羅那の忘れた携帯からの依頼
ぴろん。
今日は羅那が会社でサナは休みだった。
だから、今日は思いっきり、羅那のマンションのお掃除をするつもりだった。
「あれ、羅那くん、携帯……忘れてる」
珍しいなと眺めていると、そこに依頼が届いていた。
思わず、画面をタップして、開けたので見てしまった。
『友人と肝試しで訪れた神社で、携帯を落としてしまった。
怖くて取りに戻れないので、代わりに回収してほしい。
場所は水城神社。
境内を進み、いくつかのスポットを回ったあと、奥にある小さな社の付近で落としたはず』
普段なら、羅那のことを待つところなのだが……。
「羅那くん、最近、忙しいって言ってたし。それに落とし物を回収するだけなら、私にも出来るよね!」
それに丁度、羅那と翔が保護魔法かけてくれた、特別製の黒の戦闘服(羅那とのお揃い)も出来たことだしと、クローゼットからそれを取り出し、しっかり着て。ついでに弓を出せるブレスレットと、羅那が守護をかけまくった鳳凰のペンダントもつける。
それに長い髪をポニーテールにすれば、戦闘準備、もとい、向かう準備万端。
「あ、強力懐中電灯も持って行こう!!」
何かの役に立つかもと、こっそり買っておいた懐中電灯が役に立つとは思ってなかった。
「では、行きましょうか!!」
受けますとメールを送って、サナはそのまま、現地へと向かう。
ちなみに、羅那の携帯は家に置いておいている。
手に持っているのは、サナの私物である。
(もう受けちゃったし。すぐ終わらせて帰ろ)
そう思い直し、スマホで改めて地図を確認する。
目的地の神社は、市街地から少し外れた場所にあり、最寄り駅からも距離がある。
昼間ならハイキングコースとしても使われるらしいが、夜はほとんど人が寄りつかないとレビューにあった。
「……うっわ……怖そう……」
最寄りの駅を降りて、そこに来ていたタクシーで、目的地である神社へと向かう。
「お客さん、悪いこと言わんから、あの神社に行くのは辞めた方がええで?」
優しそうなタクシーのおっちゃんがそう言ってくれた。
「でも……友達が携帯を忘れて行っちゃって……」
「そうか……とにかく気を付けていきなよ。あの神社、廃神社っていって、相当ヤバいから……」
そういって、タクシーのおっちゃんは注意をくれた。
うわあ、依頼してきた人、そんなヤバい神社に向かったんだろうか?
「すっごく行くのが嫌なんだけど……」
タクシーから降りたら、より寒く感じた。温かい服装だと思っていたんだけど……。
「落とし物を回収するだけだし、きっと大丈夫……だよね!!」
ちょっぴり嫌な気配を感じつつも、気合を入れていく。
とにかく、光の強い懐中電灯を手に、サナはその廃神社の入口を見上げたのだった。
一方その頃。
「ただいま、サナ……サナ?」
羅那が帰って来た。いつも出迎えてくれるサナがいなくて、羅那は思わず、首を傾げる。
今日は部屋を掃除すると言っていたが……。
「そんな形跡なさそうだな?」
と、羅那の携帯がピカピカと点灯している。
手に取って画面を見た瞬間、羅那の表情が変わった。
「……勝手に、依頼を……?」
見覚えのない返信履歴に、『引き受けます』の文字があった。
「……まさか……」
胸の奥に、嫌な予感が走る。
「もしかして……サナ、一人で向かったのか!?」
羅那は即座に戦闘服へ着替えると、鍵を掴み、黒のランボルギーニでマンションを飛び出した。
向かう先は、当然――水城神社。
その胸に、言い知れぬ不安を抱えたままで。




