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344話
ショパンの生きた一九世紀には十万台を製造したとされるこの二社だが、特にショパンはプレイエルを愛した。彼のガラスのような心模様を表現するには、こちらのほうがより適していた。
彼の恋人のジョルジュ・サンドが、共にスペインの温暖なマヨルカ島へ移住した際。彼が作曲のために持ち込んだのはプレイエルのアップライトピアノ。ここでは『二四の前奏曲』『バラード第二番』などの名曲をいくつも作曲した。
「……うん。じゃあ……『雨だれ』とか。ちょうど雨、降ってるし」
今日も雨。昼間は少し晴れていたのに。どうせなら雪だったらいいのに。雨は。やっぱり嫌だ。よくわからないけど。ショパンの『雨だれ』は好きな曲だけど。なんか。なんか。嫌だ。
でもリフレッシュするにはいいのかもしれない。ピアノのリフレッシュに違うピアノて、と自分でもよくわからなくなる。あまりピアノに優劣というものはつけたくないのだけれど。それでもやはり、ショパンの愛したものは自然と優先順位が高くなる。
良いピアノ、というものは最初からは存在しない。弾いて弾いて弾いて。私達ピアニストが『良いピアノ』に押し上げるのだ。




