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異世界転生の女神に転生! 〜ひとつのカラダにふたつの魂〜あなたが転生出来るまで、私の仕事を手伝って!  作者: 黒砂 無糖


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案内人の仕事 

やっと会える…


 解放された魂は、フヨフヨとギードの放つ神力の範囲内に浮遊している。



「ˈɛ.mə tɑː.meɪ.ˈzɑː.mɛr.i tɑː.kiː.ˈhɑː.kiː.toʊ ˌjoʊ.iː.ˈʃiː.mɑː.tə-ruːˌmuː.neɪ.ˈniːˌkɑː.rə.suː.ˈjɑː 」



——私、呪文が苦手なのよね



 見習いの頃に『転生部』にいた事がある。私はかなり、呪文に苦労したのだ。


 呪文が嫌で『異世界転生を司る女神』になったとも言える。



 ギードが流暢に呪文を唱えると、浮遊していた魂がポワッと光り輝き、点滅した。



「選ばれし者よ、目覚めよ」



 ギードが神様らしい、低く落ち着いた声で話しかけると、魂の声が聞こえてきた。



(あれ?ここは…え、誰?めっちゃ美人!)



——あら、正直者ね?


 私は表情を変えず、邪魔しないように、黙ってギードに寄り添っていた。



「我は神、其方は死んだ。其方は選ばれた」



 現実を突き付けられた魂は、チカチカと慌ただしく点滅して



(は? 死んだ? あ…確かトラックで…)


——信じられないわよね


(んだよ、トラ転しないのかよ。目覚めたら知らない街でしたーとかさぁ)


 どうにもこの魂は、転生の仕方に不満があるらしい。たまに居ると聞いたけど



——面倒な奴だわ



「其方が向かうは、剣と魔法の危険な場所。

魔物が蔓延るこの世界では、力こそが正義」


(マジ?俺、魔法使える様になるの?スゲー楽しみじゃん)


 この手の問題には慣れているのか。ギードは魂を無視して、淡々と話を進めている。



「其方に勇者の力を与える。前世の記憶を知恵とし、新たな世界で力を振るうがいい」


(勇者!主人公確定!異世界で多種族ハーレムも、もしかして作れる?)


 全力で異世界転生に前向きな魂は、細かな事より自分の欲望が優先なようだけど


彼の行く世界は、かなり荒れた世界なので



——ま、せいぜい頑張ることね



 ギードは魂の心配する事をやめて、細かな事は何も言わず、さっさと仕事を終わらせた



「さあ、行くのだ新たなる世界へ」



 ギードの言葉に合わせて、床に丸い穴が開くと、魂はそこに吸い込まれて行った。


 穴の向こうは、果ての無い宇宙空間が広がり、送られる魂の転生先である星がある。


「あの魂なら、どこでも生きていけそうでしょ?」


 私はニヤリとしながら、ギードを見ると

彼は、苦笑いをしながら


「ああ、さすがプルクラが推薦した魂だな」


と、認めてくれた。


「あの魂は生前から、自己愛の妄想が激しかったから、丁度いいかなって思ったのよ」


資料を見ただけで、ちょっと疲れたのよね


「ナルシストなら適任だろうな」


 ギードは、ワゴンから新たな保存瓶を取り出している。


「もうひとつの魂は『自然転移』をするから案内する必要がない。すぐに済むよ」


そう言って、ギードは魂の解放をした。


『自然転移』とは、神の干渉は無く、能力を授けて魂だけ送るパターンだ。


「ˈheɪ.mə ˌtaɪ.kuː.ˈmuː.niː ˌiː.sɛn.ˈdʒɪə.ɹuː ˌnɑː.ɡiː.tsuː」


 ギードが呪文を唱えると、魂はポワッと光り、床に空いた穴に吸い込まれて行った。




「次はプルクラに転移する魂だな。説明は自分でするのか?」


ギードに言われ、私は魂の保存瓶を手渡した


「ええ、魂が弱っているから、出したら急いだ方がいい気がするの」


——説明しているうちに、消えそうだから


 ギードは頷くと、蓋を開けると同時に呪文を唱え始めた。



「ˈɛ.mə tɑː.meɪ.ˈzɑː.mɛr.i tɑː.kiː.ˈhɑː.kiː.toʊ ˌjoʊ.iː.ˈʃiː.mɑː.tə-ruːˌmuː.neɪ.ˈniːˌkɑː.rə.suː.ˈjɑː 'hel.mə ˌtaɪ.kuː.ˈmuː.niː ˌiː.sɛn.ˈdʒɪə.ɹuː ˌnɑː.ɡiː.tsuː」



 すると、魂は弱い光を灯しながら、ふらふらと近寄り私の胸元に吸収される。


「っつ!」


 娘の記憶が、いっぺんに私に流れ込み、記憶に溺れそうになったけど、正気を保ち、自分の記憶と感情を遮断した。


 女神の記憶なんて、ちょっとでも触れたら、情報量の多さに、人間の魂なんか一瞬で弾けてしまう。



「プルクラ、大丈夫か?」



 息を飲んだ私をギードが心配しているけれど、構っている暇はない。


 私は、ギードに向かって、親指だけ立てて大丈夫だとアピールをして『転移の間』を出て行く。



「「お疲れ様でした」」



 入り口にいた2人に声をかけられたけれど、会釈だけして、足早に自室に戻った。


 次々流れ込んできた記憶が収まり、凪の困惑している感情が流れ込んでくる



(あれ?ここはどこ?)


私の心に、困惑する気持ちが広がった。



——これは私の感情じゃないわね


 私の感情は、凪に行かない様にした。彼女は、他の感情に振り回される。私の感情を汲み取らない為にも見ない方がいい。



「凪、目覚めたかしら?残念なお知らせだけど、貴方は死んだのよ」


 私の感情とは裏腹に、凪が驚いたのか心がきゅっと縮んだ。



(え…死んだの?あれ?誰か話しかけてる?)



 視界を共有しているから、彼女の視点も立って歩いているはず。


私は鏡の前に行き、私の姿を写した。



(わぁ、綺麗な人…)



 凪の気持ちは、少しだけ浮上したけど、すぐにまた静かになってしまう。



「初めまして凪、貴女の魂は今、私の中に居るのよ」



凪は、びっくりしたのか、無になっている。



「貴方は今、私なの。理解できるかしら?」



あれ、凪は凪よね?凪は私になるのかしら?


私は、ちょっとよくわからなくなっていた。


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