彼女はいつもどこへいく?(陛下視点)
陛下視点は長くなってしまったので続きます。
この俺、ジーク・ジュナイザー・ユーベルトが初めて欲しくなったものこそ、侯爵令嬢アデルだった……
初めて出逢った時、彼女は自身の家の庭で迷って泣いていた。
だからこそ、今回もアデルがいなくなったという報告後、仕事に穴をあけてでもアデルが泣いていないか心配で、探さずにはいられなかった。
アデルが迷い込みそうなところに足を運んでも姿は見当たらず、もしかしたらと離宮に向かった。
数日前から離宮に住むことになったリリアナにも尋ねてみたが、だれも尋ねてきていないという。
まだアデルには側室となったリリアナについて話していないこともあり、ここにいる可能性は低いと考えた俺は、また王宮内を走り出した。
近隣諸国からは冷徹王などと呼ばれているこの俺が妻によって焦燥感にかられているとは誰も知るまい……
その後、メリアからなぜか離宮の庭の茂みでしゃがみこんでいたと報告を受け、ほっとすると同時に昔と変わらずアデルの行動がよくわからないことと、自身の汗だく姿に少しの徒労感を感じた。
やはりアデルが行動する際には、人をつけようと強く感じた一日であった。
「仕事に穴をあけたのですから、もちろん今から仕事をしてくださるのでしょう?もちろんですよね」
身なりを整え執務室に戻った俺を待ち構えていたのは、米神をひきつらせ顔に笑顔を張り付けた側近のルイが立っていた。
仕事に穴をあけたのは俺が悪い。
しかし、この俺からアデルとの夕食時間を奪うのは許さない。
彼女との時間こそが最優先事項だ!!
「……戻ればやる」
そのまま食事に向かおうとする俺にルイはため息をついているが、無視する。
それよりもアデルに会いたい。彼女の笑顔をみて癒されたい。
「本当にどうしようもない人ですね。陛下もアデル様も…」
「聞き捨てならんな」
ルイは俺の乳母の息子であり、気心知れているとはいえアデルへの不敬は断じて許さない!
「はいはい、そう睨まないでください。まぁアデル様に合わないと仕事の効率も下がってしまいますでしょうから、さっさといって戻ってきてください。あとアデル様に伝えることもありますしね」
そう、俺にはアデルにまだ伝えていないことがある。
離宮にいるリリアナのことだ。
訳あってリリアナを側室としているが、アデルの周囲には徹底して内密にしてある。
しかし、いつアデルの耳に入るか……
その前には話しておかなければなるまい。
「陛下、失礼ながら」
扉近くに控えていたメリアが俺に声をかけてきた。
「なんだ?」
「側室様の件ですが、この件は王妃様になるべく早くかつ慎重にお伝えください。くれぐれも誰かから王妃様に伝わりませんように」
「……わかっている」
非の打ちどころがないアデルの悪いところをあげるのならば、あまり人の話に耳を貸さないことだろう。
変な誤解を招かないよう早く話さなければならない。
「なるべく早く戻る」
そう二人に伝えると俺は愛しいアデルが待つ夕食に向かった。
「うまく話せますかね、陛下は?」
顔はしかめ面だがすごい勢いで見えなくなったジークの背を見ていたルイはつぶやいた。
昔から心の中ではいろいろ考えているが、それが言葉に表情にもあまり出ないジークのことだ。
うまくいくかどうか…
「もう時すでに遅いかもしれませんね」
同じようにジークを見送っていたメリアもそう返した。
どうかおかしいことになりませんように……そう願う彼であるが、その後王妃から自身が陛下の恋敵として認定されていることを彼はまだ露と知らない。




