洞窟の中にある携帯と神サマ?
かつんかつん。
自分の足音が響き渡る。
ぽちゃん、ぽちゃん……。
天井から滴り落ちる雫の音が不気味さを演出しているかのようだった。
「はうう……洞窟の中……意外と広いかも……」
大した距離ないと思っていたのに、実際に歩くと、かなり距離があるように感じる。
と、広い場所に出た。
ふわふわと明かりが見える。
「蛍? それとも……ヒカリゴケかな……?」
幻想的な空間の先に、洞窟の中にある小さな湖の中に小さな社があるのを見つけた。
「なんて……綺麗……」
と、その社の前に、赤いスマートフォンが落ちているのが見えた。
「あ、あれ!!」
恐らく、社の前に落ちているものが、回収するべきスマートフォンなのだろう。
「よし、後はこれを回収していけば……」
急いでサナは、そのスマートフォンへと駆け出していく。
『ようやく、相まみえたな……よくぞ、我がもとへ来た、美しき巫女よ』
「ふえっ!?」
そこに現れたのは、白い影。
「えっと……もしかして、この神社の……神サマ……ですか?」
サナの言葉に、白い影は笑ったように見えた。
『ああそうだ。お前が祈ってくれたから、こうして、姿を見せられる』
「そ、そうでしたか。よかった」
そう嬉しそうに微笑むサナに、白い影は、愛しそうに瞳を細めた。
もちろん、瞳も口元も見えない。
ただ、そんな風に感じるだけ。
『ここには、何用で来た?』
「あ……そこにある落とし物を回収しに来たんです。そちらに行って、拾ってもいいですか?」
『ああ、持って行くといい。我には必要のないものだからな』
なんだか、ちょっとだけアーク様に似ている。
だからか、とても安心していた。
「よかった、優しそうな神サマで……廃神社って聞いてたんで、ちょっと怖かったんですよ」
社の前に向かい、スマートフォンを拾おうとして。
『本当に、優しそうな神に……見えるのか』
「ええ、その声とか、アーク様にも似てるし……あ、あれ……」
ぐるんと視界が回り始め、思わず倒れ込んだ。だんだんと力が出なくなる。体が重くなっていく……。
――え、こ、これ……どういう、こと……??
「えっ……これって……えっ……」
ふわりと何かが覆ってきた。
『まさか、こんな吸いごたえのある巫女が手に入るとはな……』
「あっ……」
開いた口元から、だんだんと力が抜けていく。
『お前、本堂で祈っていただろう。まさか、幻影を見せて罠にはまるとか、勉強不足も甚だしいものよ。けれど、こうして、素晴らしい力が手に入る。お前がこんな力を持っているとは……ただの巫女の癖に……もしや、お主、特殊な巫女か?』
そんな声が聞こえる。
目の前に回収すべきスマートフォンがあるのに。
手を伸ばしても、届かない。
だんだんと、意識が遠くなっていく。
――せっかく、ここまで来たのに……。
思わず、ぽろりと涙が浮かぶ。
一人でやるのは、早かったのかな? それとも……経験が足りなかった?
せめて、最後に……。
「羅那……くん……」
キンっ……という音と共に、急に体が軽くなった。
影に覆われていたはずの体は、別の暖かいものに抱かれていた。
「大丈夫か?」
「えっ……羅那……くん……?」
見上げると、そこにはミラーシェードを付けた、戦闘服を纏った羅那がいて。
『な、なんだ、貴様はっ!! 後もう少しで、そこの女の力を全て奪えたのにっ!!』
先ほどまで、綺麗で白くて神々しい光が……いつの間にかおどろおどろしい、姿になり果てていた。
「あれ……神サマ……?」
「あれは神なんかじゃない。神の眷属から堕とされた」
ふわりと暖かな光で、先ほど吸われてしまった魔力が戻っていく。
きっと羅那くんが癒しをくれたんだと、すぐにサナは理解した。
「化け物だよ。だから気を付けて」
その言葉にサナは思わず、息を呑んで。
「で、でも……あのスマートフォン、回収しないと……」
サナの言葉に羅那は、少しだけ嫌そうな顔をしたのだった。




