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ユニークギフト『司書』でどんな問題もバッチリ解決! ~名門貴族の落ちこぼれでも物語のヒーローになれますか?  作者: 日之影ソラ
第二章

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29.なめられてるぜ

 依頼当日。

 僕たちは一旦学園に集合して目的の場所へ向かうことにした。


「ついに来たな!」

「ついにって、依頼の話して二日しか経ってないでしょ」

「そんだけ待ち遠しかったってことだよ。腕がなるぜぇ~」

「はぁ、もう、子供なんだから」


 依頼を前にしてはしゃぐジーク君に呆れながら、フィオさんも少し嬉しそうだ。

 かくいう僕もこの日を楽しみにしていた。

 授業をほとんど受けてこなかった僕にとって、この依頼が初めてまともに受ける学園らしい行事だから。

 

「アレンはちゃんと寝れた?」

「ん? うん。ニナは?」

「私も準備はバッチリだよ! フレンダさんは」

「皆さんが一緒だから不安はないです」


 フレンダさんからも前向きな返事が聞こえて僕は安心する。

 一先ずやる気は十分。

 僕たちは足取りも軽やかに歩き、積み荷が準備されている場所へと向かった。

 王都の出入り口付近にある大きな門。

 そこは商人たちが馬車で出入りするための通行口だ。

 すでに積み荷をのせた馬車が三台停まっている。

 僕たちは馬車の近くにいる騎士に声をかけた。


「おはようございます」

「お、来たか。お前たちが依頼を受けた生徒だな?」

「はい。今日はよろしくお願いします」

「ああ、よろしく。少し待っていてくれ。積み荷の確認が終わったら君たちに注意事項を話す」


 そう言って騎士は商人のところへ歩いて行った。


「なんだ? オレたちだけじゃねーのか」

「あんた依頼書見てたんじゃないの? あたしらの依頼は積み荷の一台を守ること。他の二台は騎士の人たちが護衛するの。護衛につける騎士の人数が足りないから学園に依頼が回ってきたんでしょ」

「お、そうだったのか」

「はぁ……ちゃんと見ときなさいよね」


 呆れるフィオさんにジーク君は軽く謝っていた。

 今回の依頼は、王国の騎士たちとの共同のだ。

 王国から派遣された騎士の数は六人。

 積み荷の大きさと代数的に六人での厳しいと判断し、補助要員として学生に声がかかった。


 しばらく待っていると、さきほど話した騎士が戻ってきた。


「待たせたな。では注意事項を伝える。まず第一に、これは授業ではなく依頼だ。くれぐれも遊び感覚にはならないように。緊急時は私たちの指示に従うこと」

「はい」

「うん。それと、今回のルート上には魔獣の出現エリアがある。他にも最近になって勢力を伸ばしている盗賊団『祟りバチ』も確認されている」

「魔獣に盗賊か」


 ジーク君にとっては嬉しい情報だったのだろう。

 彼はわかりやすくやる気をみせ、拳同士をぶつけ合う。

 そんな彼のようすを見た騎士は、眉をひそめながら言う。


「一応言っておくが、そういった緊急時には極力戦闘には参加せず積み荷の護衛に専念してもらう」

「え!? 戦っちゃ駄目なのか!」


 予想外だったのだろう。

 ジーク君は思わず聞いてしまっていた。

 騎士はため息をこぼしながら彼に対して言う。


「当たり前だ。君たちは学生、我々は騎士。ギフトホルダーといっても君たちはまだ学生、子供だ。子供を危険にさらすわけにはいかない。万が一の場合は、君たちは積み荷と共に退避してもらう」

「な、そんなの護衛の意味ないじゃねーかよ」

「ちょっとジーク」

「どうやら君はわかっていないようだな」


 騎士はジーク君に鋭い視線を向ける。

 怒りを含んだ忠告を口にする。


「遊びではない。命を落とすかもしれない場に行くんだ。指示に従えないのなら、君は辞退しなさい」

「くっ、こいつ……」

「ジーク!」

「ちっ、わかってるよ。指示には従う」


 フィオさんが必死に袖を掴んで制止してくれたおかげで、ジーク君も引き下がった。

 騎士は一言、それならいい、とだけ言って去っていく。


「ちょっとジーク! 何考えてるの?」

「しゃーねーだろうが、あいつがオレたちのことなめてやがんだから」

「そうことじゃないでしょ。あの人も私たちを心配してくれてたんだよ?」

「心配だけじゃなかっただろうが。お前だった気付いてるだろ? あいつの顔、完全にオレたちのことみくびってやがったぞ」


 それは僕も感じていた。

 言葉は丁寧で、言っていることは正しい。

 だけど言葉や表情の裏に、僕たちへの敬意は感じられなかった。

 騎士にとって僕たちは、言い方をきつくすれば足手纏いのような認識なのかもしれない。

 それでも……。


「あの人の言うことは正しいよ。僕たちは戦いに来たんじゃないんだか」

「……ああ、悪かった。オレも冷静じゃなかったよ」

「ううん、ジーク君の気持ちも少しわかるよ」


 侮られたままというのは、案外気持ちがよくない。

 僕一人ならいい。

 みんなも一緒にいて、足手纏いのように思われるのは……ちょっと悔しい。

 

「依頼をしっかりこなそう。そうすれば、騎士さんも少しは認めてくれるかもしれないから」

「そうだな! 積み荷を無傷で届けてやろうぜ」

「うん」


 いきなりもめ事を起こしかけてヒヤッとしたけど、おかげで気合いはさらに注入された。

 戦闘の有無に関わらず、僕たちはしっかり依頼を完遂しよう。

 二年生最初の依頼だからこそ、きっちり達成して新しい一歩を踏み出したいところだ。


 そう。

 ここから僕たちの日常は、大きく加速する。

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