表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルド長は元・最強の冒険者~ポンコツ冒険者たちにブチギレたので、自分達で依頼をこなすようです~  作者: 藍墨兄@リアクト
第一章 死霊王討伐編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/46

019 シーダの本気、かんちゃんの思い

 遊び人に連絡を入れた後、ヴェゴーは遊び人に直行した。移動しながらオルカにも連絡を入れ、魔導車を遊び人に持ってくるように頼むと、セーターにデニム、その上にモッズコートを引っ掛けたオルカが、自らの手で車を運んできた。


「僕が運転しますよ。準備もあるでしょう」

「すまん」

「構いません。……その代り、ザマンをお願いします」


 そんなやりとりの後、ヴェゴー達はバクダマー山に向かって出発した。

 その道すがらである。


「旦那、ヤバいってどういうことなの?」


 ナンは車に乗るなり、ヴェゴーに聞いた。車には既にかんちゃんとシーダも乗り込んでいる。


「……今朝、これが送られてきた。メッセージはない」


 ヴェゴーは今朝、ザマンから送られてきた画像を見せた。

 そこには奥に緩やかなバクダマー山の稜線が見える。一番手前、下の方には魔導バイクのハンドルと、その向こう側には茶色い地面が見えていた。


「地面をよく見てみろ」

「地面、ですか。ただの土ですけど……!」

「気づいたか?」

「土からいっぱい手が出てるねー」

「仕組まれてたってことですか?」


 かんちゃんの問に、ヴェゴーはゆっくり頷いた。


「バクダマーの入山口はここだけだ。一般人も使うこの道沿いに、ここまで分かりやすいトラップを仕掛けるってことは……問題は恐らく、この後だな」

「どういうことですか?」

「トラップにぃ、死霊が使われてるっていうことはぁ……」

「こいつらを通して死霊王に情報が渡ってる……違う!」


 ナンはヴェゴーに向かって言った。


あらかじめ(・・・・・)わっち達が来ることを知ってたってこと!?」

「可能性は高いだろうな」

「でも、どうやって……あ」

「ヴーラ=カント博士。……でしょうねぇ」

「止めてくれっていう言葉は、嘘だったんですか……」

「……いや。多分あれも嘘じゃない。全力の死霊王を止めてみせろ。そういうことなんだろうよ。プライドっていやあ聞こえはいいが」

「めんどくさい男……」


 ナンは深いため息をついた。


「そのヴーラなんとかっていう人はボク知らないしそういうのどーでもいーけどー。着いたらどうすればいいのー?」

「そうだな。ひとまず、この画像の場所まで車で行く。そこからは足取りを追うしかないんだが……」


 ヴェゴーはちらり、とかんちゃんを見た。


「状況に応じて2チームに分ける。……かんちゃん、例の鎧持ってきてる?」

「はい」

「よし、じゃあかんちゃんと姐さん、俺とシーダ嬢で分かれる。かんちゃん達は常に2人で、俺達は状況次第でソロで動く」

「わっち達は後ろから行く感じでいいのかしら?」

「そうだな。かんちゃんを前衛にして進んでくれ。その鎧、迎撃魔法(イヂース)もかかってんだ」

「すごいもの持ってるわねかんちゃん……」


 そこまで決めると、ヴェゴーは運転するオルカの方に身を乗り出した。


「オルカ、すまねぇがそういう流れだ」

「了解です、到着地にトラップがあったら潰します」

「すまん。……よし、そろそろだ。準備してくれ」


――――


 結局、トラップは見当たらなかった。オルカと別れた一行は、バクダマー山を登り始めた。

 バクダマー山は、比較的緩やかな山である。加えて採れる岩石の質がよく、貴金属なども採れたため、一時期は採石場の人夫目当ての歓楽街があったほどであった。

 その採石場が枯れた今では、掘り残しの貴金属目当てでモグリの採掘者が訪れたり、夜遊びをする若者が“イケナイ遊び”をしにくる程度である。


「ザマンくんを捕まえたから、トラップの必要がなくなったってことかしら」

「だとしたら相当な自信家だな。……あとは、トラップ位置を変えたか」

「同じ場所にあっても意味がない、ということですか?」

「まぁ、そういうことだ。だとしたら、こっちに情報があるってのを向こうも知ってるってことになる。……どっちにしてもめんどくせえことになるな」


 その時、ヴェゴーの斜め後ろに強烈な殺気を感じた。


「……ねえ」


 それは、シーダから漏れ出ている殺気だった。


「この先にいるよ」

「何も見えませんけど……」

「獣人の目と耳は人間より数十倍鋭いんだよ」

「……壊していいよね。屑の穢れた手に弄ばれた、神が休ませし朽ちた肉体を」

「し、シーダちゃん?」

「そのまま行くのはちと危ねえな」

「ならここで用意してくね。……神聖魔法回路発動」


 シーダが呟くと、その頭の上に魔法陣が現れた。白く輝くその魔法陣は、ゆっくりと回転し始める。

 シーダが両肩を自分の腕で抱きかかえる。シーダはそのまま低い声で呪文を詠唱しはじめた。


「――我が内に秘めたる神聖なる獣、今こそその力を解き放ち、来るべき困難を打ち砕く牙となれ!」


 自分を抱えていた腕を大きく広げ、……を仰ぐ。魔法陣の回転が上がり、文様が光に解けたその瞬間。


変・身(ビースト)っ!!」


 シーダの咆哮に誘われたように、頭上の魔法陣が引き寄せられる。それはそのままシーダを包み、全身を真っ白な光で覆い尽くした。


――ごるるぁぁ。


 光の中から獣の声が低く響いた、次の瞬間であった。


「きゃあっ!」


 かんちゃんが叫ぶと同時に、光の中から美しくも凶暴な、銀色の獣――シーダが姿を現した。

 それと同時に、シーダは遥か先のグールに向かって疾走していた。


「ま、魔獣!?」

「いや」


 三人はシーダの後を追った。


「神獣だよ。九尾狐(きゅうびこ)ってんだ。獣化の魔法は術者の本性が現れる。九尾狐ってのは、神獣にも魔獣にもなる、九本の尾を持つ狐のことだ」

「きゅうびこ……」

「俺も最初見たときは驚いたけどな。……シーダ嬢はああなると、性格ががらっと変わる」

「男も女も虜にする……なるほどねぇ」


 ナンが感心したように呟いた。


「ああなったシーダ嬢はほぼ無敵だ。恐らくこの先にいるグールどもは壊滅だろうな。……その後が問題なんだけど」

「問題、ですか?」


 シーダの姿が見えた。その周りには恐らく十体近いであろう、グール・ゴーレムが取り囲んでいる。

 美しい獣となったシーダは、そのしなやかな全身のバネをフルに使い、縦横無尽に暴れまわった。

 爪の一撃はゴーレムの肉体を軽く引き裂き、その牙の一噛みはその四肢を簡単に食い千切る。


 そしてシーダは今、最後の一体となったグールと対峙していた。


「もうこんなに……」

「張り切ったなぁ……」

「ギルド長、問題って……」

「ああ。あの状態を維持するエネルギーがな」

「ふにゃあ……」


 ふいにシーダがへたりこんだ。それを見たグールがシーダに襲いかかるが、一足早くヴェゴーのパンチが顔面に炸裂する。


「ごぎょ」


 重力属性を帯びた文字通りの重い一撃で、グールの頭は丸ごと吹き飛んでいた。

 その足元で、シーダがぐったりと横たわっている。


「シーダさん、大丈夫ですか!?」

「きゅう……」

「どこか怪我でも……」

「いや。……ま、早い話が、燃費がすげぇ悪いんだよ」

「おなかすいたぁ……」

「……てことだ。……ほれ、おつかれさん」


 そう言いながらヴェゴーは懐から、ビスケット状の保存食を出し、シーダに持たせた。


「すまねえが、今はこれで我慢してくれ」

「ありがと……ごもんももごおごもお」

「食ってからしゃべれって、こっちにカス飛ばすんじゃねえよ」

「超短期決戦なのね……」

「まぁな。ペース考えれば今の三倍は保つんだが、こいつほら、シーダだから」

「……でも、すごい力ですね」

「瞬間的には、単純な腕力は俺以上だからなぁ」

「ピーキーねぇ」

「……しかし、それにしても気になるな」


 ヴェゴーは頭をひねった。同じことを考えているのだろう、ナンもまた思案気な顔つきで顎に手を当てている。


「自律行動するゴーレム、という感じではないみたいね。身体はともかく、さっきの動きは普通のゴーレムと変わらなかったわ」

「だよな。俺もそこが気になってんだが……」


 そこまで話したあたりで、シーダが手を合わせて立ち上がった。


「ふぅ、ごちそうさま。……さ、いこっ?」

「……ま、今考えてもしょうがねえか。ザマンも待ってるし、行こうぜ。この感じだと二手に分かれずに行けそうだ」

「はい。……それにしてもすごいな、シーダさん」

「かんちゃん」


 先へと急ぐ一行だったが、歩きながらかんちゃんの口からぽろりと言葉が漏れた。

 ナンはかんちゃんの頭に優しく手を置いた。


「ナンさん……」

「この先、かんちゃんの力が役に立つ時がきっとくる。……その時は、頼むわね」

「はい……でも、今の自分の力なんかじゃ」

「なんか、なんて言わないの。あなたの力は、他に真似できる者のないすごい力なんだから。ね」

「自信を持て、なんて言わねえよ。でも、この案件にはかんちゃんの力が必要になる。そう思ったから今日も付いてきてもらったんだ。まだ冒険者に成り立てなんだ、失敗したってだれも責めねえ。だから、その時が来たら、全力で俺たちを助けてくれ」

「……はいっ」

まだちょっと左目にもやがかかってますが、なんとか更新出来ました!

次回はベテラン勢が大活躍!?


これからも応援、よろしくお願いします!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ