表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンタクル・プリンセス-或いは、特異触手個体のこと  作者: にゃー
第三章<集落編>

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/47

第十六話 村人の噂

 感想や評価をくださる方がいて、ホントに嬉しいです。ブクマも増えてきましたし、これからも頑張ります。

 

 思ったより長くなってしまったので、二章を二・三章に分割し、章題と十三話目以降のタイトルを変更しました。

 私がセレナ達の家の居候となってから、はや1か月。


 人らしい振る舞いがそれなりに板についてきた私は、今日も今日とてセレナを揺さぶり起こす。



 ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさっ!!



「んぁぁぁぁぁぁ……おはよー……」



 最近はあまり文句も言わずに起きるようになってきたセレナが、しかしやっぱり眠そうな声で挨拶をする。


「…おは、よう」


「んー…だいぶ上手く喋れるようになってきたねー…流石ミーニャ…」


 目を擦りながらそう言う彼女に、私はこくりと頷いて返す。


「…おかげさま、で…」





 人としての生活にも少しずつ慣れていき、すこし余裕が出てきた私は、レゾナから人の体の構造について教えてもらうことにした。

 そう、より正確に人を模す為である。


 まぁ、彼女の口から説明された人族の体の中身(・・)は、私の想像をはるかに超えた複雑奇怪なもので、結局それは、人体全てを再現しきるのは到底不可能だろうという事実を突きつけられただけとなったが…

 口とお尻の穴が繋がっているとか、本当びっくりだよ。

 


 とはいえ、やはり声は出せるようになっておいたほうが良いだろうという事で、講義の後、実際にセレナの口の奥を観察。それを模すように口内を拡張し『喉穴』を作成、そこに『声帯』を模した2本の触手を生やし、発声機能を再現することに成功した。

 本来であれば、息を吐くときの空気の振動でこの声帯を震わせて声を出すのだが、私は呼吸をしないため、触手(声帯)を直接操作し震わせる事で発声している。



 当然ながら最初の内は、上手く音が出せなかったり、思っているのと違う音が出てしまったりと苦労した。

 声帯をどう震わせ、舌や唇の形をどうすればうまく声を出せるのか試行錯誤したし、今まで以上にセレナ達の口の動きに注目して、言葉と口の動きのパターンを見極めようとした。



 そうして、これまでの生活と並行して言葉を話す練習も毎日欠かさず行った結果。

 最近ようやく、簡単な会話ができる程度には言葉が話せるようになったのだ。

 セレナ曰く、「クールながらもどこか幼さが残る声音が最高にキュート」なんだそうだ。意味が分からない。


 今でも、長い言葉や難しい会話などは魔法板を用いて行ってはいるが、やはり話せるようになったことで、日々の生活は劇的に楽になった。一々ちょっとしたことでも文字を書かなければならないというのは、存外に面倒くさいものなのだ。 






「おはようセレナ、ミーニャ。朝ご飯もう出来てるわよ」


 1階に降りていくと、既にお母様が朝ご飯をテーブルに並べているところだった。

 む、セレナと発声練習をしていたら、思ったより時間が経ってしまっていたようだ。


「おはよーおかあさん」


「…おはよう…少し、遅れた…」


 小さく頭を下げて謝ると、お母様は、


「いいのよ、こっちまで声が聞こえていたし」


 と笑って許してくれる。お母様やさしい。


「だいぶ上手く喋れるようになってきたんじゃないの?」


 私の頭を撫でながら嬉しそうに言う彼女を見て、「セレナとおんなじこと言うんだなー、これが親子というやつか」とか「お母様ももう平気で私の体触るようになったなー」とか考えながら、ゆっくりと言葉を返す。


「…まだ、まだ…。がんばる…」


「そう。まあ、ゆっくりでいいのよ」


 こくり。


 

 初対面の時があれ(・・)だったから、やはり最初の頃は、お互いちょっとぎこちなかったけれど。

 この1か月でお母様ともだいぶ仲良くなれた気がする。もちろん、お父様とも、レゾナとも。


 ちなみに、レゾナの事も最初は『お婆様』って呼んでいたのだけれど、本人が「なんだいその気持ち悪い呼び方は…。わたしはレゾナかババァで十分だよ」と言うので、名前で呼ぶことにした。いや、いくらなんでもババァは流石に…ねぇ?


 後、一度頼み込まれてセレナの事を『お姉様』と呼んでみたら、死ぬほど撫でまわされた。汗を吸収しても割に合わないほどに疲れたので、もう二度と呼ばない。多分。




「はん、1月前にあんだけ喚いてたのと、同じ人物にはとても見えないねぇ」


「もう、おばあちゃんったら。……えへへ、でも、なんかいい感じ、だよね」


 


 私とお母様のやり取りを見ていたレゾナとセレナが、片ややれやれといった感じで、片や嬉しそうな笑みを浮かべながら話している。


 うん。私もなんか好きだな、こういうの。








「ただいま。ああ、セレナにミーニャ、おはよう」


「邪魔するぞ。今日も飯をいただきに来た」




 ちょうど朝食の準備が終わると同時に、お父様とエトナが家に入ってきた。


 お父様は朝食の前に、散歩に出かけることが多い。そしてその途中で走り込み中のエトナに遭遇し、うちまで連れてきてみんなで朝食を食べる。割とよくあるパターンだ。


 ちなみに少し前に聞いたのだが、エトナはこの一家の親戚にあたるそうで、家も近くにあるのだとか。





「んで、ミーニャ。調子はどうだ?」


 

 みんなが席に着き、朝食を食べ始めたところで、私の向かいに座っているエトナが話しかけてくる。あ、私は食べないけど、出来るだけ一緒に席に着くようにはしている。『食事の時はなるべくみんなで』というのがこの家の決まりみたいなので。



「まぁ……それなり…」


「そうかそうか、そりゃよかった。『ほどほど』ってのはいいもんだ」


 話しながらもエトナは、割と遠慮なしにぱくぱくとパンやら野菜やらを食べている。

 『ほどほど』が良いのではないのか。


「これがあたしの『ほどほど』なんだよ」


 さいですか。


「まあ、あたしの事は置いといて、だ」


 一旦手を止め、正面からこちらを見据えながら、言葉を続けるエトナ。




「どうだミーニャ、そろそろ家の外に出てみないか?」




 エトナのその一言に、各々食事をしていたセレナ達が、一斉に顔をこちらに向ける。


「…そと…」


「ああ、振る舞いもだいぶあたし達(・・・・)らしくなってきたし、一応は言葉も喋れる様になった。いい頃合いなんじゃないかと思ってね」



 外。外か…

 

 この1か月間、私はずっと家の中で過ごしてきた。

 何も分からない状態で外に出て、村人たちの前でうっかりボロを出してしまっては一大事だ。家から出るのは、他人が見ても怪しまれない程度に人らしく振る舞えるようになってからが良いだろうと、私も、この家の人達も考えていた。




…でも……うん、そうだな。そろそろ、良いかもしれない。


「…うん…。外、出てみたい…」


 私のその言葉にエトナは、「そうかそうか」と満足げに頷くと、セレナ達の方へ顔を向け確認をとる。


「本人もこう言ってるし、構わないかい?」



 真っ先に返事をしたのはお母様で、


「そうねぇ。家の中だけじゃ、学べることに限界があるものね。いいわ、いってらっしゃい」


 私に微笑みかけながら、背中を押してくれる。それでいて「ただし、無理はしないようにね」と釘を指すのも忘れない。 



「大丈夫、私が付いていくから!フォローは任せといて!」


「くくくっ、あんたのフォローなんて危なっかしくて逆に心配だよ。ま、困ったときはエトナを頼りにするんだねぇ」


「もうおばあちゃん、またそんなこと言う!」


 いつも通り勢いだけはあるセレナと、いつも通り憎まれ口が達者なレゾナ。

 この孫と祖母は、いつもこんな掛け合いをしている。本当に、仲がいいんだろうな。



「うん。僕もいいと思うよ。今のミーニャを見て触手だって気付く人は、誰もいないだろうさ」


 お父様も、穏やかな笑みを浮かべながら同意してくれる。


 おお、なんか、やる気出てきた。

 よし。今日はいつも以上に、頑張ってみよう。

  



「うん、よかったよかった。いや実はな、最近村で噂になってることがあってなぁ」


 噂?


「『エルヴィンの家に、いつの間にか子供が1人増えてる』ってやつなんだが」



 『エルヴィン』とはこの一家の名字の事。その家に子供が増えいてる、という事は、つまり…



「もしかして、ミーニャの事ばれてるの?」


 やっぱり、わたしですよねー。


「いや、直接見た奴はいないらしいんだが、やっぱり1か月もいると、なんか雰囲気とかを感じるらしい」


 この家は、少し他の家とは離れたところにあるものの普通に集落内に建っているし、エルヴィン家のみんなはいつも通り村人たちとも交流している。

 家の雰囲気とか、彼らの会話の端などから、村人達も新たな居住人の存在を感じ取ったという事だろうか。


「流石にそろそろ村のみんなにも目通ししとかないと、後から厄介なことになりそうでなぁ」


 確かに、今は噂程度でも、これがずっと続けば、やがては村人たちも不審に思い始めるだろう。私は実際にここにいるのだ、いつまでも隠し通すことはできない。

 家ぐるみで正体不明の誰かを匿っているとなれば、流石にご近所様方も心中穏やかではいられまい。


 この家の人達には本当にお世話になっている。私のせいで彼らに余計な迷惑がかかるのは、本意ではない。


「…ん、分かった。…あいさつ回り、する…」


 村中を回るのは大変だが、自分が引き起こした問題の芽は、自分で摘み取るのが筋というもの。

 よし、いっちょ頑張りますか。

 

「ああ、別に集落中で見せて回ろうってわけじゃないんだ」


 ってそうなの?

 改めて気合を入れ直した私の言葉を、エトナが手を振りながら否定する。


「適当に出歩いて、道行くやつらに顔を見せれば、後は勝手に話が広まっていくだろうよ」


 何せ小さな村だからな、と付け加えるエトナ。

 そんなものなのだろうか。あ、いや、だからこそ噂も広まっていったのか。


「とりあえずあれだな。今日は、あたしがいつもよく行くところに顔出してみるか」


 話は決まったとばかりに、パンの最後の一欠片を口にした彼女の台詞を聞いたセレナが、「げっ」と声をあげた。

 

「あそこにミーニャ連れていくの…?私はんたーい…」


 露骨に嫌そうな顔をしているが、何か問題でもあるのだろうか。


「何を言う、みんな気のいい奴らじゃないか」


「まぁ、悪い人たちではないけどさー…」



 

…えっと、私はどこに連れていかれるんでしょうか。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ