表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/144

28 感覚

 もやを吸い込む石は、なんでもいいというわけにはいかないのだと悠哉さんは言う。

 悠哉さんが身に着けているのは、ミルキークォーツという水晶のひとつなのだそうだ。

 しかし石との相性には個人差があるため、自分に合う石を探す必要があるらしい。



「次に会うときに、いくつか候補を絞ってもってこよう。実際に相性を試してみるのが一番だからね」


「わ、わかりました!」


「ただ、入手に時間のかかる石もある。それに俺も国外にでなくちゃいけないから……次回は2週間後くらいでもいいかな?」


「大丈夫です。お手数をおかけしてすみません」



 次回悠哉さんに会うまでに、私はもやを動かす練習をすることになった。

 もやは自分の意思で動かすことはできないと、ずっと思って諦めてきた。

 でも、希望を持っていいんだ。

 そう思うだけで、心が躍る。



「感覚さえつかめばすぐなんだけど、それがなかなか難しくてね。今の霧山さんにとって、もやは髪の毛のようなものでしょ?頭を振ったり、手を使ったりして動かすことはできるけど、髪の毛だけを自在に動かすことはできない」


「確かに……」


「だからまずは、もやの感覚を認識すること。そこから頑張ってみよう」


「もやの感覚、ですか?」


「そう。こっちにきて、俺のもやに触れてごらん」



 そう言って、悠哉さんはまた目を伏せた。

 ゆっくりともやが湧き出してくる。

 そっと手を伸ばしてもやに触れると、なんだか不思議な感覚がした。


 感触なんかあるはずないのに、なんだか指先にまとわりつくような違和感。

 ほのかな温かさも感じる気がする。

 でも、それを感じ取れたのは私だけで、小春さんと凪さんには何の感覚もないという。


 悠哉さんが目を開けると、ふっともやが消失する。

 深いため息をつく悠哉さんは、少し疲れて見えた。



「あ、あの、大丈夫ですか?」


「あ~……ごめんごめん。もやを出すには怒らなきゃいけないんだけど、さっきも言ったように怒るのって苦手でね」



 申し訳なくなってうつむくと、大丈夫だと悠哉さんが頭を撫でてくれた。



「ところで伯父さん、どうやって怒ってたの?」



 好奇心に負けたのか、凪さんが問いかける。

 悠哉さんは困ったように笑って「ないしょ」だと濁した。



「もやは自分のものより人のものの方が感知しやすいんだ。慣れてきたら、自分のもやの感覚もつかめるようになると思うよ。恭太に付き合うよう頼んであるから、凪を通して予定をすり合わせるといい」


「あ、ありがとうございます。でも、ご迷惑になるんじゃ……」


「子どもがそんなこと気にしないの。それに、俺も恭太も同じように、周りのサポートを受けてきたんだから。どうしても引け目を感じるのなら、次の世代の子を助けてあげればいい」



 ゆっくりと諭すようにいう悠哉さんの言葉に頷いて、私は「よろしくお願いします」と頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ