薬を作ってみよう!
この小国は王も国民も気さくで、招かれた者であれば一般人もパーティーに参加できるようだ。
薄い緑のドレスに着飾ったハスミは、周囲の煌びやかな雰囲気に気圧されていた。
ダンスの経験などなさそうなファラスも貴族幼女に連れて行かれ、中央で勘に頼って踊っている。くるくる回っているだけだけれど、見ている限りどちらも笑顔だ。
意外にも社交の経験があるという騎士と治癒師は女性の相手をそつなくこなしながら、交代で必ず一人はハスミの傍についている。
仲間の男性は皆が見目の良い者ばかり。
勇者として敬われてはいるのだろうけれど、ハスミへの嫉妬の視線もちらほらと見受けられた。
ハスミは隣に立っているアーロイスの横顔を見上げて、俯いた。
――帰りたいわ。
非常に疲れた。
そんな彼女に声を掛けるのは、国の宰相だった。
「勇者様、楽しんでおられますかな」
「はい。料理もとっても美味しくて」
宰相とは、パーティーが始まってすぐに挨拶が済んでいたと思うけれど。
不思議に思っていると、宰相のやや後ろに立つ人物が変わっていることに気づいた。先の挨拶では、なんとか卿なんとか伯爵だとかいう小難しい名前のいかつい男性を紹介されたのだけど、今は美しい金髪の青年がいた。
青年は白色の正装だ。三つ揃えに似ているけれど、金や小粒の宝石などの飾りが上品にあしらわれている。式典服だろう。どことなく軍服っぽくも見える。場内の男性の一割はこれと同じものを着用していた。そして五割ほどの男性は、同じ意匠でも灰色で少し地味。色は地位に関係があるのだと推測する。
――ところで、この人は誰かしら?
青年の服をじっくり観察しておいて今更だけれど、ハスミは改めて思った。
――どこかで見た覚えがあるような、ないような。これだけ綺麗な顔をしていたら、忘れることはなさそうだけれど――。
彼の金髪に既視感がある。
少女の尋ねるような視線に、宰相は「ああ、そうでしたな」とわざとらしく応えた。
「ご挨拶を」
「はい」
宰相ににこりと微笑むと、その青年が前に進み出る。
「僕は宮廷のお付きで、魔術師を務めています。ルイと呼んでくださって構いませんよ」
耳触りの良いその声と優しい雰囲気に、
「――っ!」
ハスミの顔はぼっと赤くなる。
宰相は、ルイを勇者の旅に同行させることを望んでいた。そうすることで、勇者一行が魔王を倒した暁にはルイの名と共に国の利益をうんたらというよくある企み。
「ええ、僕でよろしければお手伝いさせていただきます」「よろしくお願いします!」「元気の良い方ですね」という会話をする二人を、エレノアはじっと見ていた。
「……はあ」
会場の一番高い窓の外側から、内部を覗いていた。
エレノアは硝子に手をついて難しい顔をしながら、ゲームの共通ルートを思い出す。
このパーティーは勇者の紹介も兼ねているから、勇者も一度は前に出て踊らなくてはいけない。パートナーに、攻略対象キャラの誰かを選ぶことになる。会場から出て妖精と踊る選択もある。
エレノアの視線の先で、ハスミとルイが手を取り合って中央に出ている。ルイの腕がハスミの腰に周り、不安そうな彼女にルイが「大丈夫ですよ」と微笑みかけた。
スポットライトに照らされた二人は、お似合いだ。
攻略対象の傍に立つべくデザインされた主人公は、エレノアの目には眩しい。
主人公はルイを気に入ったようだ。
エレノアも穏やかではいられない。
そんな彼女に気づいたのは騎士のアーロイスで、彼は窓の外の彼女を怪訝に見上げていた。
騎士に見つかったからといって何の問題もなく、エレノアはぷいっと顔を背けて飛び去った。
パーティーから二日経ち、明日の朝に出国しようと支度をする勇者一行の宿に、ルイがやってきた。黒いローブを着ていた。
エレノア以外はパーティーで初対面の挨拶を済ませていたので、軽く「おう」やら「先日ぶりだね」やらと軽く一声かけている。
ルイがテーブルの上にいたエレノアを見て驚く――もちろん演技だ――と、彼女は彼の方に飛んだ。
「魔術師さま。話は聞いてるよ」
「……君は妖精ですか。勇者を召喚した時にいましたね」
自然に出されたルイの手に、彼女が降り立った。
「うん。エレノアだよ。聖都カルギナ以来ってことになるのかな。これでも勇者さまのお助け役ってことになってるから、よろしくね」
再会は、素っ気ない演技をもって。これはお互いにわかっていたことだ。
しかし初対面を装ったやりとりでも、浮かぶ喜色は隠せなかった。
「ええ。明日から正式にお世話になります」
そして彼も然り。久々に感じる手のひらサイズの重みは、月光色の瞳をとろりと和らげさせたのだ。
*
陽が真上になる時間帯、国境の門でルイと合流する。
そして彼が思い出したように「ああ、そうだ」と、さも今思い出しましたという風に切り出した。
「まだ未熟ですが、魔術師の端くれです。様々な草や木の実など、渡しても良い素材があれば僕に譲ってください。夜にでも魔法薬の精製を行いますので、簡単なものなら朝にお渡しできますよ」
序盤で開放されるゲームシステムの一つ、『ルイの魔法薬』である。街中の雑貨屋などでも魔法薬は手に入るけれど、ルイは無料で作ってくれる。旅で手に入る『そのままでは食べられない』素材の多くは、ルイに渡す用途でしか生かされない。
よくある便利システムだ。
以上の情報を、エレノアはあらかじめルイに教えていた。「これで問題ないですか?」と聞きたそうなルイと目が合って、エレノアはぐっ! と親指を上げて答えた。
出国し、草原を移動する。時には魔物が襲ってきて、時にはテントを張り、野宿と移動を繰り返す日々。
ルイが戦闘に参加するようになると、少女たちは魔術の威力に慄いた。エレノアはスピード重視の万能型で、騎士も治癒師も少女も簡単な魔法を使えるけれど、専門者の魔法はなんといっても強力だ。
エレノアは常に少女の肩か頭に乗っていた。
ルイのステータスについては嘘偽りを報告した。
その小さな街は森に囲まれていた。名前はエレノアの記憶にないけれど、「ああ確かにあったなあ」という程度の街だ。
イベントも存在感もない、旅の休息地点。
街に向かう道端に目を遣ったハスミは、ふと足を止めた。
「これ……」
肩に妖精を乗せながら、ハスミは道端の草に手を伸ばした。
生い茂る草の中でも一際明るい緑色をした、並行脈の細い葉だ。群生はしておらず、単独でぴょこりと生えているものだから余計に目に付いたらしい。それを摘み取り、妖精の目の高さに持っていった。
「エレノア、お願い」
「うん。……素材アイテムだね。
『クロニア草D
良いものはとっても希少。すっごく苦いけど食べられなくはない。解毒薬の原料だよ。
効果:毒状態を20%の確率で治す。
売値:10クラン』……ってところかな」
「ありがとう。じゃあルイさん、これお渡ししておきますね。……ってことで、良いんですか?」
「ええ。幸いエレノアは魔法薬に使える素材を見分けられるようですし、そうして分けたものを渡してくだされば」
ルイは「ありがとうございます」とクロニア草を受け取った。
そのやりとりを見て、エレノアはようやくゲーム内における『序盤』を抜け出したことを悟った。ここで主人公はいくらか自立し、あとはストーリーに流されていくだけ……の予定である。あと二つ先の街で、もうひと仕事しなければいけないのだが。
やっと人里に泊まれた今日。
宿屋は一人用の部屋しかなかった。値は張るが五人分の部屋を取り、いつものように今後の方向を定める会議を開いて、すぐに夜になった。
エレノアはハスミに「ちょっとお手伝い行って来るよ」と窓から飛び出した。
廊下で一般人と鉢合わせれば逃げ場がないので、死角が多い外から目的地に回り込む。植木の影など安全地帯を確認しながら、一つの窓を叩いた。ハスミの部屋から三つ先の部屋だ。
手のひらサイズでは、ノックの音は小さいかもしれない。エレノアは思いきって掌で窓を叩いた。
たんたん!
ノックとは遠い音がした。
少し待てば、閉じていた濃いベージュのカーテンがすっと開く。その向こうにいた人物は、エレノアを見て目を細める。
「こんな夜更けに、どうしました?」
ルイである。黒いローブを纏ったままでいた。
「お手伝いさせて」
「お手伝いですか?」
「うん。これでも魔法とか魔法薬には興味があるんだ。見学だけでも、だめかな?」
実際は、興味があるどころではない。城で何度も彼と調剤の練習をしている。
わざと水臭い物言いをしたのは、魔術師と妖精は未だ慣れない仲だという設定に基づいたエレノアのお遊びだった。
ルイは表情を柔らかくして、身を窓から少しずらして彼女を迎えた。
「……どうぞ」
エレノアは彼の後について飛んでいく。
ベッドの上には、小さな麻布と皮紐で包まれた簡素な包みがころころと、十個ほど転がっていた。床の上には器具が並べられている。フラスコや燃える水を入れる陶器、薄く小さな鼎、乳鉢と乳棒など、どれもエレノアが見知ったものだった。
「さて、何を作るの?」
「手始めにポーションからいきましょう。材料は覚えていますね? そこに転がっているのが手持ちの素材ですので、嗅ぎ分けてもらえますか」
「うん。机の上に持ってっていい?」
宿屋の小さな机の上には、小皿が五つと秤、そして錘がある。調剤に使える台に器具が乗り切らなければ、繊細な計量を優先して台の上で行うのがルイだ。
「ええ、お願いします。……そのサイズではやりにくくないですか?」
「大きくなっていいの?」
「もう夜なので、わざわざ来る人もいないでしょう」
「そっか、わかった」
エレノアは人間大になると、羽を器用に背に沿わせた。白いワンピースの裾を膝丈で結んでしまって、白い脚が晒される。ルイが何か言いたげにしたけれど、床に器具があることを思い出して口を噤んだ。
エレノアはベッドの傍に膝をついて、十個の包みを手に取り、紐を解きもせずに香りを確かめていく。鼻に近づけた途端「うげ」と声を漏らしたものと、他二つの包みを選んで机に持っていった。
ルイは机の上で包を解いて、中にあった木の実を四粒ほど選んで、「お願いします」とエレノアの手に落とした。
彼は他の二つの素材の下準備に入るらしい。鼎に水を注いで、燃える水を用いて熱し始める。
秤を用意していても、実はあまり使わないルイだ。素材の計量は慣れたもので、手先で数ミリグラム単位を量れるのだった。匠の技は凄まじい。
エレノアは床に座り、乳鉢に四つの実を落とす。慣れた手つきでこりこりと擦り始めた。
無言で作業に没頭していた。
「こっちはできたよ。確認よろしく」
「おや、早いですね」
茹でた草を小皿に移したルイは、エレノアの手から乳鉢を受け取った。
あらかじめ念入りに手を洗っていたらしく、そのまま人差し指と親指とで、粉末状になった木の実を摘んだ。
指先で感触を確かめて吟味する。手をかけたのが愛しいエレノアでも、薬に妥協はしない。
潰しすぎず、荒すぎず。油分が不自然に滲んでいないか、香りが飛んでいないか。それらを確かめて、「はい、完璧です」と呟いた。これは魔術師としてのルイからの、数少ない褒め言葉だ。
「では、あとは抽出するだけですね。それは僕がやりますので、解毒薬の計量と準備をお願いします」
「わかった。ベースは?」
「クロニア草を二十グラムです。先ほど頂いたものですが、臭みが強いようなので氷漬けミント・レモンを砕いて……と、それはここにはありませんでしたね、失礼しました。純水のみで構いません」
「ミント・ミルクを入れちゃだめ?」
「それは斬新な組み合わせですね。理由は?」
「クロニア草ってすっごく苦いし、ランクDはもっと苦い臭いがするみたい。ルイの庭園のやつのは全部A以上だしなんとかいけたけど、これは怖いよ。薬も苦くなっちゃうよ。私だったら、ちょっとくらい甘くしたいなって」
「君らしい回答ですが、残念ですね。ミント・ミルクは甘くまろやかになりますが、毒性があるので解毒薬には向きません。そもそも、ここにはミント・ミルクも無いでしょう?」
「……うう」
駄目だしをくらって、エレノアは落ち込む。たしかに、ここにはゲームの序盤で入手できる素材しかない。ミント系は少なくとも中盤以降でしか手に入らない。
羽がへにゃんと萎びたように見えるのは、彼女の感情の影響によるものか。
ルイは手持ちの素材や道具を考えて、ちょうど良いものが二つあったことを思い出した。
落ち込んだ彼女の背に、彼の声がかけられる。
「仕方がないので、ここは君の好きなものを入れてしまいましょうか」
「なに?」
「蜂蜜と林檎です」
その提案を聞いて、エレノアの羽に張りが戻った。現金な妖精だ。
「いいの? 入れて大丈夫なの?」と嬉しそうに聞いてくる妖精に微笑んで、ルイは「手が止まっていますよ」と注意した。
「ポーションの……ランクBですね」
「ランクBなの?」
「使う薬草の質にも左右されますからね。Bなら、今のところは最高ランクでしょう」
「そっか……」
城での薬品は、やはり全てA以上だったのだけど。
ルイの腕前が一流でも、素材が悪ければそれなりのものしか出来上がらないのだ。前世ではDやCが普通であったことを思い出せば、これは上等なのかもしれない。
続いて出来上がった解毒薬は、ランクCだった。
ポーションのランクBが三つと、解毒薬が二つ。
手持ちの素材ではこれ以上は作れないと判断した。
「これで、今日のお勤めは終わりですね」と一息吐いたルイは、エレノアに「お疲れ様です」などと律儀に声をかけた。
エレノアは浮かない顔をして、ルイをじっと見ていた。
「あのさ、ちょっと確認なんだけど」
「はい」
「あの子とルートには入らないよね? 絶対、入らないよね?」
「何を今更。信じられないならステータスを開けばいいでしょう」
「……ん」
ルイの肩に触れて、ステータスを開く。好感度を見ると、『--』のままだった。
「ルイが勇者に気に入られた方が、都合いいんだよね? それでルイのルートには入らずに、誰のルートにも入らないように、ずるずる最後までいって……ノーマルエンドの方が、安全なんだよね」
「そういうお話でしょう」
誰のルートにもいかない『ノーマルエンド』は、魔王以外の者は助からない実質バッドエンドだ。
魔王との最終決戦では、魔王のHPを一定量削ると、生死を分けるシーンが必ずやってくる。
生き残るためには、相手キャラクターの『想い』、つまり主人公への『愛』がなければいけない。
「俺はまだ……死ねない……ハスミのために……っ」だの「約束したから!」だのとキャラによってセリフは違うけれど、主人公とヒーローの絆による奇跡の覚醒を経て、ようやく魔王を倒せるのだ。
誰のルートにも入っていないなら、そういった起死回生のチャンスがない。
誰も覚醒せず、そのまま殺されるのが相手不在のノーマルエンドだ。
ルイもエレノアも、それを狙っている。
主人公が主人公補正を発動させたら面倒だ。
そもそも勇者を呼んだのは「勇者が魔王城に来ては自滅していく」現状を、エレノアが厭ったからだ。そしてルイも飽きたからだ。
この世界における主人公を、決められたルートで堂々と潰し、日常に変化が起きることを期待した。
エレノアは不安を隠して笑う。
ルイから手を離して、そっと距離を取った。
「じゃあ帰るね、お疲れ様」
その言葉を、ルイは不思議そうに聞いた。エレノアはおかしなことを言ったつもりはないのだけれど、ルイは予想外ですという顔でいる。
「帰るんですか? せっかく個人部屋なのに」
彼は黒のローブを脱ぐと、椅子の背に掛けた。
エレノアは彼が言わんとしていることを悟る。
「ちょっと会いに来ただけだから……」
「遠慮しないでください」
ローブを取るのは、魔術師ルイ・スティラスの面を外すということである。即ち、これからは仕事ではなく、私的に接しますよという無言の宣告だ。
シャツの襟を寛げる指が、妙に色っぽい。
そして微笑みながらじりじりと迫って、エレノアを扉の方に追いやっていった。人間大になれることを秘密にしている妖精が廊下に出られないことを、もちろん理解しての所業である。
――あ、だめだ私これ確実に終わった。
両側に手をついて追い詰められると、「これが噂の壁ドンか」などと余裕ぶって現実逃避に励む。けれどそれも無駄な努力だ。
背から垂らした羽に、触れるか触れないかの絶妙な加減でなぞられる。
「ぁ……っ」
羽の背や、付け根に触られるのが弱かった。
声を漏らした口を、片手の甲で塞ぐ。
「君の羽は相変わらず敏感ですね。羽に限らず、ですけれど」
「恥ずかしいこと、言わない、の、……っひゃ、あ」
「恥ずかしい顔を見たいのですが?」
「う、悪趣味だ……!」
これはまずい。本気でまずい。このままでは別の意味で食われてしまう、と感じたエレノアは、必死になって身を捩った。
「長かったです。これほど離れているなんて……」なんて切ない声を出されたところで、その瞳に宿るのは狩人のような妖しい光だけ。
羽に触れていた手は腰へ下る。加えて「いいですか?」と誘われたら、返事は「はい」か「どうぞ」か「ご自由に」のどれかだ。
ここがおそらく十八禁の世界観であることを考えれば、諦めもつく。
「……あまり、痕、付けたら……だめだよ?」
エレノアが応じて、ルイの服を握った。
「……前にも、同じことを聞いた気がします」
「そう、かな」
「はい」
エレノアが扉に押し付けられたまま、夫婦の時間がしめやかに開始された。
唇を合わせながらルイの片手が羽を弄り、彼女の体を服の上から確かめていく。
「んっ、ん、……ふ、ぁ」
ルイは、エレノアの縋る手が好きだ。相手の胸や袖を掴んで羞恥に耐えている必死な顔が好きだ。けれど、その手首を壁やシーツに押さえつけるのもお気に入りである。身動きがとれず不安そうにしながら、快感に屈服していく様がなんともいえない。
唇を開放して、扉に寄りかかる彼女の服に手をかける。
「エリー……」
ルイは妻の名を囁いた。俯いた彼女の腰を引き寄せ、白い肩紐をずらしながら首筋に口付けを落とし――、
と、その時。
『すみません、もう寝ちゃってますか?』
声がした。
エレノアの背にある扉の外から。
『ルイさん? あれ、おかしいわね……、寝てるのかしら……でもエレノアは帰ってきてないし……』
続いて呑気なノックが聞こえた。
室内は痛いほどの静寂。
エレノアは緩んだ腕から退避した。扉から身を離し、妖精サイズになって、ベッドの中に潜ってしまう。
柔らかいものを閉じ込めていた両腕の行き場がなくなって、ルイは乾いた笑いを零した。
「城だと邪魔が入らないのに」
本当にこの勇者、どうしてやろうか。




