退く気はないか?
壁に手を着いていなければ、立ってもいられないエレノア。
そんな彼女に、刃という直接的な殺意を向けるクレア。
二人のレベル差は二十ほどだ。言うまでもないが、気迫や実力においてもクレアの圧勝となる。
「お前には悪いと思っている。ルイの妹を死なせ、お前にも傷を負わせたことは、今でも悔いている。だがそれとこれとは別問題だ。人に仇なす者を放置してはおけない」
大人しく投降しろ。
クレアはそれを訴えに来たのだろう。
触れたら切れそうな視線でエレノアを射抜いていても、クレアは優しい。それでいて正義の心がある。
対してエレノアは『正しく』はない。言い返せる言葉はなく、曖昧な意思で首を振り、拒否を示す。
「私がそっちに行くのは、ルイがそっちに行った時だよ」
「……討たれることがあっても、か?」
「死にたくはないけど、ルイを裏切るよりマシな気がするんだ」
クレアは「なるほど」とぽつり呟いた。消え入りそうなそれは、エレノアには届かない。
レベル差に怯え、けれど逃げるという簡単な選択肢を選ばない妖精。その首元には、ルイに選ばれた証が光っている。
「ルイがお前を選ぶわけだな。甘く弱く、私よりも御しやすい」
「私はもしかして馬鹿にされてるのかな?」
「そう思うなら、そうなのだろうな。ただ私は、そんなお前が心底羨ましい」
クレアは刃を下ろした。同時に、エレノアの背後に立つ人物を睨む。
そうしてエレノアは初めて気がついた。壁に体重をかけたまま振り返ると、いつからそこにいたのか、ルイが微笑んでいた。
彼は唇の動きだけでルイを呼ぶエレノアに、「何もされませんでしたか?」
「だ、大丈夫だよ」
「でもずっと僕を呼んでいたでしょう? 怖い思いをさせましたね」
たしかに彼を呼んだ。けれど声を出してなどいない。知らないうちに発動していたテレパシーの類だろうか。
エレノアは『契約』については無知も同然だが、肉体と魔法陣で主従の関係が成った今、以心伝心も不思議ではない。そういうものかもしれない。
「起きたらいなかったから、びっくりしただけだよ」
「すみません。急な侵入者で……」
そしてルイはエレノアから目を離し、親の敵を見るような目を向けてくるクレアへ挨拶する。
「お久しぶりです」
一言だ。
「……ああ」
「外とは違って魔物が多くは出ないとはいえ、ここまで来られたのはさすがですね」
「道中の悪趣味な罠はお前が作ったものか」
「すべて過去の城主によるものですよ。ただ『君たち』を引き離したのは僕の趣味です。人間、少数になるととても弱いものですよね」
エレノアはルイの片腕に収まりながら、二人の会話を聞いていた。そして思い出した。魔王城二階では、たしかパーティーが二つに分かれてしまうイベントがある。
魔王との決戦二歩手前で合流を果たすのだけれど、この無茶な仕様は彼のせいだったか。
クレアが一人ということは、仲間はあと一人か二人といったところだろう。
「ここまで来られたのなら合格ですね。君を仲間と合流させましょう」
ずるい! ゲームの時はそんなサービスしてくれなかった!
そう言いたげなエレノアは、心の準備もなしにやってきた転移魔法の感覚に「うぐっ」と呻いた。
ぐるん。
目がまわる。
腰にしっかり巻きついている腕が放されることはないけれど、それでも彼にしがみついた。
床に足を着く。ここは大きな広間だった。
壁際に等間隔に立てられた松明が、湿った石壁をぬるりと照らす。
テーブルや椅子を取り払った食堂のような長方形の室内は、石の床にきっちりと赤い絨毯が敷かれていた。けれど装飾らしいものといえばそれだけだ。
室内で目立つのは、奥の大きな扉。魔王の玉座へ続くものだ。
そしてそれよりエレノアの目を引いたのは、こちらを蔑み、睥睨し、心の底から嫌悪する、冷たい眼差しの男。ギルレムだった。
彼の隣に転移させられていたクレアは、ギルレムと寸瞬だけ視線を交わしてから無言で再び刃を抜く。切っ先はルイに。そしてエレノアに。
エレノア――魔王妃は、ルイにひしっとしがみつきながら虚勢を張った。クレアとギルレムを精一杯睨んだ。まるで子猫の無駄な威嚇だった。
そんな彼女を、ルイ――魔王はよしよしとあやして落ち着かせる。
二人を見るクレアの手にぎりぎりと過剰な力が込められたのは、隣にいるギルレムだけが知っていた。
エレノアは努めて気丈にギルレムを見た。
十年ぶりに見る彼は、変わっていた。
昔は少なくとも話は通じて、仲良くはなくても、平穏に話せる相手ではあったのに。今はその見る影もなく、黒い装束の魔王夫妻へ『憎い』という感情を真っ向から突き刺す。
――許せないのは、こちらの方なのに。
エレノアは思い出す。
王都でルミーナとエレノアが王城の敷地に逃げ込んだ先で、人間に追い立てられた日。
この男の背を見た。この男が、おそらく元凶なのだ。女性に「エレノアは妖精」だと話し、市民を唆した。
エレノアはそう邪推していた。第一回魔物襲撃事件における王の話や、三人組がどうして外にいたのかなど、その事情は知らない。だからエレノアの中で一番の『わるもの』がギルレムだった。
「ギルレムさん。あの日、王都で、市民に私の正体を教えたのは貴方ですか」
「ああ」
エレノアの魔力がざわりと騒いだ。
なんのことかと詰問するようなクレアの雰囲気を敢えて無視して、エレノアの質問は続く。
「私はあなたに何かしましたか」
「いいや、何も? ただ俺は、妖精が憎い。憎くて、憎くて、憎くて、たまらない。そして妖精に惚れた挙句、大量殺人犯に堕ちた貴様もな」
最後はルイに当てられた言葉だ。「元々、君は僕が嫌いでしょう」という返答がお気に召さなかったらしく、ギルレムは眉間に皺を刻んだ。
「そう、会った時から気に入らなかった」
「でしょうね。……君だけは、クレアに免じて生かしておいたのに」
ルイは困ったように笑う。
「ここまできてしまった以上、魔王の流儀に則っていかなければいけませんね。最初は部下に侵入者の相手をお願いするのがセオリーでしょう。けれどその前に、ここへ来た勇者さん達に毎回、尋ねていることがあるんです。――退く気はないか?」
クレアとギルレムにとって、それは挑発だった。
敵を目前にして「逃げるつもりはないか」と問われて、頷く勇者がいただろうか。二人は勇者でなく騎士崩れの剣士だけれど、同じことだ。常人よりも硬い意思は、勇者にも通ずるものがある。
ルイにとって、問いは救済のつもりだった。
勇者自体に恨みはないから、退避を勧める。帰ってくれたことはないけれど。何故か「帰るものか!」と逆上して殺されに来る勇者達の気持ちが、ルイにはわからなかった。
そして例に違わず二人の殺気を感じ取ったルイは、軽く息を吐く。エレノアが気遣わしげに服を掴んできたので、その上に己の手を置いた。
「これ以上、議論の余地はない。……ビスマルクローゼ・ニルギリ・チェンバート」
「にゃんっ」
玉座の間への扉が細く開いた。そこからひょこりと顔を出したのは、ルイの部下であり腹心であり元魔王の魔物だ。
ほてほてと中央に歩み出て、ぴしっと片腕を挙げて、
「にゃんっ!」
子供――ビスの挨拶だった。
三人が無言になり、一人が「ふ……っ」と笑いを抑えた。
周囲の反応に、ビスが尻尾を左右に揺らして不満を表す。
「あんたがおれを呼んだくせに」
「悪い、とは、思う」
「言いながら笑うにゃ!」
ふしゃー!
ルイに威嚇するビスと、未だ困惑したままのクレアと、様子を見守るギルレム。
彼らをその場に残して、ルイはエレノアを連れて行く。
先ほどビスが出てきた扉、――玉座の間へと歩いた。
そんな彼へ、クレアが声をかける。
「ルイ」
「……今更、何か用か?」
魔王の態度を崩さないままで、ルイは律儀に反応する。
クレアは一度、酸素を深く吸い込んだ。目を閉じて、開いた。
「私はお前が好きだ。結婚を前提として、共にいて欲しかった」
現在進行形と過去形を交え、想いの全てをかけた。
エレノアはクレアを見る。ルイを見つめる強い女性の姿は、美しかった。綺麗だと思った。同性の自分でさえ目を惹かれてしまうほどに。
「ありがとうございます。けれど僕には愛する妻がいますので、応えることはできません」
告白をばっさり切り捨てた夫の横顔をぼんやりと見上げていたエレノアは、扉が重々しく閉じられていく音に我に返った。玉座に腰を下ろした彼の膝に乗せられる。これは恥ずかしい。左右に立つ竜族の護衛の目もある。
「いいの? クレアさん、仲良しでしょう?」
「君以外を捨てる覚悟はできていた」
返答もそこそこに、彼は閉じられた扉を見る。
物音の一切も聞こえなかった。
「いつも、こうして待ってるの?」
「ここまで辿り着く者はあまり居ないがな。時々ビスが飽きた人間を寄越してくることがあるが、いずれにしろ数十分は待つことになる」
「……そっか」
玉座の間には数回しか入ったことのないエレノアは、『魔王の仕事』を見るのは初めてだった。
彼女の戸惑いを感じ取ったルイは「部屋に戻るか?」と気遣いを見せた。
今、あの扉の向こう側で行われているのは、『殺してもいい』喧嘩だ。殺さなければならない戦いではないが、この城に来て生きて返った人間はいない。
クレアは死ぬつもりでいるから、最後にルイへ思いの丈をぶちまけたのだろう。
そしてエレノアには、誰かの死を見る覚悟がない。
ルイは彼女を部屋へ送る気でいたが、彼女は首を振ってそれを拒否する。
「戻らない」
「……君には辛いところを見せる」
「うん。でも、いい。私が育てた子がやってることから目を背けるのは、できればしたくない。あと、夫婦なのに関係ないって言われてるみたいで、ちょっとやだ」
「しかし」
「いいの」
それくらいはしなければ、クレアに心意気で負けているような気がした。
けれどまだ食い下がりそうな夫が何を言う前に、エレノアは先手を打ってしまう。
「ちょっと試したいことがあるんだけど、いい?」
「ああ」
エレノアが両手を持ち上げる。そこに何かを乗せているような形にしているから、ルイはなんだろうかと彼女の様子を見守った。
やがて、彼女の手にうっすらと透明の球が現れる。質量すら感じさせるそれは、透明な水晶玉だった。
エレノアは「……できた」と、自分でも驚いていた。
続いて、その水晶玉に映像が映し出される。扉の向こうの様子だ。ゆらゆらと歪んだり途切れたりと安定はしていないけれど、彼女が力を込めたり睨んだり表面を撫でたりと試行錯誤しているうちに安定してくる。
妖精の能力かと、ルイは察した。
「お助け妖精だからね。鑑定ができるなら、これもできると思ったんだ。自分のテリトリーくらいしか働かないみたいだけど」
「……すごいな」
「ルイだって魔術でやれないことはないよ」
「しかし透視と映像化は、私も魔法陣を作らなければできない。向こうの部屋にもカメラ代わりの監視兼映像転送魔法陣を置かなければ。……君のそれを一つの能力としているなら、やはり君の探知や鑑定はお助け妖精ならではということなのだろうな。流石だ」
「へへ」
エレノアは照れ照れと頬を緩め、水晶玉を撫でた。
「腰は辛くないか? 昨夜は随分と無理をさせたな」
「だ、大丈夫だよ! 思い出させないで!」
桃色の雰囲気が満ちる玉座の間とは違い、扉を一枚隔てた部屋は、まさに死地だ。
エレノアが手にある水晶を見つめる。
映像に、血が舞った。
誰の血かはわからない。
三人共が大なり小なり流血している。
ギルレムは、突きに特化した細い剣をビスの胸に打ち込もうと突進していく。ビスは大きく飛び、天井に足を着いた。そのまま足に込めた跳躍力と重力とで、真下にいるギルレムに突っ込んだ。
ぎちぎちと、爪が鳴る。
先が針のように尖ったそれがギルレムの頭蓋に刺さる前に、横からクレアの大剣が振るわれた。
ビスは「にゃんっ」と笑い、何かをクレアの剣に投げつける。
何かは、艶消し処理が施された短い刃だった。松明の灯りだけでは影にぬらりと溶けてしまいそうな数本の暗器は、クレアの剣を僅かに止める。そして彼女の額も的としていたけれど、舌打ちの後に避けられた。
ギルレムを殺し損ねた。しかし地に安全に降り立ったビスは満足そうに笑う。無邪気な微笑みだった。近所のお兄さんとお姉さんが遊んでくれている、小さな男の子の顔をしていた。
ただしその瞳孔は開きっぱなしである。
ビスは猫の魔族であり、暗器使いだ。
身軽な体型を活かし、妖精よりもよく夜闇を見通せる目を用いて、敵を狩る。壁や天井までもを足場にし、縦横無尽に飛び跳ねていけるビスにとって、ここは何より戦いやすい場所だ。
松明のみの照明と、四角い部屋。
ビスが落ち着く場所ランキングの第一位はエレノアの膝で、第二位はルイの隣。第三位が自分の部屋で、第四位がこの部屋だった。
エレノアが見守る水晶は、細かな会話も拾えるようだった。
『貴様等はどうして人間を殺す?』
クレアが問う。
『魔物の本能だから。あと、逃げるものは狩りたくなるのが猫の習性かにゃあん?』
ビスが答えた。同時に駆け出して、クレアの背後に立つ。
『命をなんだと……っ』
首に向けられた爪を大剣で弾き返し、クレアが非難する。
その言葉が、ビスの飄々とした態度を崩す――こともなく。ビスはきょとん? と可愛らしく首を傾げた。
『そう言われてもねえ。おれ達は殺したいって本能を飼い慣らせるだけマシじゃない? 我慢できないのはただの獣だし、勝手に殺してくれって思うけど。……聞くけどさぁ、なんで人間はおれ達を殺そうとするの?』
『お前たちが我々に害を為すからだ』
『おれの両親は人間に殺されたよ。何にもしてないのに毒矢を射掛けられたんだよねぇ。血どころか内蔵まで吐き出してたよぉ? あのどす黒い桃色、今でも絵に描けるかなぁ』
ビスの背に、松明の火が投げられる。
それをビスが避けることを予想していて、火の影からギルレムが飛び出した。
その細い鋒は届くこともなく。
『にゃんっ』
――ひょい。
ギルレムの目前に、子供の足が見える。
ビスは、彼の刃に立っていた。
『なッ……!』
にい、と口の端を歪めて。
ビスは、爪を振りかぶった。
『っ……ぐ、』
ギルレムの頬に、三本の傷が走る。肉が深々と抉られたそこからぷつりぷつりと赤い玉が滲み出た後、瞬く間に赤が溢れていく。
『ギル!』クレアが叫んだ。
『それにこっちの昔話じゃ、魔物は元々、人間に虐められた人間や動物や妖精が凶暴化して進化したんだって。だから魔物が人間を殺すのは、そうしなきゃ生きていけないって本能が残ってるから。ってことになってるにゃん?』
ビスは何事もなかったように、先ほどの話を続けた。そんな子供の様子があまりに不気味で、クレアは冷たい汗を流す。
『そんな話も、どこまでが真実かは怪しいな』
『そうだよ。だからさあ、どっちが先に手を出したとか、どっちが悪いとか、どうして殺すとか、そんなこと分かんないくらい長い間、ずっと恨み合って殺し合ってやってきたんだから、こういう状況って、言わば静かな戦争だよぉ? おれ達だって人間が怖いんだしぃ』
――お互い様なのに被害者面しちゃってさあ、人間のそういうとこ、大っ嫌い。
ビスは一段低い声で吐き捨てた。
『まあでも戦争って、結局どっちも正義は我に有りってところあるけどねぇ。……にゃんっ』
可愛らしい顔を歪めもせず笑いもせず、滔々と言葉にされていく子供の思いは、水晶越しのエレノアも知らないものだった。
けれど「この子もなんだ」と納得した。
そしてエレノアは、この場における自分の異質さを理解した。
クレアとギルのように強い意思があるわけでもない、ルイとビスのように人間を憎み、殺せるわけでもない。流されるままに生きてきたエレノアと彼らの間には、厳然たる壁が存在している。
『――エレノア!』
「っ……!」
自分を呼ぶ声がして、彼女は肩を大きく揺らした。
『無駄だにゃん。この部屋は完全防音だし、向こうには聞こえないよ』そんなビスの呆れた声にも答えずに、映像の中のクレアは、恋敵であり魔王妃であるエレノアに語りかける。
クレアは袈裟斬りを狙って剣を振った。爪で弾かれ、火花が散る。
そして彼女は死と隣り合わせの戦いの最中、世界で有数の安全地帯に座するエレノアに、届く保証のない声を精一杯張り上げた。
『お前は悪くない! お前は誰も傷つけていない! 妖精のお前は、私たち人間に振り回されていただけなのだろうな!』
肩を傷つけられて、クレアの血が壁にびしゃりとかかる。
『ただ、ルイの行いが誰のためか、自覚しろッ!』
血走った眼で叫び、エレノアよりも低い背丈の彼女は血反吐を吐く。その身体は、何度か壁に叩きつけられていた。
『斬られる感覚』というものを、漫画越し液晶越しに想像するしかなかったエレノアの前世。娯楽で見てきた物語で、脇腹を抉られても仲間のために立ち上がるキャラクターを多く見知っていた。
その展開がいかに非常識かは、現世で人間に甚振られたエレノア自身が、よく知っている。
物語のキャラクターは、傷を付けられても痛まないわけではない。無様に膝を着こうとしないだけだ。痛みはある。今にも気絶してしまいたいほどの、途方もない苦痛が。神経が麻痺してしまわない限り。心臓が脈打つたび、ずきずきと。重く。冷たく。熱く。存在する。
だからあの場であんなにも深い傷をつけられながら、強い声をあげられるクレアを怖いと思った。
――ルイの行いが、誰のためか?
エレノアの尻の下には、彼の感触がある。
安全な場所。
世界で一番信じている彼の、腕の中。
けれどもどうして、胸がこんなにもざわつくのだろう?
「……誰の、ため……?」
「耳を傾けるな」
エレノアがか細く口にした言葉を、ルイは厭ったらしい。
「私は私のためにこの場所にいる。君が考える必要はない」
呆然と顔を上げるエレノアを珍しく厳しい声色で咎めて、彼はエレノアの目に手を当てた。水晶の映像を彼女から隠してしまう。
そして、誰かが殺される音がした。
ぼたぼたと重い雨が床を濡らす音がした。
エレノアは震える声で、「……うん」と一言答えるだけだった。




