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星の勇者

 街が燃えている。


見渡す限り赤が視界を支配している。


日常では居並ぶビルも、今や無残な歯抜けをさらしている。


大半は半ば以上崩れ、形を保っているものでも窓ガラスはすべて砕け散っている。


 あらゆる場所で非常ベルが鳴り響いているがそれを止める者は誰もいない。


もうすでに打ち捨てられた地域なのか、救助の福音であるサイレンさえ響いてこずだただ破壊がここにある。




 その街にただ一つ異形が姿を現す。辛うじて人型と言えるであろうか、冷たい金属質であるが生物に見えるその異形は一歩一歩大地を砕きながら更なる破壊を生み出そうとしている。


無作為な破壊を生み出していた銀色の巨体は、今何かを目標に進んでいる。






「はっ、はっ、はっ、、、」




 異形の進む先に無我夢中で走る少年が一人。髪は乱れ、服は汚れている。


辺りには煙もたちこめ、脅威から離れるよう必死に走り続けているが、見るからに限界は目前である。




「なんで、、、どうしてっ、、、」




 ついに散々酷使されてきたスニーカーも破れ脱げ、砕けたアスファルトに倒れこんでしまう。


手をすりむき、顎を打ち、足をくじく。今まで保っていた緊張の糸も切れてしまう。痛みの余りうずくまり、体はもう動かせない。


絶体絶命。


顔は鼻水と涙でぐしゃぐしゃになり、恐怖でのどがひきつり嗚咽もままならない。




 ズズン。ズズン。 




 悪夢の足音が近くに響く。来た。奴がもう来た。


たった十秒ほど足を止めただけで絶望が心臓をつかんだ。動かなかった体が恐怖で反射的に動き、絶望を見据える。




 大きい。 もちろん今までの人生でこれより大きい物は見たことがあるだろう。


しかし、その異様さや圧迫感によってあらゆるものより大きく見える。


なにより、そこに唯在るだけで全身をつかまれているような感覚を覚える。




 心が凍りついてしまう。これからすぐの自分を、絶対不可避の未来を幻視しそれを受け入れてしまう。


このような理不尽な暴力を前に、まわりには誰もおらず自分もすでに力尽きる一歩手前に諦めが心を占める。




 誰も助けてくれない。




 助け? 誰も助けてくれない?




 ぼやけていた視界に、異形を見上げた隙間に、空の青が映えた。




 あぁ。嗚呼!!




 どうして忘れていたのだろう。どうして忘れることが出来たのだろう!


凍り付いていた心が解けていく。絶望に支配されていた心の奥に、小さく頼りないが、それでも力強く輝く希望が復活する。




「たすッ、助けて、、、助けてっ!!」




 たとえ満身創痍であろうとも、その声は確かに届いた。




 少年の最後の力を振り絞ったその時、異形が視界から消え去った。


耳をつんざく音が聞こえ思わず目を閉じ、身を縮ませる。






「君の勇気が、聞こえた」






 優しく響く声にそっと目を開けると、そこに在るのは青。誰よりも強く、誰よりもたくましい青。


その体は機械であった。人型ロボットと表現するのが一番正しい。しかし金属の光沢を持ちながらも、その輝きは暖かく感じる。


 巨人は身を起こすと、少年に振り返り語りかける。




「あとは私たちに任せてくれ」




 そう言うと青い巨人は吹き飛ばした異形へ向かい走っていく。




「遅くなってごめんね、もう大丈夫だよ。 ありがとう、君が最後まであきらめなかったから、負けないでいてくれたから間に合った」




 いつのまにか隣に寄り添っていた青年が、優しく抱きおこす。


固まっていた体が動く。そこに在るとびきりの勇気に体が活力を取り戻していく。




「Bレスキュー、来てっ。彼をお願い」




 小型の救助用ドローンが少年を確保し飛び去っていく。救護カーゴから身を乗り出し少年は力いっぱい叫ぶ。




「ありがとうー!頑張ってーっ!」




 少年の精いっぱいのあふれる気持ちが青年へ伝わり、その輝きをさらに強める。




「聞いた? ありがとうって、頑張れって、また勇気をもらったよ」


「彼もまた一人の勇者になった」




 少年の勇気が自分に宿るのを感じ、場違いな笑顔を浮かべる。




「ブレイブフィールド展開! 掌握完了」




 青年の体から緑の光が溢れ出し、この街を包み込む。


もう彼のような人を出さないため念入りに敵性反応を調べる。




「今回のエースはあいつらしい、ステルスに特化した個体、ISP-09と呼称登録。出力を高めないと反応が出ないみたい」




 少し悔しそうに青年は巨人へ伝える。




「今度こそ最後の一体だよっガーディアス! 出し惜しみはもう無しで行こう」


「了解した、龍斗!」


「ブレイブチャージ! ガーディアス!」




 龍斗の輝きが巨人に伝わり、その叫びにガーディアスが応える。 


ガーディアスから三つの光の道が空へのび、その先から戦闘機、武装新幹線、ドリル戦車が呼び出される。


その三機がガーディアスを中心にフォーメーションを組む。




 ガーディアスを中心に、戦闘機が胸部と肩部に。新幹線が脚部に。ドリル戦車が腕部に合体。




 ガーディアスの新たなる姿が現れる。




「ガーディアス・ブライト!」




 見よ。勇気の輝きを、力強さを、その結晶を!




「ISP-09の戦闘機動を確認、街の被害を最小限にしてっ。一気に決めるよ!」




 ガーディアスは先ほどとは比べ物にならないスピードで迫り、勢いがついた敵を難なく受け止める。


しばらくは力比べとなったが、勢いをすべて殺した後相手を両手で浮かし蹴り上げる。


空中へ吹き飛んだ相手へ両腕を向け腕部ドリルを再展開。ひじ関節から推進力となるエネルギーが溢れ出す。




「スパイラル・ツイン・ブロウ!」




 両腕が相手へと飛んでいき突き刺さる。ドリルが駆動し敵内部へ侵入し突き抜ける。


両腕はガーディアスへと戻るが、ドリルが敵の上下に展開し敵を拘束する特殊フィールドを形成する。




「これでトドメだ!」




 ガーディアスが胸の前へ腕を掲げると、地が裂け大地から剣が出現する。


ガーディアスの全長にせまる程の大きさを持っている。


両手で剣を持ち、腕を振り上げ大地から剣を抜き放つ。握りを変え、そして再び。




 剣を腰を支点に堂々と構える!!




「アースブレード、解放!」




 剣に光が集まり金色に輝く。


 輝きが最大まで高まった瞬間、敵へ向かい一直線に飛び立つ。




「フルブライトスラッシュ!!」




 下からすくい上げるように敵を一閃し背後まで翔け上がり通り過ぎる。




 一刀両断。金色の一文字、軌跡が空に描かれる。




 地面に着地すると同時にISP-09が爆発。


血振りのような動作をし、剣が輝き消える。あたりに優しい光が舞い落ちる。




「周囲の敵性反応完全消失を確認。お疲れ様、ガーディアス」


「任務完了」




 舞い落ちた光が触れた部分から火が消え、街が再生していく。


道路の一部が開き、高硬度シェルターに避難していた住人達が出てくる。






「ありがとう!」「握手してー!」


「よくやった!」「ねぇ、こっちみた!」


「かっこいい!」「サインちょーだーい!」




 龍斗たちに向けて感謝の言葉が降り注ぐ。




「地球防衛軍対インスペクター特務部隊隊長、結城龍斗。ただ今任務を完了し帰還いたします。ご声援ありがとうございます」


「同じく勇者部隊隊長ガーディアス、帰還します」




 そうしてまた一つ、いやたくさんの命が救われた。






 十年前に突如地球を襲った外宇宙侵略戦闘部隊、通称インスペクター。彼らは不定期に地球へ飛来し無差別に破壊を生み出す。


分かっていることは現代兵器では全く歯が立たないという戦闘力の高さ。


 唯一対抗できる手段は勇者と言われている存在だけである。




 これはたった一つの小さな輝きをもった少年が、ただ護りたいというその気持ちを絶やさず、大きな輝きへと成長する勇気の物語である。

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