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テンタクル・プリンセス-或いは、特異触手個体のこと  作者: にゃー
第五章<精霊教都市編>

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第四十三話 着いた

 長い間、更新停止してしまっていてすみません。

 不定期更新&一話当たりの文字数も減ってしまいますが、また細々と続けていけたらなと思っています。



 かつて、初めて森から出て訪れた町。



 比較的小さな町だというあのリガルドですら、私にとっては信じられないほど大勢の人がいて。

 人の、人による、人のための空間。町っていうのはまさにそういう場所なんだって、思い知らされた覚えがある。


 勿論、旅に出てからはあそこなんかよりずっと人が多いところにだって何度も行ったし、潰されそうなほどの人混みに揉まれた事だって、一度や二度の話ではない……主に教都に向かう途中で。


 なので。

 人の波に流される気構えというか、私史上最大級であろう人混みを目の当たりにするうえでの心の準備というか、そういうのはちゃんとできているつもりだった。


 そう、人の多さに関しては。














「……まさか、街に入ってから半日以上歩くことになるとはねー…」


「広いでしょう?無駄に」


「無駄……かどうかは、分からないけど」



 教都は、恐ろしく大きかった。



 うきうきで訪れたセレナが、2日目にしてもううんざりだって顔になるくらいには。

 なんだったら背負って歩こうかと提案したのだけれど、あえなく却下されてしまいました。



 私?私は全然疲れないし、むしろよくこの広大な範囲を都市としてまとめられたなぁと感心したものだ。外壁の高さ・厚さ・大きさたるや、まさに『文明』って感じだよね。






 まぁ正直なところ。

 遠く離れた街の外から外壁を視認した時点で、私やセレナが想像していたよりもはるかに大きな都市である事は、なんとなく予感はしていたのだけれど。


 昼過ぎとも夕方前とも言えない微妙な時間に町に入ったとき、カナエが「今日はこのあたりで宿を取って、明日中心部に向かいましょう」なんて言い出した時点で、その予感は半ば確信に変わったのだけれど。


 あ、ちなみに『中心部』なんて言っていますが。

 これは立地的な意味ではなく精霊教としての機能の事であって……実際には街の西側まで行かなければなりません。大陸西部の西端の都市の中のさらに西端。そこに精霊教の本部というか、中枢というか、とにかくそんな感じのものがあるわけです。

 全く、精霊教の偉い人達はどれだけはしっこが好きなんだろうか。







「とはいえ、もう学園区も抜けましたし、ここからはそう時間もかからないでしょう」


  はぐれないように3人ひと固まりになって人混みの中を進みながら、街に入ったときに貰った都市内の地図を眺めるカナエがそう呟く。


「えぇと……学園区のつぎは、ようやく精霊教区だっけ」


 セレナも横から覗き込んでいるそれは、地区や縮図度、いくつかに分けられた区画それぞれの特徴、さらにはおすすめの宿、酒屋、その他諸々ごとにページ分けされており……最早地図というより分厚い冊子のようで、表紙には妙に軽快な字体で『絶対損しない教都観光の手引き~そうだ、教都へ行こう~』なんて書かれている。



「はい。教区の中央、大精堂でローブを返納して……その後は宿を探すか、見つからなければ師の家に厄介になりましょう」


「急に押しかけて大丈夫なの?」



 ……っていやいや。行こうっていうかもう教都には着いているのだけど。



「一応、こちらに戻ったときにはいつでも訪ねてこい、と言われていますから。とは言えあまり長居するのも心苦しいので、しばらくの拠点は探さねばなりませんが」



 ていうかなにこの「築34年、ギルドまで徒歩5分!旅人さんの長期滞在にはおすすめの宿です!」って。確かにありがたい情報ではあるけどさ。地図って普通はもっとこう、お堅い感じというか何というか……文字通り『地理地形を示す図』的なものじゃないの?

 それとも、こういうのが教都の流行りなのかな。



「カナエさん、昔はここに住んでたんだっけ。お師匠さんと一緒に」


「住んでいたというよりは、巡礼官になるにあたって一時期滞在していただけですね。なので正直、師の家がどこだったか、若干うろ覚えなのですが……」



 流行りといえば、学園区内で同じような服を着た少年少女を何度か見かけたけれど、あれも流行の1つなのかな。それとも巡礼官のローブみたいな、何かの役職とか集団とかを表すものだったり?



「まあ、こんだけ広くて建物がいっぱいで、道も入り組んでたらねー……地図見ながらでも迷いそうだもん」


「ええ全く。幸い、大精堂までの道は大きく分かりやすいですから、そこまでは迷うこともないでしょう」



 あ、学園区といえば、噂の大図書館は学園区内にあるそうで。

 この冊子いわく、おもに学生だの研究生だのがよく利用しているのだとか。勿論それ以外の一般人も利用できるみたいだから、ここは滞在中にぜひとも足を運んでおきたいところ。



「とりあえず今日は、ちゃちゃっと行ってちゃちゃっと用事済ませちゃおー、ってことで」


「といっても、もう日も傾き始めているのですが」



 そうそう足を運ぶといえば、なんとここ教都、居住区以外の3区画全てにギルドの支部が設置されてるらしい。

 一つの都市に冒険者ギルドが複数あるっていうのは驚きだけれど、それもこの広さを実際に体験すると、なんだか納得できてしまうというか。



「……私が今朝、宿を出るときに言ったセリフ、覚えてる?」


「『まだ日も昇ったばっかりじゃーん』でしたっけ?」



 居住区は主要3区それぞれに併設されている。ギルドに用がある人はそこからわざわざ遠くまで足を運ばなくとも、自分の住んでるところから一番近い区画の支部に行けばいいというわけだ。

 便利、というかあまりにも広すぎるがゆえの措置って感じかな。



「あれからもう半日。教都って、恐ろしいところなんだね……」


「まあまあ……それほど気を張らないでいい分、街の外での半日よりは大分ましでしょう。治安も良いですし」



 あと、最早今更言うまでもないけれど、尋常ではない人の量。

 獣人は少ないけれど、人間、エルフは老若男女問わず街から溢れんばかり。すっごいちやほやされてる精霊さんなんかも度々見かける。



「いやぁむしろ、町に入ってもまだ歩き通しっていうのが、なおさら疲れを誘う気がするよ……」


「あはは……」



 居住区や内縁区の一部には、昼夜を問わず人気の多いところとか、逆に夜になると騒がしくなる地区なんかもあったりして。宿屋や酒場以外の店も、結構夜まで開いてるのが当たり前なんだって。



「まっあとすこし、頑張りますかっ」


「ええ、もうしばらくで着きますよ」



 まさしく、これまで訪れてきた小さな町や村とは一線を画す、昼夜という概念を凌駕するほどの超巨大都市。


 私に言わせれば、これっていうのはもう人族がこの世界で最も繁栄した生命である事のこれ以上無いほどに分かりやすい証明であり、またそれと同時に今私は触手という小さな存在でありながら人類の深奥部に迫っているとも捉える事ができるわけであり、そしてそれが意味する所としては――



「で、ミーニャここまでの会話聞いてた?」


「……ごめん、あんまり聞いていなかった」


「だろうね」


 ――うん、ちょっと妙なテンションになっちゃってたみたい。

 極力、平静を保っていたつもりだったのだけれど。



 知ってた、という様な顔をするセレナ。


 その横でカナエが、ずっと周りに夢中でしたものね、という言葉に続けて、微笑みながら私に問いかけてくる。



「で、どうですミーニャさん。教都アルベディアは?」



 どう、と聞かれて、簡潔に言い表すならば。



「……………………いろいろと、すごい」 



 つまり、そういう事。















 結局その後も。



 大精堂がまた呆れるほど大きな建物だったとか。


 『大精堂』というのだから物凄く精霊を祀ってあるのかと思ったら、事務的に色んな案件に対処する場でもあったとか。


 かと思いきややっぱり、大精堂内に精霊様をちやほやする専用の区画があったとか。


 案件別の窓口が多すぎて窓口を紹介するためだけの窓口があったとか。




 挙げ始めるときりがないのだけれど。

 私は最早、2人に付いていきながら、何かにつけて心の中で驚き続けるだけの存在と化してしまって……









 ……ふと我に返ったときにはすでに、ローブの返納とか新調の要望とか、諸々全部終わっていた。



「部屋が空いていてよかった。取りあえず今夜は、今後しばらくの行動方針を決めなければなりませんね」


「おっけおっけ」



 というか、いつの間にか今夜の宿まで取り終えていた。


 しかしまぁこの宿もまた、なかなかお目にかかれないほどの大きさですなぁ。

 最寄りのギルドまで徒歩何分くらいなのかな?



「……その前にあれだね、ミーニャを正気に戻さないと」


「……ですね」




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