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異世界転生の女神に転生! 〜ひとつのカラダにふたつの魂〜あなたが転生出来るまで、私の仕事を手伝って!  作者: 黒砂 無糖


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『転生の間』にて 

さてと…


『収魂の間』を出て、廊下を真っ直ぐ進むと

一際大きな扉がある。



「「プルクラ様、おはようございます」」



 扉を守っているのは、交代制で警護に駆り出されている各世界の戦神達だ。



「今日は、珍しく2人なのね」



 警護に笑顔で声を掛けると、2人は顔を見合わせて、プッと吹き出す。



「何よ、なんで笑うの?」



 私には意味が分からず、困惑しながら2人に視線を向けると



「プルクラ様、その、なんて言うか、その髪型では、折角の美人が台無しです」



 警護のフォルティスが、おでこの辺りを指差しながら、笑いを堪えて伝えてきた。


 相方のイシュロスは、私から顔を背けて声を殺して笑っている。


おでこがどうかしたのかしら?



 私は自分のおでこを触ろうとして、いつも邪魔な前髪がない事に、ふと気付いた。



——嫌な予感だわ



おでこより上に、そっと手を伸ばすと



ファサッ



 私は昨夜、書類に没頭する為に、頭のてっぺんで、前髪を縛っていたのよ…



「……」



 私は無言で、プルプルと震えに合わせて揺れている。ソレを外した。



ふわっと、前髪を掻き上げる。



——無かった事にしよう



 私は気持ちを入れ替え、にっこりと、他から褒められる、美しい笑顔を作り



「扉を開けてくださる?」



 あくまでも「何も無かったわよね?」と、とびきりの笑顔で圧力をかけた。



「は、はははい!!」「ぷはっ、はい」



 警護のイシュロスは慌て、フォルティスは笑って返事をした。



——フォルティス、貴方の事は忘れないわ



 いつか必ず、笑った事へ仕返しをしよう。

と心に決めて、私は『転生の間』に進んだ。



 扉を開けて貰って中に入ると、正面にある壁の中央の世界時計が、チッチッチッっと音を鳴らしている。



「いつ見ても不思議な時計よね」



 世界時計は、神の世界の時間を中央に置き、その周りに、それぞれの世界の時を刻む時計が配置されている。


 世界毎に時間単位が違う為、全てバラバラな時間に見えているし、動きも全く違う。



「新しい異世界が増えてるわ」



 世界時計は、新しく世界が生まれると、その時を刻む新たな時計が増える仕組みだ。


 左右の壁にある、それぞれの世界の扉も同様で、世界が増えると、扉も増えていく。



「この部屋も、随分広くなったわね」



初めは小さな部屋だった。



 最近になって、世界が一気に増えているので、時計も扉もどんどん増えて、今ではかなり広い部屋になっている。



「剣と魔法のファンタジー世界は…」



 扉には、色とりどりのクリスタルがはめ込まれている。私は、青いクリスタルの扉を開けて、そっと中に入った。


 中は真っ白い空間で、少し霧が出ているせいか、果てしなく遠くまで広がって見える。


小さな小部屋なのに、見せ方が上手い



 小部屋にはすでにギードが来ている。今から、案内人の仕事をするつもりの様だ。



「ギード、来たわよ」



 部屋と全く同じ、白い箱型ワゴンには、魂の入った保存瓶が並んでいるはず。


 真っ白い空間と霧を利用した目の錯覚で、ワゴンの存在は全く見えない。



——近づいても見えないのは凄いわね



私は、そこにあるはずのワゴンを、目を凝らして探しながら、ギードに近づいて行く。



「ああ、時間あるなら見ていくか?プルクラは最後でもいいだろう?」



 作業をするギードの隣まで寄り、手元の瓶を見てようやくワゴンの存在を認識できた。よく出来ていると感心していたら


ギードに、転生案内を見て行くかと問われた




——たまには、見て行くのも悪くないわね



「そうね、久しぶりに見ていこうかしら」




 案内人の仕事は、割り振られた魂を一度覚醒させ、転生する世界の説明をすること。


 ギードは数ある異世界転生の世界の中で、最もスタンダードな転生を担当している。



『剣と魔法の世界』



 要するに後々勇者、聖女、大魔導師などに成長し、魔王討伐をする者達への案内人だ。



——さっき見た、元気な魂達ね?



 資料を見た限り、今回転生する魂は、なんの心配も無い魂だ。


 元気が有り余っているので、ちょっとハードな世界を選んでみた。



——まあ、何とかなるでしょう



 最近は、色々と特殊な世界が増えているので、マッチングが難しくなっている。


 案内人も世界の数に合わせ、世界観にあった神を増やしていった。



「コイツらの行く世界は、ちょっと大変だけど、大丈夫なのか?」


ギードは、少し心配しているけど、



「健全で、中々図太い魂だから、大丈夫よ」


私が心配無いと伝えたら、納得した様だ。



「お前、全ての世界把握してるとか、何気に凄いよな」


思いがけず、ギードに褒められてしまった。



案内人は、世界毎にルールが違ったりする。


 説明は勿論、魂からの質問に答える知識が必要なので、彼等は細部まで暗記している。


 一方私は、把握はしてるけど、分からなければ資料を見れるから、その分簡単なのだ。



「プルクラ、見てるなら俺の腕を取れ」



 諸々の準備を終わらせたギードが、スッと右肘を浮かせた。


何のつもりだろう?



「ギード、腕組む必要ある?」



「あ?ボーっと突っ立ってる女神とか、見た目的におかしいだろ?」


思い浮かべてみたら、確かに変かも…



「お前が、俺の腕に黙って寄り添っていれば、一段と『それっぽく』なるだろ?」


ギードは、ホレと肘を張る。



「言われてみればそうね?ギード、あなたちゃんと考えてるのね?」


 私はギードに言われた様に、彼の手を取り自分の腕を絡めた。


 ギードがビクッとして、組まれた腕を凝視した後、こちらをマジマジと見つめて来た。



私、何かしたかしら?



「お前、結構…いや、何でもない」



 ギードは、ため息をついて頭を振り、気持ちを切り替えているように見えた。



「とりあえず余計な事するなよ?魂は対峙する時、死んだショックで混乱している。俺が威厳を失えば、話を聞かなくなるからな」


 随分と失礼な事を言われている気がする。

そもそも、余計な事とは何だろう?



私がムッとしていたら



「はねてるぞ…」


ギードが私の髪を撫でて、整えてくれた。


 さっきビクついたのは、はねた髪が、腕に当たってくすぐったかったのかもしれない。



「始めるぞ」



 ギードは、魂の保存瓶から、勇者になる予定の魂を丁寧に取り出し解放した。



 私は、ギードの転生案内を見れる事に、

ドキドキしていた










読んで頂きありがとうございました


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