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異世界転生の女神に転生! 〜ひとつのカラダにふたつの魂〜あなたが転生出来るまで、私の仕事を手伝って!  作者: 黒砂 無糖


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4/21

不憫な魂 

魂は、どんな感じかしらね?


魂の転生は、会議翌日に行われる。



 異世界転生の魂は、私が采配しているけど、私の仕事自体は転生前までで終わる


 まずは転生予定者の、性質や能力に合った転移先の確保と、付与する能力を割り振る。


 転生日に回収された魂を、回収役から受け取り、確認後『ガイド役の神』に受け渡す。



ここまでが一連の動き。



 会議後は、魂を受け取りに行くまで暇になるから、今は束の間の自由時間なの。



「さてと、やっとゆっくりできるわね」



 冷めないポットにお茶を入れて、カップに注ぎ、クッキーをひとつ頬張る。



「とりあえずは彼女の、人生をしっかり把握しなきゃいけないわよね」



 私は、クッキーを食べお茶を飲みながら、明日『私に受け入れる』魂の資料を見た。





転移者名  


小早川 凪 24



▪️家族構成とおおよその見解


・元を辿れば立派な家柄だったが、本家筋ではなく分家。分家は時代と共に衰退。


・現在は、中流以下。


・気位ばかりが高い時代錯誤な厳格な父と、

立場と意志の弱い母の元に生まれる。


・兄が1人いるが、大学入学時に家を出て以来、連絡は途絶え、未だ行方不明。




「何だか、既にこの時点で、想像つくわね」




・俗に言うモラハラDV家庭


・父親がすぐに暴力を振るうため、幼少期から、常に親の顔色を見て育つ



「だよねー、そんな気がしたわ」


私はモグモグしながら、独り言を言った。




・長男は、両親から溺愛されていたが、凪は不要な子扱いだった。


・家庭内での発言権はほぼ無く、空気を読みずっと黙っている子供だった。


・父親がいる時に、家庭内で口にした言葉は「はい」「ごめんなさい」「ありがとうございます」だけだった。




「ちょっと待って、なんなの?思った以上に酷いじゃ無い!」


まだ、一枚目よ?



 会議前は、急いでいたので、死に際の、後ろの項目から見たから知らなかったわ…


 冒頭ページの名前や家族構成などのページは全く見ていなかったけど



「これは、かなり覚悟して読まなきゃ…」


 私は、姿勢を正し、真剣に彼女の人生を読み込んでいった。



「‥‥‥」



 怒りをおぼえ、言葉すら出なかった。


読み終わる頃には、体に力が入りすぎたのか、肩から背中に、痛みが出るほどだった。



「凪、あなたは私になるのよ、だから、これからきっと幸せになれるわ」


 私は凪を必ず癒し、幸せな人生を送れる様にすると心に誓い、固く決心した。



 ほんの思いつきで、自分の為に、仕事が出来る娘の魂を取り込むはずだったのに


彼女の人生を見たら、


そんな事はどうでも良くなったわ。



——凪、余りにも不憫な人生だったわ



 その日の残り時間を、私は食事中も、入浴中も、凪のことを考えながら過ごした。



「早く明日にならないかしら?」


 私は、一刻も早く凪の魂を助けたくて、早く寝ても一緒なのに、さっさと床についた。




ピピピピピンピピピピピンピピピピピンピピピピピンピピピピピ ガチャン!バリン!!




 目覚ましのアラームが煩くて、うっかり壁に投げつけてしまった。


目覚まし時計を壊すのは、何度目かしら?



「んーっっ、眠いわぁ」


——眠るなんて、いつぶりだろうか?



 ベッドの上でグッと伸びをして、身支度を整えると、ふらふらと執務机に向かい、


ポットに入れっぱなしだったお茶を飲んだ。



「くっ、やっぱり渋いわね」


目覚めには丁度いいわ



  私の部屋の場所は、天界の宮殿の端で、

『収魂の間』まではかなり近い。


 部屋を出ると、私は魂の受け渡しの為に、議事堂とは反対側に歩き出した。



「ちょっと早く来すぎたかしら?」


 『収魂の間』の扉を開けて中に入るも、

まだ回収役が来ていない。


 部屋の中央には、大、中、小の、クリスタルの様に透明な球体ドームが並んでいる。



——いつ見ても綺麗



 時間が停止しているドームの中に、回収された魂が、ふよふよと漂っている。


 魂は色とりどりで、淡くほのかに光り大きなドームの中を照らしている。



「今回も、沢山の人が生まれ変わるのね」


 1番大きなドームは、高い天井に届きそうだ。中には輪廻転生する魂が入っている。


 中くらいのドームの魂は、光を失い濁っている。生前に罪を犯した魂だ…



「あら、最近増えてるわね」


 汚れた魂は『浄化空閑』に送られ、隅々まで浄化した後、輪廻の輪に戻される



 1番小さなドームには、異世界転生の条件を満たした魂が入っている。



「あらあら、随分元気な魂がいるわね」


 他とは、明らかに違い、やたら素早い動きをする魂がふたつある。



「ふふ、コレ、きっと勇者に推薦した魂ね」


 今回の勇者召喚用の魂は、エネルギーと運動能力がかなり高いから、きっとそれだろう



ドームの底に、一際元気が無く、


光を失しかけている青白い魂を見つけた。



——あれは、凪ね



 嫌な事だが、余りにも酷い魂の消耗ぶりに、一目で凪の魂だと分かった。



カチャリと音がして


『収魂の間』に回収係のザムラーが現れた。



「プルクラ、随分早いですね」


 ザムラーは、カラカラとカートを押しながら室内に入ってきた。


 カートの上には、魂を入れる特殊な保存瓶が、必要数並んでいる。



「今日は、気になる魂があったから、早く来てしまったの。邪魔しないから見ていてもいいかしら?」


 既に作業を始めていたザムラーは、瞬きで軽く頷くと、瓶を掴みドームに押し当てた。



——いつ見ても、ドームの素材は不思議ね



 ドームは、特殊な素材らしく、スルリと瓶を受け入れた。ザムラーが瓶の蓋を開けると


 1番元気だった魂が、ヒュッと保存瓶の中に吸い込まれた。


ザムラーは蓋をしたら、外のカートに出す。



「さすがに瓶の中では大人しくしてるのね」



 ザムラーは、次々と回収していく。私は、移動用のケースに次々としまっていく。



最後のひとつは、凪の魂だ。



 私はつい心配になり、保存瓶に回収される様をずっと見ていた。


回収は無事されたけど…



凪の魂の光は今にも消えそうだった



「プルクラ、この魂、大丈夫か?転生した途端に崩れそうだよ」


 沢山の魂を触ってきたザムラーですら、

凪の魂は危うく感じる様だ。



「大丈夫よ、必ず癒して見せるわ」



私は凪の魂が入った保存瓶を受け取ると、


持ってきていたケースにそっとしまった。







魂が思ったより疲弊していたので、プルクラは女神としての使命感が先立ちました。



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