表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第4章完結】学校1の天才美少女な先輩に即告白・即失恋!だけど諦めきれません!  作者: 天井 萌花
第5章 先輩の悩み事編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

227/232

第195話 ……可愛い

 特に深く考えずに会いに行ってしまったが、エリカには悪いことをしたかもしれない。

 時折見せた辛そうな表情を思い出すと、流石に少しは心が痛む。


 ブレアは少し後悔しながら、見慣れた3年の教室がある廊下をしばらく進んで自分のクラスのドアを開けた。


「あああ先輩っ!!どこ行ってたんですか!?」


 途端大声が耳をつき、思わず顔を顰めてしまった。


「ちょっと用があるって伝えてもらったはずだけど。」


 ルークが来る前に教室を出たため、アーロンに伝言を頼んだはずだ。

 チラリをアーロンの方を見ると苦笑いで肩を竦められた。言ったぞ、という顔だ。

 その隣にいるヘンリーが何も言わないので信用してあげよう。


「聞きましたけど!俺もついていきたかったです……。」


「だから置いて行ったんだよ。」


 来てもよかったらいつものようにルークに報告してから行くに決まっている。


「僕についてても楽しくないでしょ。」


「先輩のお姿を見ているだけで楽しいんです!」


「なんとなく寒気が……。」


 少し後ずさったブレアは少しだけ顔を引き攣らせる。

 ブレアがひっついたら離れる癖に、こういう時だけ異様に距離を詰めてくるのは何故なんだろう。


「ルークくん、ユーリー先輩教室入れなくて困ってるんじゃないー?」


「すみません!」


 いつまでも入り口で立ち話をしていそうなので、見かねたヘンリーが声をかける。

 前も同じようなことを言われた気がしつつ、ルークはぱっと道を開けた。

 ブレアがすんとしたまま横を通りすぎていくからか、少ししゅんとした顔をしている。


「……可愛い。」


「「「え?」」」


 ぽつりと零れた小さな呟きに、全員同じ反応をみせた。

 ――ブレア以外。


「どうかした?」


「どうかしたって、今お前“可愛い”って言わなかったか?」


 こてんと首を傾げるブレアだが、確かに言っている。3人とも聞いた。


「可愛いって何がですが?先輩自身が……?」


「君だけど。」


「えっ!?」


 さらりと当然のように告げられルークは混乱している。

 可愛いって褒めているのだろうか。そもそもブレアがそんなこと思うだろうか。仮に思ったとしても言わないだろう。


「――先輩……変な魔法でも使いました!?」


 となると、やはり魔法を疑うしかなかった。

 昼休みにそれを言いかけて失敗したばかりなのによく言う。


「使ってない。さっきから何言ってるの?」


 怪訝そうに眉を寄せたブレアは小さく溜息を吐いた。

 それから何故かヘンリーの隣に座る。


「えーユーリー先輩、何でわざわざこの席に座るんですか?」


 座るならアーロンの隣にしてほしい。

 時々よくわからない絡み方をしてくるのだから対処に困る。


「離れた場所にいるのも変かなって。」


「オレより兄貴の隣の方が面白くておすすめです。」


 雑にあしらわれてしまい、ブレアは少し残念そうな顔をする。


「どーせオレの隣は飽きたとか嫌だとか言うんだろー?」


「ううん。君の隣も悪くないと思ってるよ。」


 ブレアの表情から察したのか、アーロンは呆れたように聞く。

 こっちから願い下げだ、なんて言ってやろうかと思ったのだが、意外にも否定された。


「これだけずっと近いから飽きはするけど。色々言っても頼りになるし、君が隣にいてくれると安心するな。」


 だけでなくさらさらと褒められた。アーロンは意味が分からずぽかんとしている。


「お前……熱でもある?大丈夫そ?」


「ない。」


「エイプリルフールには遅ぇぞ。」


「嘘じゃないよ。君にはかなり助けられてる、ありがと。」


 ブレアは平然とした態度で当然のことのように言う。

 そんな風に思っていたのか。

 嫌われてはいないと思っていたが、思いのほか好印象である。


「おかしくね……?」


「何が。」


「お前が。」


 ブレア自身はなんとも思っていなさそうだがさすがにおかしいだろう。

 思っているかはともかく、ブレアがこんなに素直に礼を言うわけがない。


「あー、お前ルークに何か言いたかったんじゃねぇの?」


「そうだった。」


 怪訝そうに見られたからか、アーロンはあからさまに話題を逸らした。面倒になる前にルークに丸投げしようとしている。

 何の脈絡もなく呼ばれたルークは「俺ですか!?」と驚いた。


「ね、ルーク。僕君がほしい。」


「……へ?」


 一体何を言われるんだろう、と身構えていたルークは間抜けな声を出す。

 意図が不明すぎるがなんとなくドキッとした。


「僕が君に寄るのは他の目的があるからだと思ってるんでしょ?僕は無効化魔法とかじゃなくて君自身がほしいんだ。」


「えぇぇぇぇ……?それはつまり先輩は俺のことが――」


「好きだよ。」


 前も言ったでしょ、とブレアは困ったように眉を下げる。

 何故初聞のような反応をするのだ。


「すごく好き、君の全部。」


 ストレートな言葉にルークの顔が真っ赤に染まる。

 のぼせて倒れてしまうんじゃないかと心配になるほどだ。

 ルークの反応を見ていないのか、見たうえでなんとも思っているのか。ブレアは構わず話続ける。


「ちゃんと好きだよ。真っ直ぐな目も、ちょっとおかしいとこも無駄に賑やかなとこも、いっぱい好――」


「ストーップユーリー、そこまでにしとけ。」


 突然大きな声を出したアーロンが、後ろからぱっと手でブレアの口を塞ぐ。


「兄貴!何してんの!?」


「ゼッテーおかしいだろうが!」


 ゆっくり手を離すと、ブレアは肩を揺らして呼吸をした。

 勢い余って息まで止めてしまったらしい、それは申し訳ない。


「……はぁ、いきなり何?」


「変に口滑らす前に止めてやったんだろ。お前明らかにおかしいぞ。」


「何が。」


 少し強めに言われたからか、ブレアもむっと眉を顰めて返す。


「お前がんなに素直にオレとかルークのこと褒めるわけねぇだろ。さっき言ったこと反芻してみろ。」


「失礼だなぁ。僕だってちゃんと――あれ……?」


 怒って言い返そうとしたブレアは黙って首を傾げてしまった。

 教室に入ったくらいから自分が何と言っていたか思い出せない。

 するすると言葉が出たはずなのだが、そのままブレアの中から抜け落ちてしまったかのようだ。


「あれ、おかしいな……。」


 狼狽えているブレアの様子を見て、アーロンがにやりと笑う。

 ちょっと揶揄ってみたくなったようだ。


「ルークのことがすごく好きなんだってなー?」


「えっ。」


「全部スゲー好きらしいな?」


「や、違っ……くは、ないけど……。」


 わざとらしく言うアーロンに詰められ、ブレアの態度がみるみる小さくなっていく。


「どこが好きなんだっけー?真っ直ぐな目とかー?ちょっとおかしいとことかー?」


「言ってな――言ったんだっけ……。違、いやそうなんだけどっ、言わないでぇ……。」


 かぁぁっと頬を染めたブレアは誤魔化すように顔を隠す。

 照れるルークと恥ずかしがるブレア、意外と反応が似ていてかなり面白い。


「兄貴、その辺にしときなって。」


「わかってる。――んで、心当たりは?」


 うぅーと小さく唸ったブレアがそろりと顔をあげる。

 まだ頬は赤いままだ。


「……言葉通りに受け取ると素直になる魔法。嘘が吐けなくなるとか思ったことが口に出るとかだろうね。」


 普段なら誤魔化しそうなものだがあっさりと種を明かしてくれた。これも魔法の効果だろうか。


「えっ、先輩まさかさっき、の用事って――!?」


「自分でやった……わけじゃなさそうですね。」


 珍しく何かを察したルークだが、焦ったのか何故かカタコト気味だ。

 代わりにヘンリーが聞く。


「……エリカだよ。何もしてないって言ったのにー……!」


「先輩ー!エリカ先輩と会うならやっぱり俺も連れて行ってくださいよ!!」


 はぁぁ、と特別大きな溜息を吐くブレアにルークは少しむっとして詰め寄る。

 ブレアが好いてくれているのは非常に嬉しい。安心もした。けれどエリカは例外だろう。


「もう嫌だ、全然気づかなかったんだけど。あの子本当に……」


 何もしていないと思ったから油断していたのに大恥をかいてしまった。

 ますます赤くなった顔を隠すブレアだったが、突然ふっと顔を上げた。


「――ほしいな。今ならまだ口説――。」


「おい早くこの魔法馬鹿の口戻してやれ。……お前が傷つく前に。」


 ぱっと再びブレアの口を塞いだアーロンは、真顔でルークの方を見た。

 ちょっとこの動作に慣れてしまった気がする。


「ユーリー先輩ってすごいな。ここまで上げた信頼1言で0にできるんだ。」


「黙れマジで。ルークが死ぬ。」


 ぼそっと呟いたヘンリーを注意したものの、本当にその通りだと思う。

 この調子では、暫くは何も進まなそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ