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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
自由な速さで。
111/369

111話

 そして走り出す。全ての楽器が出発を祝う。この楽章のクライマックス。水平線の彼方までを目指し、力強く駆け出す。最後に一度、強い音を生み、この楽章は終わる。


(なんで、あたしはあの場所にいないんだ……)


 イリナはふと、そんなことを考える。『雨の歌』の時もそうだった。最後を締めくくったのは、自分ではなかった。じゃんけんで負けたから。というのは、つまり、圧倒的な理由で、自分を選んでもらう実力が足りていなかった、ということ。もし実力があれば、じゃんけんにはならなかった。


(仕方ない、仕方ないけど……悔しい)


 聴衆は四者四様で、頭の中を音楽が駆け巡る。


 そして、最終章。誰もが一度は聴いたことのある曲に移っていく。


 第四楽章。アレグロ・コンフォーコ。ブランシュが最後の香りを、自らの武器とする。


 テーマは『疾走』。アメリカが押し寄せる。蒸気機関車の唸りと共に。なら、その勢いに我々も身を委ねる。


 《シダーウッド・アトラス》。過去と未来を繋げる聖なる樹木。


 《バレリアン・ルート》広がる大地の香り。困難を打ち破る苦味。


(そして、ドヴォルザークと蒸気機関車。全く、苦労させられました)


 ブランシュが笑みを浮かべる。絡み合う三つの香り。最後のピース。駆け抜ける鉄の塊。ドヴォルザークの想い。


 《フランジュパニ》。永遠の魂。燃え盛る太陽のような情熱。


 そしてそのまま、ピアノ三重奏は疾走、そして飛翔する。

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