体の影が揃った。中央には、古代の石棺がひっそりと置かれている。周囲には禁呪の文様と封印魔法の痕跡が散らばる。
最初に口を開いたのは、白い包帯に覆われた司祭――ネフェル=ザークだった。
「清らかで温かい魂……乾いた王妃の代わりに最適だ……」
その低く響く声は、空気の分子を震わせるように重く、乾いた気配が部屋を満たす。
彼の視線は、まだ何も知らぬ者たちの気配を探るかのように、虚空の一点に注がれていた。
巨大な石棺ゴーレム、クフ=ロンが静かに身を起こす。
「王妃を連れてこねば、王は完全復活しない……それだけだ」
床の石板が軋み、ゴーレムの足音は地下全体に響く。
彼の体表に刻まれた封印符号がわずかに光り、魔力を帯びて空間の緊張を増幅させた。
砂のような髪を揺らす巫女、メーヘンが手を翳す。
「……羅那の魔力。あれは王の『乾き』と相性最悪。触れ合えば王が痛む――ならば、排除するしかないわね」
微細な魔力の流れを指先で探るように操り、砂粒のような光が床に散る。
その動きは、まるで空間を切り裂き、羅那とサナの位置を正確に把握しているかのようだった。
三者の間に、静かな連携が生まれる。
ネフェル=ザークが低く呟くと、布のような包帯が微かに蠢き始める。
それを受けてクフ=ロンが床を踏み鳴らすと、振動が封印文様に共鳴し、魔力の流れが増幅する。
さらにメーヘンの指先から砂の魔力が広がり、空間全体に微細な攻撃性の波紋を描く。
三者の魔力は微妙に干渉し合い、部屋の空気は乾き切った嵐のように変化する。
まるで部屋そのものが、王の意志を帯びた生き物のように呼吸し始めたかのようだ。
ネフェル=ザークが再び口を開く。
「全ては計画通り。王妃の器を得る時が、すぐそこまで来ている……」
その声に応えるように、クフ=ロンの瞳が淡く光る。
石棺の蓋の下で、微かに魔力がうねる。
メーヘンは砂の魔力を拳に集中させ、空間を撫でるように動かす――まるで、潜む標的を取り囲む網のように。
静寂を破るのは、ネフェル=ザークの低い囁きだけだ。
『綺麗な魂……王妃の器に……相応しい……』
その瞬間、封印室の空気がさらに引き締まる。
魔力が三者の手から共鳴し、空間を渦巻く――次に動くべき標的が、すでに特定されたかのように。
そして、三者の影が石棺の周囲で微かに連動した。
まるで封印室そのものが戦場に変わる前触れのように。
──次に動くのは、サナと羅那。
だが、すでに三幹部は準備を整え、王の復活に向けて待ち構えている。
封印室の奥で、まだ目覚めぬ王が、微かに呼吸する気配がした。
乾いた王国の力は、確実に、この世界へ降り注ごうとしていた。




