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王女誘拐計画


 各自がそれぞれ楽しんだ温泉巡り、明日は全員で回っていこうと言う話になったのだが今は温泉よりも今夜出て来る夕食の方に話題がいっているようだった。もう時刻も時刻なので皆もうかなり空腹なのだろう。

 だがそれ以外にもムゲンには少し気になっている事があったのだ。


 「(ん~何だかみんなの様子が少しおかしい気が……)」


 戻って来た他の3人の様子が何か気になったのだ。

 まずウルフはどこか熱のこもっている視線を自分へとチラチラと向けている気がする。そしてそんな挙動不審気味な彼女に対してハルが耳元でコソコソと笑顔で話しているのだ。そしてソルの方も自分の顔を見ながら何か難しい顔をしている。


 「3人とも何かあったのか? 心なしか様子がおかしい気がするが…」


 「いや…その…あのぉ……」


 「実はウルフさんがお話があるそうです♡」


 ムゲンがどうしたのかと問いかけると真っ先に反応をしたのはウルフであった。顔を真っ赤にして視線をしどろもどろとさせている。どう考えてもまともな状態ではない為に少し心配になって思わずムゲンは自分のおでこを彼女のおでこと合わせた。


 「おいおい顔が赤いぞ。もしかして熱でもあるんじゃ…」


 「ふええええ~……キュウ……」


 「あ、あれ!?」


 ムゲンの顔が至近距離まで迫ってきて耐え切れなかったウルフは顔を更に倍は赤くしてそのまま倒れそうになる。その体を慌てて支えながら彼女の体を揺さぶり声を掛ける。


 「おいしっかりしろウルフ。本当に大丈夫か?」


 大事な仲間の身を案じるムゲンであったがそんな的外れな考えをしているムゲンに対してハルは呆れた様なため息を盛大に吐いた。


 「もうムゲンさんは未だに鈍い部分が抜けきっていませんね」


 「え、それってどういう……」


 「……こればかりは私から言う訳にもいきません。ウルフさんが直接言わなければいけないので内緒です」


 ハルの言葉の真意が読み取れず首をひねるムゲン。

 何が何だか分からないがどうやらウルフが自分に対して何か物申したい事があるらしい。とは言え肝心の張本人がこの有様なのでこちらの問題は後回しにせざる負えない。

 それに様子が気になるのはウルフだけではない。どうにもソルも自分に対して何かを言いたそうにしている。


 「ソルはどうしたんだ? 俺に何か言いたいことがあるなら話してくれ」


 「いやまあ言いたい事っていうか…まぁ後で話すよ」


 結局はソルも言葉を濁し何も言わずに全員がそのまま旅館の中へと入っていった。その際に気を失っているウルフは自分がおぶって部屋まで戻る事となった。


 だが部屋へと戻る廊下の途中でムゲンはつい先ほど別かれたばかりのある人物とまたしても再会したのだった。


 「あらあなたは……」


 「なっ、アセリア姫…」


 前方から歩いてくる二人分の人影、それはアセリア姫と護衛であるローズと言う赤髪の女性であった。まさかの王女様との再会にムゲンの口からは『姫』と言う単語が咄嗟に出てきてしまった。瞬間的にしまったと言った顔をしたがもう遅かった。


 「おいムゲン、お前今何て……」


 「アセリア姫って……あ、よく見たらそちらの人の顔……」


 まさかこんなにも堂々と旅館内を歩いているとは思わず、もっと言うのであればまさかの同じ旅館に宿泊しているとすら思っていなかったのだ。

 向こうの方もこの再会は驚きの様で分かりやすく驚いた表情をしている。


 「まあこれは驚きましたわ。こんなにもすぐに再会するとは思いませんでしたわ」


 「先ほどぶりだなムゲン殿。そちらの者達は君のツレか」


 そう言いながらローズはムゲンへと近づくと彼にだけしか聞こえないように耳打ちしてきた。


 「別れ際にも言ったがアセリア様はお忍びで来ているんだ。周りに居る女性たちは君の仲間なんだろうがあまり『アセリア姫』と口に出さないで貰いたい」


 「すみません。まさかこれだけ数ある旅館の中でバッタリ出会うとは……」


 「はあ…まあ君の仲間にならまだ知られても許せる範囲だが……」


 そう言いながら視線を後ろに向けるとハル達とアセリア姫が何やら色々と話をしていた。

 

 「じゃあやっぱりアセリア姫ご本人なんですね」


 「流石に度肝を抜いたな。まさか自分達の暮らしている国の王女様とこんな所で会うなんてな」


 「は、初めましてです」


 「もしかしてあなた亜人さんですか? お耳がモフモフしてますわぁ♡」


 いつの間にか意識を取り戻していたウルフを交えてかなり楽し気に談笑していた女性陣。

 その様子を見てローズはため息交じりだがどこか微笑ましそうな表情を見せる。


 「王女と言う立場上、アセリア様は大変窮屈な暮らしをしているとは私も思っている。だからあんな風に歳の近い同性との会話はさぞ楽しいんだろうな」


 やはり王女と言う肩書はかなりの行動制限を課せられるらしい。ローズに言われてアセリア姫の方を見てみるとただの談笑でも凄く楽しそうにしている。


 「結果的にはこの旅行で君に会えたことはプラスだったのかもな」


 そう言いながら自分へと小さく笑いかけてくれたローズ。その姿はまるで自分の妹を心配する姉のようであった。


 するとアセリア姫が談笑の輪を抜けると自分達の方までやって来てこんな事を言ってきた。


 「ローズローズ、今日の夕食はこちらの皆さんと一緒に取ると言う事で決まりましたわ」


 「え、ちょっと待ってくださいアセリア様。そんな事を急に言われても……」

 

 「ですので大至急大広間を使えるように旅館側に取り計らってくださいな」


 「いえですからそんな急遽なんて……!!」


 「では段取りの方をよろしくお願いしますね。私はこちらの方々とお部屋の方でおしゃべりして待っていますので」


 そう言いたい事だけ言ってハル達を連れて部屋の方へと消えていく。

 残されたムゲンは隣でいきなりの無理を頼まれて肩を落としているローズを見て苦笑した。


 「俺も一緒に旅館側に頼んでみますよ。団体客でも居なければ大広間だって使わせてもらえるだろうし……」


 「ああスマナイな。はあ…やはり連れて来るべきではなかった」



 ◇◇◇



 無理難題を言われてローズが肩を落としているその頃、彼女達の宿泊している『ハナミズキ』の付近では二人の男が物騒な話し合いをしていた。


 「こ、ここにライト王国の第二王女が居るんですか?」


 「ああ間違いない。今夜この旅館を襲撃して王女を攫うぞ」


 旅館の近くで王女誘拐の計画を練っていたのは山賊の1人と用心棒のエッグであった。

 今回の誘拐計画を立案したエッグは部下の山賊を連れて王女の潜伏先を捜し当てていた。そして旅館の周辺の位置関係を事前に確認して誘拐計画を滞りなく成功させるための下準備に動いていたのだ。


 「最初にも言ったが計画実行は今日の夜だ。いいな絶対にミスるなよ」


 「は、はい。もちろんです」


 「よし…それじゃあ一旦アジトに戻るぞ」


 下調べも終えたエッグはそのままアジトへと戻り日が落ちるのを待つことにする。


 だがこの時に彼は気付いていなかった。陰で狙われているのは王女様だけでなく彼もまた恐ろしい存在に今も見張られていたと言う事に……。

 


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― 新着の感想 ―
[気になる点] エッグを狙ってるのはもしやアサシンの子か? 闇ギルドは善悪関係なく依頼を受けてるだろうから王女の護衛でも依頼されたか?でもそれならホルンのパーティに入ったのはどう言う思惑なんだろうか?…
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