表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
重々しく。
161/369

161話

 そこからきているという説が有力だが、人生の全てをベットしてのめり込んでいたものを、容易く凌駕された際に根こそぎ活力を奪われたり、弾けなくなる症状を《ハイフェッツ症候群》という。酷いものになると、ヴァイオリンの弓を持つことすら出来なくなり、触れただけで嘔吐する者もいる。


 厄介なやつー、とサロメもやる気が奪われた。むしろシューベルトを弾けてはいる時点では、まだ傷は浅いほうか。となると。


「……社長。貸しとくわ。ちゃんと返してね」


 手はないこともない。正確には、治す方法はない。メンタルの部分でもあり、精神科医にでもかかったほうがいい可能性も高い。だが、間に合わないというのなら、荒療治もアリっちゃアリ。


 やる気を出してくれたエースに満足のルノー。しかし発言に気になる部分。


「キミへのクレーム、だいたい処理してるの私なんだけど」


 調律先での家のものを勝手に飲食、途中帰宅などなど、専用のクレームファイルがある。ただ、それでも実力が伴っているため、クレームを入れた人達からのリピート率は高い。


「それはそれ。これはこれ。『WXY』のマンディアン。五箱」


 老舗ショコラトリーのお菓子をサロメは注文する。ナッツやドライフルーツが乗ったショコラ。頭の中がそれでいっぱいになる。


 なんとなくこうなるだろうと読んでいたルノーは、ひとつ提案。


「あの子に頼めば?」


 アトリエにはWXYと繋がりがある。顧客、というわけではないのだが、そこのスタッフとは知り合いなのだ。なのになんでわざわざ。


 過去を回想するサロメ。少し不機嫌。あいつには約束を破られた。


「イヤよ。新作が出来たら真っ先に持ってくる、って言ったのに忘れてるし」


「仕方ないね。元々は私のお客さんだし」


 ルノーも諦めて条件を呑む。自身にはいい案は思いつかなかったのでひと安心。誘っておいてやっぱりダメでした、は申し訳ない。


 勝手に話が進む現状に、覇気をなくしたイリナも介入する。


「……なんの話……?」


 自分のことなんだろうか。わからないが、今を整理したい。どうなっている?


 その答えはサロメが明かす。思いついた方法。調律師の範疇じゃないっつーの、と険しい目線を突き刺す。


「ピアノの講師じゃ絶対にやらない矯正。ま、治るかはあんた次第。あたしにはどっちでもいいけど」


 今後の参考にやってみるだけ。結果はどっちでもいい。ミスっても知らない。弾けなくなったらなったで、その程度だったと諦めてもらう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ