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【第4章完結】学校1の天才美少女な先輩に即告白・即失恋!だけど諦めきれません!  作者: 天井 萌花
第3章 先輩のお役に立ちたい編

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第91話 え、お前女じゃねえって言ったよな……?

 ブレアと同室になってからそうでなくなるまでの約1週間の出来事。

 出来れば忘れたい、けれどとても忘れられそうにないその内容を、アーロンはざっくりと(都合の悪いことは伏せて)簡単に話した。


 間違いなく怒るであろう話は避けたが、険しい顔で何も言わずに話を聞いているルークはどこに怒るか全くわからない。

 無言のルークよりも先に、ヘンリーが口を開いた。


「兄貴、大変だったーみたいな感じで話してるけど、ちょっと喜んでたの知ってるからね?」


「はあ?1ミリも喜んでねえよ、いい迷惑だ!」


 若干引いたような口振りのヘンリーに、アーロンは慌てて否定する。

 必死に否定されると図星っぽいな……とヘンリーは苦笑した。


「同室の人が女子かと思ったら男子だったとか、すっごい美人でドキドキするって言ってたの覚えてるよ?あの時は兄貴とうとうおかしくなったのかーって思った。」


「おかしくなってねえ。オレの印象どうなってんだよ。」


 ヘンリーは楽しそうにクスクス笑いながら言う。

 兄から電話がかかってきたと思ったら、会話の内容が8割意味不明だったことを思い出した。

 『すげー綺麗なの。』『意味わからねえ男なんだよ。』『マジで可愛いんだよコイツ……。』と正反対の意見を交互に言っていた。

 なんだか変な趣味に目覚めたのかと思っていたが、だんだん否定的な意見が増えたので、勝手にフラれたんだと思っていた。


 頭の中で話を整理していたルークは、アーロンの方に向けていた目線を、体ごとブレアの方に移した。


「先輩……なんでそんなことしたんですか!?無防備すぎますもっと警戒心を持ってください!浮気ですか!?」


 立ち上がったルークに詰め寄られたブレアは煩……と顔を顰める。


「ちゃんと言ったら1人部屋にしてもらえるなんて知らなかったんだもん。時系列で見ると君が浮気相手で、これが本命ってことになるけど大丈夫?」


「おいお前余計なこと言ってんじゃねえ!」


「嫌・で・す・〜っ!!それにアーロン先輩、やっぱり先輩のこと可愛いと思ってたんじゃないですか!裏切りでは!?しかも何か先輩の当たりちょっと優しくないですか!?」


 嫉妬したルークに怒られそうだと思ったアーロンが怒鳴るが、予想と反してルークは怒らなかった。

 怒りを通り越して最早泣きそうな顔をしている。


「これは君ほど馬鹿じゃなかったからね。今は……変態盗撮魔に成り果てたけど。」


「変態言うな。別に趣味じゃねえよ。」


 冷ややかな目を向けてくるブレアから、アーロンはそっと目を逸らした。

 ブレアだってあの時は仲良くしよう――とは思っていなかったが、過ごしづらくなったら嫌なので、それなりにやっていこうと思っていた。


「知らなかったからって、なんで男子寮に入ろうってなるんですか!せめて女子寮にしてください……!」


「それも考えたけど、女の子が男かもしれない人と同室になったら怖いでしょ。」


 勿論逆ならいいと思ったわけではないが、ブレア基準で“マシだ”と判断されたようだ。

 だからと言って、ルークとしてはブレアが男と同室など許せない。心配すぎる。


「先輩は女子に甘すぎると思います……。先輩のイケメンッ!俺にも甘く接してください!」


「お前は優しくされてえならその限界ムーブをやめろ。つーかユーリーは女子寮を選択肢に入れるな、男だろお前。」


 呆れたような口調でアーロンが言うと、「え?」とルークとブレアが目を丸くしてアーロンを見た。

 何に驚いているのかわからないアーロンは怪訝そうに眉を寄せた。


「僕、男の子じゃないよ?」


「はあ?今更何の冗談だよ。」


「冗談じゃなくて本当に。」


 きょとんとしたブレアが答えると、アーロンはますます眉を寄せる。

 男じゃないならば、なぜ男子寮に来た。なぜ今ルークと同室なんだ。


「え、お前女じゃねえって言ったよな……?」


「『女の子じゃないかもしれない』的なこと言ったと思うけど、男だとは言ってないと思うよ。」


 アーロンは混乱しているのか、「え……?」と目を瞬いている。

 確かに“女子じゃないかもしれない”と言われただけで、“男だ”とは言われていない気がする。


「先輩の性別はトップシークレットですよ!」


「そういうふざけたヤツいらねえから!真面目に、男だよな?」


 ルークに聞いてもまともな答えは返ってこないと思ったのか、アーロンはじっとブレアを見て答えを促した。

 そういえば言っていなかったかな、と思いながらブレアは正直に答える。


「男かどうかって聞かれても、僕もどっちが本当かわからないんだ。」


「じゃあ本当に女性かもしれなくて、男性かもしれないんですか!?」


 ヘンリーが確認すると、ブレアはこくりと頷く。

 アーロンがルームメイトだと言っていたから、てっきり男性だと思っていた。

 何だか申し訳なくてルークには『男性だよ?』と言えず、“性別不詳”と濁したが、合っていたとは。


「……マジで言ってる?」


「兄貴、ちゃんと確認しないで同室になったんだ?うわ、最低。マジでない。キモい。絶対下心あった。」


「ねえよんなもん。あの流れなら男だと思うだろ普通!?マジかよお前……わかんねえって何だよ……。」


 アーロンは疲れたように大きく息を吐いた。

 衝撃的すぎる事実に、思考を放棄したくなっている。

 前髪を掻き上げるように額を抑えているアーロンに、ルークは訝しむような目を向ける。


「アーロン先輩、今更やっぱり好きとか言いませんか?」


「言うか。女じゃないかもしんねえなら論外だわ。」


 まだいまいち感情の整理ができていないものの、それだけはないと断言できる。

 否定すれば安心すると思ったのに、ルークは怒ったように大きな声を出した。


「じゃあ女子だったら言ってたってことですか!?」


「言うか!最初だったら言ってたかもしんねえけど、中身知っても冷めねえのお前くらいだろ!」


 ひとまず顔を上げてアーロンが否定すると、ルークはますます声を大きくする。


「先輩は外見も中身もめちゃくちゃ可愛くて魅力的ですが!!」


「はいはい、煩えよ盲目信者!もうそれでいいから静かにしろ。」


 アーロンは手で払う動作をして無理やり会話を終わらせる。

 ルークはまだ納得いっていなさそうだが、ひとまずライバルが増えそうになくて安心しているようだ。


「ねえねえ弟さん。思い出したことあるから聞いて。」


「何ですか?」


「兄貴も煩いけどね〜。」と笑っていたヘンリーは、ブレアに声をかけられて首を傾げる。

 ブレアは数秒アーロンを見た後、ニヤリと少しだけ口角を上げた。


「あれ、君のこと好きすぎて僕のこと君と間違えて声かけて、あって顔してたんだよ。何回も。」


「やめろ言うな!」


 折角アーロンが伏せて話したというのに、何故バラす。

 羞恥で少し頬の赤くなったアーロンを見て、ブレアは愉快そうに続けた。


「今は僕じゃない人と同室らしいし、あの様子ならその人にも同じことしてたんじゃないかな。」


「へぇ〜、そうなんですか。そんなことがあったんだねー兄貴?」


 ヘンリーはアーロンの腕を掴んでにこりと笑いかけた。

 ブレアがアーロンにつけたらしい、“重症ブラコン”とかいう迷惑な渾名はこれが原因か。と思った。


「兄貴。話あるから部屋行ってもいい?」


「…………はい。」


 こういう時、残念ながら兄に拒否権はない。

 否定の言葉を考えようと視線を彷徨わせていたアーロンは、観念したように小さな声で返事した。

アーロン先輩がどのくらい伏せたかというと、80%くらい伏せてます


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