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ミッドナイト・リィンカーネーション ~運命に選ばれた彼と恋をして世界が変わりました~  作者: 秋原かざや


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病に飲まれたご令嬢からの依頼

 浅樹家に一通の依頼が届いた。

「まあ、無下にできん相手だからな……羅那、サナ。少々面倒かもしれないが、頼むぞ」

 そう翔に頼まれて、サナと羅那はとある総合病院に来ていた。

 表向き、ただの大学病院……なのだが、アサギグループの息が届いたそれ(・・)関連の病院としても有名であった。

「えっと、ここみたいだね」

「うん、間違いないよ」

 翔から渡されたメモを元にとある病室に立ち止まり、ノックをしてから、サナを先頭に入っていく。

「初めまして、一ノ瀬琴葉さん、ですよね?」

 サナが笑顔で、優しく問いかけた。

 そこにいたのは、青い顔をした少女。その手には透明なカバーをつけたライトノベルの文庫を持っていた。さらに、テレビ台の上には、その手にあるラノベのアクリルスタンドやぬいぐるみなどのグッズがずらりと綺麗に並べられていたのだ。

 それだけで、サナだけでなく羅那も察した。

「同士っ!!」

「はいはい、どうどう……相手は女の子だよ。サナ、落ち着いて」

「ああ、そうだった! 私は浅樹家から来ました。柊サナです! で、隣は浅樹羅那くんです。私、琴葉さん……ううん、琴葉ちゃんって呼ばせてもらうね!! 琴葉ちゃんの病気を治しに来たの! でもでも、それもあるんだけど……そこに飾ってあるの、銀界戦記ルミナスの限定アクスタだよね!!」

「えっ……は、はい……」

 どうどうと、羅那は、サナを大人しくさせて、近くにあった椅子に座らせる。

「ごめんね。サナは同士……いや、そういうのが好きな人を見ると、ちょっと暴走しちゃうんだ。驚かせちゃったよね?」

 格好いい羅那に、そう優しく言われて、琴葉はどきまぎしてしまう。

「えっと……その……私の病気を治しに来たって……お医者様、ですか?」

 琴葉の言葉にサナは、即座に首を振って否定した。

「ううん、ちょっと違うな。けど、琴葉ちゃん。今、苦しい?」

「あ、はい……ちょっとクラクラして、気持ち悪いです」

「応急処置だけど、たぶん、楽になると思うから」

 サナはさっそく、癒しの力でもって、その苦しみから解放してやる。

「サナ……」

「うん、なんかこれ、普通の病気じゃないね。邪気は払ったけど……深い所にあるのは、難しいな」

「で、でも……すごく楽に……なりました」

「それはよかった。じゃあ、お話してもいい? 疲れたら、また言ってね。癒してあげるから」

 そのサナの言葉に、こくんと頷いて、琴葉は話し出した。


 一ノ瀬家は浅樹家には及ばないものの、それでも政財界に強い影響力を持つ名家だった。

 浅樹家にも関わりが強く、そこに無下にできない理由があった。


 なお、今回の依頼は、一ノ瀬琴葉が原因不明の体調不良で、入院が続いているということ。

 現在の科学医療では解明できない病で、かなり深刻な状況になっているらしい。


 今回、サナと羅那に下された依頼は、その原因を突き止め、少女を回復させること。

 それが依頼の内容であった。


「たぶん……歓迎されてないんだと……思うんです……」

 ぽつりと琴葉が言う。

「私……その、ラノベとかアニメとかが好きで……それを揶揄われてて……」

 その言葉だけで、学校内で何があったかはすぐにわかった。今は中学一年生として、一貫校に通っているという。

「そっか。いろいろと教えてくれてありがとう。私達が聞きたかったのは、その辺だからね。それよりも、もう少しお話していい? 琴葉ちゃんの推しは、そのアクスタにいるサリエル様であってる?」

「え、あ……は、はい。サ、サリエル様、です……」

 サナは鞄から、すっとさも当然と言わんばかりに、ケースの入ったアクスタを取り出した。

「あっ! ラズリード様っ!!」

 銀髪の魔剣士……それがサナの持っていたアクスタのキャラ名だった。

「お、お隣の方と……少し似ていらっしゃるんですね……」

「はうっ!! そそそ、そういうことじゃなくって、思わず、彼にすっころんだというか、なんというか!!」

 そう言えば、今隣にいる羅那は銀髪で、魔剣士である。

「あ、そうなんだね。僕はまだ知らないんだけど……ふうん、サナはそのキャラが好きなんだ」

「そそそ、そういう羅那くんは、このキャラ表を見て、どのキャラが好き???」

 急にサナは、羅那に携帯の画面を突き付けて、尋ねてきた。

「え、今?」

「今っ!! ほら、琴葉ちゃんも、知りたーいって言って!!」

 サナに圧されて。

「し、知りたい……です……」

「琴葉ちゃんまで巻き込むなんて……うーん、そうだな……この子かな」

「フィーラちゃん!! そんな気したよっ!! 金髪でお胸が大きいもんね!!」

「そこじゃない。可愛いからっ!!」

 サナの的確な指摘に驚きながら、慌てて羅那は否定した。図星であるが、流石に琴葉の前でいう事ではない。そんな風に言い合いする二人を見て、琴葉は思わず、笑いだした。

「サナさん達って……面白い方……なんですね……」

「琴葉ちゃん、笑った方が可愛いよ」

 くすくす笑う琴葉にサナはそう指摘して。

「今日はお話を軽く聞いただけだけど、明日からより詳しい調査を行う予定だよ。琴葉ちゃんの病気をしっかり治すために私達が頑張るから、琴葉ちゃんも頑張って。何か思い出したこととかあったら、この連絡先に連絡してね。もちろん、ラノベ談義はいつでもOKですっ!!」

 そう言って、連絡先を交換して。

「あの第7話は神回だったよね……」

「はいっ!! すごく尊い回でした。特にサリエル様がミレーナ様を抱きしめて守るところが特にっ!!」

「うんうん、もっと話して!! 聞かせて!!」

 その後、盛り上がりすぎて、ナースに怒られてしまったが、お陰で琴葉と仲良くなることに成功したのであった。



 そんな二人のやり取りを、少し距離を置いてみているのは、羅那だ。

 この病室の中にもいる、仄暗い影を追っていた。


 ――琴葉を狙っている。


 先ほど軽く牽制しておいたので、今は大人しいが、恐らくまだ諦めていない。

 それに、この重い息苦しい感覚は、一度、感じたことがある。

 思わず、ため息が出そうになるのを、ぐっと堪えた。


 ――恐らく、僕の知っている場所だ。


 そして、これは明らかに……『呪い』の類であることを突き止めていた。

 琴葉のことを助けることは、そう難しくないだろう。

 だが――その先に待つものを思うと、羅那の胸は、ほんの少しだけ重くなったのであった。



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