第157話 おーい、タクシー!!
「一矢君、ごめんね? さっきはうちのお父さんが大騒ぎしちゃって……」
「い…いえ、大丈夫ですよ。菜弥美部長のお父さんが、うちの親父と知り合いってことが分かってなんだか嬉しかったですし……」
「そっ…そうなの!! 私もうちのお父さんが一矢君のお父さんと昔、同じ部活をやってたことを知って、何だか嬉しくなっちゃって……一矢君達と昔から繋がっていたんだと思うと凄く感慨深い気持ちにもなったし……」
「そ…そうですよね? 俺達って生まれる前から縁があった気がしますよね?」
「そうなのよ!! 何か私達『許嫁』っぽいよね?」
「えっ!?」
「うっ…ウソウソ、冗談よ!! 今のは気にしないで!! そっ…そんな事より一矢君、そこに座ってくつろいでね?」
いっ…『許嫁』って何だよ!?
何でいきなりそんな事を菜弥美部長は言ったんだ?
「しっ…しかし、菜弥美部長の部屋はとても可愛らしい部屋というか、女の子っぽい部屋ですよね?」
「ひっ…一矢君、そんなに部屋をジロジロ見ないでくれるかな!? とても恥ずかしいから
ら……」
「すっ…すみません!! お…俺、女子の部屋に入るのって初めてなもんで、つい舞い上がってしまって……」
「べ…別に怒っている訳ではないからね? ただ私も自分の部屋に初めて男の子を入れたからとても恥ずかしくて恥ずかしくて……」
うわぁぁ、照れた表情の菜弥美部長も可愛いよなぁぁ!!
デートの時もそうだったけど、やっぱ部活の時と違ってプライベートの菜弥美部長は普通に女の子だよなぁぁ……
「そういえば、お母さんは今日はおられないんですか?」
「あ、ゴメンね。そうなの……今日はお母さんお仕事なのよ……」
「ハハ、そうですよね。よく考えたら俺達、今日は昨日の『体育祭』の振替で休みなだけで、世間は平日だし普通に仕事ですよね? 父さんがおられたから何か勘違いしちゃいましたよ……」
「フフフ、そうよね。うちはお母さんが外で働いてお父さんが家で仕事をしているから、勘違いしても不思議ではないわ。あっ、そうそう……一矢君って『アニメ』とかは観るほうかな?」
「えっ? あっ、はい……。そんなに数は観てないですが……『ラブコメ』とかのアニメは観てますよ」
「それじゃぁ、去年放映していたアニメで『ポジティブな俺がネガティブ女子を振り向かせれるのか?』っていうのは知ってるかな?」
「はい!! そのアニメはめちゃくちゃ面白くて毎週観てましたよ!! ってか俺はこの作品の原作者で『ラノベ作家』の『ケシケシ』って人のファンなんですよ。だから他の作品もよく観てましたねぇ……」
「そっ…そうなんだ!? それはビックリだわ……。実はね……実はあの作品の原作者ってうちのお父さんなの」
「えっ、え――――――っ!!?? マッ、マジっすか!?」
「うん、本当よ。お父さんは若い頃から『小説家』を目指して頑張ってたんだけど、なかなか夢が叶わずにいてね……でも十年くらい前に『ラノベ』を書いたらそれが大人気になっちゃって……そこから『ラノベ作家』として活躍しているのよ」
「す…凄いですね!? 後でサインもらってもいいですかね!?」
「フフ、それは全然大丈夫だとは思うけど……でも一矢君がまさか、うちのお父さんのファンだなんて……凄く不思議な気持ちだわ」
「いや、俺もですよ!! 凄く驚きました!! っいうか、うちの親父はその事を知っているんですかね? 今まで親父の口から『ケシケシ先生』の事を聞いたこと無いですし……」
「さぁ、どうだろう。もしお互いに十年以上会っていなかったら、今も『売れない小説家』だと思われているかもね。それに十年前までは家計を支えてくれていたのはお母さんだったから、お父さんも恥ずかしくて一矢君のお父さんには会ってなかったかもしれないわね」
いやぁ、しかし…マジで驚いたぞ!!
まさか、なお『名染伊太学園最高の突っ込み師』が人気作家の『ケシケシ先生』だったとは……もっと色々と話をしておけば良かったぜ!!
でも待てよ?
ペンネームの『ケシケシ』だけど……
「菜弥美部長、お父さんの名前って何ていうんですか?」
「えっ? ああ、うちのお父さんの名前は『大石武志』っていうんだけど、それがどうかしたの?」
「タケシ……ケシ……ケシケシ……ってかこのペンネーム、絶対親父が昔つけた『あだ名』ですよね!?」
「プッ…そうかもしれないわね……」
「でもアレですね? ケシケシ先生に怒られるかもしれませんが、フルネームで名前を聞くと俺の耳には『おーい、タクシー!!』って聞こえますよ」
「ハハッ、それ面白いわね。今度お父さんに腹が立った時に行ってみるわ」
いや、言わないでください!!
ガチャッ
「こらーっ!! 誰が『おーい、タクシー』だっ!!」
「うわっ!! ビックリしたーっ!!」
「お父さん、急に私の部屋に入らないでよ!! ノックぐらいしなさいよぉぉ!!」
「ゴメンよぉぉ、菜弥美~……。でもさぁ、彼がお父さんのことを『おーい、タクシー』なんてふざけたことを言うからさぁ……」
「すっ…すみませんでした、ケシケシ先生!!」
「ケシケシ先生……ま…まぁ、別に本気で怒っている訳ではないんだけどさ……。ずっと立ち聞きしていたら、つい突っ込みたくなったんだよ」
立ち聞きしてたのかよっ!?
「お父さん、ずっと立ち聞きしてたの!? なんて事をするのよ!? この変態!! お母さんが帰ったら絶対に報告するから、覚悟しておきなさいよね!? この『おーい、タクシー!!』」
「早速使うのかよ!? っていうか、ゴメンよぉぉ、菜弥美~っ!! できればこの場面は布津野君に突っ込んでもらいたかったよぉぉ!!」
「すっ…すみません!! ぼ…僕はまだまだ『突っ込み師』としては修行が足らないようです!!」
「ハッハッハッハ!! 冗談だよ。心配する必要はないぞ。布津野君には『突っ込み師』の才能はあるからね。それにあの『八芽ちゃん』の息子なんだし、大丈夫だ」
「えっ? 母さんのこともご存じなんですか?」
「そりゃぁそうだよ。八芽ちゃんだって同じ『ポジティ部』で二個下の後輩だったし、俺が部を引退する時に『突っ込み師』を継いでくれた子なんだからね。奴芽ちゃんの『突っ込み』もなかなか良かったぞぉぉぉ。ヒトヤンもよく八芽ちゃんに突っ込まれていたからねぇぇ……」
そういえば母さんも俺と同じで『突っ込みクセ』があったんだよな?
今までそれを俺には隠してきたけど、前に家で『勉強会』をした時にそれが発覚してしまったんだよな……
しかし、いつも思うけど、何で俺の周りには凄い人達ばかりが集まるんだろうか?
美代先輩じゃないけどさ、俺みたいなこんな何の取柄も無い男なのに何で……
「布津野君、それに君はさっき、ヒトヤンが昔、俺に言った事と同じ事を言ったんだよ。だから君にはヒトヤンの『天然ボケ』と八芽ちゃんの『突っ込み』の両方の血が流れているからこれから磨けば磨く程、『最高のボケもできる突っ込み師』になれるかもしれないぞ!!」
別にそんなのになりたいわけじゃ無いけどな!!
「だから君は『親の七光り』なんだよ!!」
「それ、誉め言葉じゃないですよね!?」
「ハッハッハッハ!! その調子だ!!」
「お父さん、そろそろ部屋から出て行ってくれないかしら? じゃないと……」
「分かった分かった……。今直ぐ出て行くから、母さんに報告だけはしないでくれよぉぉ!? お願いだよぉぉ、菜弥美~」
「もう、うるさいわね!? 分かったから、母さんには言わないから早く出て行ってちょうだい!!」
「はい、かしこまりました!!」
「ケシケシ先生、ちょっと待って下さい!! 親父と僕が同じ事を言っていたって話ですが、僕はさっき何を言ったんですか!? そんな凄い事言いましたか?」
「ヒトヤンと君が言った言葉ってのは……」
「言葉ってのは……?」
「俺の名前を聞いて『おーい、タクシー』って言ったことだよっ!! 目を閉じてあの頃を思い出すと……普通に頭にくるなっ!!」
俺も親父も全然、凄い事を言ってねぇじゃねぇか!!
っていうか逆に恥ずかしいわ!!
「あと、ソレを言ったのは菜弥美は別にして、君で『三人目』だ!! 何か多すぎるだろっ!!」
もう一人いるんか~い!?
そんなくだらないことを言った人間がもう一人いるなんて……
そのもう一人が誰なのかめちゃくちゃ気になるぜっ!!
お読みいただきありがとうございました。
菜弥美部長の父、ケシケシこと『大石武志』は人気ラノベ作家だということが分かり、興奮する一矢。
ただ、ケシケシの『フルネーム』を聞いて『おーい、タクシー』というしょうもない事を言ってしまった一矢だったが、それは前に一志とあともう一人に言われたらしい。
一矢は何故かもう一人が誰かが気になってしまう。
果たしてもう一人は誰なのか!?
これは『学園祭編』で判明する!?
早く知りたい方はスピンオフ小説『ポジティ部(略)』を是非お読みくださいませ(≧▽≦)
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆




