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異世界転生の女神に転生! 〜ひとつのカラダにふたつの魂〜あなたが転生出来るまで、私の仕事を手伝って!  作者: 黒砂 無糖


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8/21

同僚は心配する 


コンコン


誰かが扉を叩く。



「ハイ、どうぞ」


ガチャリと、扉を開けて入って来たのは…



「プルクラ、様子はどうだ?」


 ギードは、部屋に入って来るなり、心配そうにこちらを見つめている。



「ギード、心配ありがとう。凪はちょうど今、眠らせたわ」


 私は、自分の胸の辺りを、トントンと軽く叩いてみせた。



「そうか…その、どうだった?」


 ギードは、私が叩いた胸元にチラッと目をやると、すぐに顔を逸らした。



「凪の魂は、かなり弱々しかったから、私が受け入れたのは、ある意味正解だったかも」


 一旦、しっかり休ませる事で、魂の回復自体は出来るだろう。



「そうか、それよりも、プルクラは大丈夫なのか?」


 それよりも…って、心配してくれるのは嬉しいけど、神としてはどうなのよ?



「私は問題ないわ。ただ、自由を与えるつもりはないから、不自由なの。それだけが心配ではあるわね」


自分の思い通りには動けないのは、嫌よね…



「今は、疲れているんだろう?不自由を感じ取れるくらいの、自己主張が生まれたら、転生させれば良いんじゃないか?」


 ギードは、さらっと良い感じに、提案をしてくれたけど…



「それだと、手伝って貰えないじゃない…」


私は優秀な人材を求めているのよ。



「なんだ?それが本音か?そんな事の為に、わざわざ自分に転生させたのか?」


ギードは、ギョッとしている。



「そうよ?凪の好きな事はプレゼンで、特技は資料作成なの。こんなに素敵な人材、中々いないわよ?」


何か問題あるかしら?



「プルクラ、次の会議には、必ず人員補填を申請するから、もう、無茶はやめてくれ」


 ガックリ項垂れたギードが、縋るような目で見てくるけど



「私が無茶をするのは、今に始まった事じゃ無いでしょう?今更何言ってるのよ。貴方、最近、なんだかおかしいわよ?」


 不思議に感じたので、首を傾げてギードをみつめると、



「あ、いや、なんて言うか…その…そう!前例がないだろ?前例が無い。だからだ!」


 ギードは、ちょっとワタワタした後、やたら『前例が無い』と力説している。



「まあ、いいわ。とりあえず、なんともないから気にしないで」


 私も少し休みたいから、さっさと帰って欲しいのだけど、彼はソワソワしたまま、まだ帰ろうとしない。




「…プルクラ、もし、おかしな事になったら、俺がなんとかするから、必ず俺に言えよ!じゃあな!」



 ギードは、早口で捲し立てると、言たい事だけ言うと部屋から出て行った。



「なんで、わざわざギードに、言わなきゃならないのかしら?」


——転生案内人だからかしら?


いちいち言わないし、ま、なんでもいいか。



 今日は、もう疲れてしまったので、入り口の扉を施錠して、就寝の支度を始めた。



「凪は、いつ起きるかしらね?とりあえず、起きたら、私の仕事を見てもらって…一緒になって…考えて…」


 私は、ベッドの中で考えてみたけど、慣れない事ばかりで疲れたのか、身体を共有した事で、疲労を感じていたのか、


その日は、あっという間に眠りに落ちた。




***翌朝



コンコン



——誰よ


「プルクラ!俺だ」


——なんだ、ギードか




コンコン、コンコン



——ギード、うるさい


「おい!いないのか?」


——ギード、しつこい



ドンドン!ドンドンドン!



——うるさいわね?なんなの!!



 扉を叩く音と、声が大きくなったので、

私は、イライラしたまま扉を開けた。



ガチャ



「何?」


 私はイライラした顔で、ギードを睨んだ。

眠りを妨げるなんて、いい度胸ね?




「おい!プルクラ、大丈夫か?!」


 扉を開けたら、ギードが慌てながら、私の肩を掴み、顔を覗き込んできた。



「ギード、離れて。寝てたのに一体何よ?」


 私は彼の手を、身体を捻り振り落とした。昨日にしろ、私の事を構いすぎだ。いい加減にして欲しい。



「お前、普段眠ったりしないだろう?報告がしたくて、何度か立ち寄ったんだが、朝から返事が無いから心配したんだ…」



——確かに、普段の私なら眠らないわね



 私は仕方がないか、と思いながらもつい、

「はぁ」と、ため息をついた。



「で、報告は何?」


気を取り直して、ギードに仕事の話を振る。



「ああ、昨日最初に転生させた、勇者の魂の事なんだが、何だか勘違いをしていたみたいで、生後すぐにベラベラ喋り出して、悪魔付きとして命を落としたそうだ」



——は?あの魂、何してるのよ



「勘違いって…何をどう勘違いしたら、赤子でベラベラ喋ろうとするのよ?」


お喋りな魂ではあったけど…



「魂を回収して、本人に聞き取り調査をした所『チート』か『俺TUEEE』と勘違いして、勝手に特別感を出そうとしたらしい」


ギードは、理解不能だと、両手を上げた。


「意味がわからんし、お手上げ状態だったから、魂は保存して、一旦相談に来たんだ」



 魂が異世界転生に対して、理解が有るのは良いけれど、新しい世界が増えるほど、魂達の知識も増え、余計なトラブルが増える。



「今後、転生案内の時、『注意事項も伝えた方がいい』と、資料に記載するわ」


 勇者の魂を送った世界などは、何かとシビアだ。甘えた考えだと、すぐに消される。



「プルクラ『チート』ってなんだ?」


 ギードは、聞き取り調査中に、言葉の意味がよくわからなかった様だ。



「チートは、元々はズルとか騙すからきてる言葉よ。ゲーム用語だと不正行為ね」


 最近は、世界もだけど、言葉も増えているから、常に更新しないと大変なのよね


「魂の言っていた『チート』は常識はずれの力や、能力の事よ『俺TUEEE』も似た様な感じね。それが許される世界もあるの」


 一時期はやたらと流行ったけど、今でも結構希望者は多いわよ?


「魂にはとりあえず、チートじゃない事と、『努力型チート』だとでも言って、地道にスキルアップを頑張る様に言えばいいわ」


リベンジなら、アホな事はしないでしょう



「分かった…プルクラ…」


 ギードは納得した後、まだ何か言いたそうだけど、目覚めたなら今から仕事がしたい。



「ギード、これ以上何か言ったら、一切口効かなくなるけどいい?」


 私はギードに、にっこり笑いかけた。


 余計な言葉は完全に拒否だ!



 ギードは、慌てて頷くと、肩を落としてトボトボと去っていった。




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