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45 変な人

「さっきの人たちって誰?」


「前に話したでしょ。私以外に、もやが出る人がいるって」


「ああ……確か、すっごい美人だって熱弁してた……」


「そう。実際美人だったでしょ?ずっと見惚れてたじゃん」



 ちょっとからかうように言うと、雪成はむっとして口を尖らせた。

 その反応がおかしくて、つい笑ってしまう。



「もうひとりは?」


「恭太さんに紹介してもらった喫茶店のマスター」


「……名前で呼んでんの?」


「名字で呼んだらお姉さんと区別がつかなくなるから」


「ふうん」



 雪成の顔には、はっきりと「おもしろくない」と書いてある。

 何がそんなに嫌なのかはわからないが、あんまりむっとされるとちょっと傷つく。


 少しもやっとしていると、雪成が慌てた様子で「どうしたんだよ」と言ってくる。

 顔をそらしたまま「別に」と返すと、雪成は困ったように頭をガシガシと掻いた。



「悪かったって。なんか、お前が結構気を許してたから、なんか……」


「なにそれ」


「お前、最近俺には冷たいのに」


「冷たいって……」



 話が予想外の方向に向いて、ちょっと戸惑う。

 雪成の表情を見る限り、嘘は言っていないらしい。



「……確かに、恭太さんは特別かも。もやが出る人間なんて私しかいないと思ってたから……なんか、希望の光?みたいな」


「だよな。お前が苦労してたのは知ってたのに……」



 雪成の顔が曇るのを見てたら胸が痛んで、つい口を開いていた。



「最近さ、もやが出る人が思ったよりたくさんいるって知ったんだ」


「……そうなのか?」


「そう。恭太さん以外にも2人ももやが出る人に会った。……これ、言っていいのかわかんないけど」


「え?ヤバい感じの話?」


「……どうだろ。でも、ユキならいっか……あ」



 うっかり昔のようにユキと呼んでしまったことに気付いて、ぱっと口をふさぐ。

 雪成に目を向けると、意地悪そうな顔をして笑っている。



「ユキでいいって」


「……そういうわけにはいかないの!」



 そう言い切ってから、私は最近あったことを話し始めた。

 雪成は黙って聞いていたけど、父も実はもやが出るのだといったときは、さすがに驚愕の声をあげていた。


 今まで父が内緒にして生きたことを簡単に話してもいいのかという葛藤はあったけれど、雪成にはなぜか聞いてもらいたかった。

 すべての話を聞き終えた雪成は、複雑そうな顔をして何かを考え込んでいる。



「どうしたの?」


「……いや、なんか昔……」


「昔?」


「気のせいかもしれないんだけど、家に変な人がきたことがあって」


「変な人?」


「その人が俺に聞いたんだ。……お前のもやは、いつも出てるのかって」


「……へ?」



 雪成の言葉に、一気に体温が下がった気がした。

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