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ギルド長は元・最強の冒険者~ポンコツ冒険者たちにブチギレたので、自分達で依頼をこなすようです~  作者: 藍墨兄@リアクト
第二章 かんちゃん昇級審査編

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042 敵の正体はレアなジョブ

「さすがナン姐さんってとこだな」

「完成前ならねぇ。魔力の流れを乱してあげれば、どーってことないのよねぇ」

「発動しかけの魔法を断ち切るだけの魔力があるなら、だろ」


 瞬間移動魔法発動時に放出される魔力は膨大。それを複数同時に行うとなると、発生する魔力はナンのとっておき、炎獄(ゲヘナ)をも上回る。

 ナンは、その膨大な魔力の収束するこの場所に、1秒あたり3〜5種類の属性魔法を放出し、収束する魔力を分散させたのだった。


 効果範囲は術者を中心とした全方位約30メートル。

 つまり、ヴェゴーもバッシュも、魔力を実質、完全に失っている状態になっていた。


「……まだやるかい」

「当然だ」

「いいねぇ」


 バッシュは腰の短剣(ダガー)を抜き、右手に構える。一方のヴェゴーはナイフを左手に、逆手に持っている。


細剣(レイピア)あたりで来るかと思ったがな」

「元々こっちが本職だ」

「……軽戦士か」

「ちがうな」


 言うが早いか、バッシュは一瞬身を沈めると、その姿を消した。

 その様子に驚いたのはザマンである。


「きっ、消えた!? 魔法を使えない状況で!? ……これ、もしかして」

「どうしたんですか?」

「……」


 かんちゃんの問いにザマンはすぐには応えない。

 一方、ヴェゴーは身を固め、目をつぶって耳をすませていた。


――風切り音はある。魔法で消えてるわけじゃねえ。

 つまり。


「体術。暗殺者(アサシン)か? ……いや」


 ヴェゴーの耳に届く風切り音が増えた。

 直感的に危険を察知したヴェゴーは、その場で身を低く伏せる。その頭上を何かが通り過ぎた。


「やっぱり、今の……!」

「ザマンさん?」

「かんちゃん下がって〜。マリンさんと一緒に、出来るだけ遠くにぃ〜」

「え?」

「いいから。……出来れば、ナンさんも」

「……そうね」


 ナンは魔法と発動させたまま、ゆっくりと下がる。


「一体なんなんです? 何か投げましたよね?」

「あれは手裏剣だね~」


 わけが分からず、かんちゃんは誰にともなく尋ねた。

 それに応えたのは、彼らをガードしていたグレイだった。


「あれはねぇ~、幻のジョブと言われた、今はなろうとする者もいない……」

「……忍者、よね」

「ナン姐さん正解~。狩人と暗殺者、両方を完全にマスターして、更に風属性、雷属性のレベルが5以上あって、初めて修業が許される。そういう相手です、あのバッシュさんはね~」

「しかも今、わっちの魔法効果で、あの二人は魔力が使えない。純粋な体術であの動きよ。……以前ザマンくんにオススメした、あれが本物ね」


 ヴェゴーとバッシュの戦いは接近戦に移っていた。

 バッシュの動きは速い。その上、まるで両手両足にそれぞれ別の意識が宿っているかのように、予測不能かつキレのいい打撃が、絶え間なくヴェゴーに降り掛かってくる。

 対してヴェゴーは足を止め、交差した腕で頭から胸を守りつつ、反撃(カウンター)の機会を狙っていた。


――くそ、動きが読めん。

 魔力が無効化されている今、強引に突っ込んだら命取りになる。かといってバッシュの常軌を逸した動きにはとてもじゃないが対応しきれない。頑丈で経験の豊富なヴェゴーでなければ、とっくに斬り刻まれ、殴り飛ばされ、命すら吹き飛ばされている。それほどの苛烈な攻撃だった。


「強い……」

「そうねえ、単純な強さなら、旦那に匹敵するわねぇ」

「そんな人が、なんで今まで知られてなかったんですか!?」

「忍者だからですよぉ〜。元々表に立つジョブでもないし、ましてや今の時代、存在自体が超レアですからねぇ〜」

「そうね。本来なら、死ぬまで人前に出ることはなかったんでしょうけど」


 ナンはやれやれ、といった風に苦笑してみせた。


「相手が旦那だからねぇ。なりふりかまっていられなくなったってところかしら」

「それもあるでしょうけどねぇ〜」

「他にもなんかあるんですか?」

「いやぁ〜」


 グレイは相変わらずのほほんと、のんびりした笑顔を見せている。が、その眼は全く笑っている様子がなかった。


「結局、ただの戦闘狂ってことなんですよぉ〜。彼もギルド長も、私もねぇ〜」

「……なるほど。つまり、グレイ卿は羨ましいのね?」

「むしろ妬ましいですねぇ〜」

「……どっちが?」


 グレイは尋ねたナンを振り返った。


「そんなの、どっちもに決まってますよぉ〜」

「……でも」


 それまで黙っていたかんちゃんが、誰ともなしに呟く。


「ヴェゴーさん、防戦一方ですよ……」

「かんちゃん、大丈夫よ」


 ナンがかんちゃんに優しい笑顔で応えた。


「旦那はね、待ってるの」

「何をですか?」

「勝機を。それに、成長をね」

「え……?」

「かんちゃんも考えてみて。今ここはあの二人の戦場で、グレイ卿すら手出しができない。そしてわっちの魔力拡散魔法で、魔力そのものが不安定。……さあ、かんちゃんならどうするかしら?」

「私、なら……」


 ナンがそこまで話した時、ヴェゴー達の状況が変わった。


「何っ!」

「……忍法、火遁」


 ヴェゴーと距離を取ったバッシュの周りに、数十の火の玉が浮いていた。

大変ご無沙汰しております。

リアル事情などなどにより、指が進みませんでした……。

今回と次回の2話分はなんとか出来ましたので、公開いたします。


なんとか完走させますので、今後ともよろしくお願いいたします!

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