12 ゲーテラに迫る謀略2《追放者SIDE》
「この私に王国を裏切れ、と……」
ガーベラ王国の使者の言葉を、ゲーテラはもう一度つぶやいた。
そのことを考えなかったわけではない。
だが、一国の重職に就いている人間が、他国に鞍替えするというのは――そう簡単な決断ではない。
立ち回りを一つ間違えば、すべてを失う危険もある。
この国とは違い、ガーベラにはそこまでの基盤がない。
果たして、今と同じか、それ以上の権勢を得られるか否か……。
「あなたほどの人物が、この国と運命を共にする必要はございますまい」
「我らの国にお越しいただければ、あなたの実力に応じた活躍ができましょう」
使者たちが畳みかける。
「……キラルがこのままガーベラに打ち破られるとでも? 我が国の力を甘く見ていないか?」
「人間同士の戦いであれば――ガーベラとキラルはともに大国ですから、容易に決着はつきますまい。どちらかがどちらかを滅ぼす、という極端な結果になることはないかもしれません。ですが」
「魔族と人間の戦いならば?」
「なんだと……!?」
ゲーテラは眉を寄せた。
それも――考えていた可能性の一つではある。
だが、まさか、こんなにも早く戦いの時期が訪れるというのか?
(魔族の人間界侵攻が、もう始まるというのか……いくらなんでも早すぎる……!)
「だが、お前たちの言うことはそっくりそのまま、こちらが有利になる状況もあり得るだろう。魔族がお前たちに味方をするとでも言うのか? そんなことはあるまい。ならば、我が国が魔族の侵攻を上手く利用するように立ち回れば、滅びるのはガーベラ……ということもある」
「確かに、あなた様の手腕ならば上手く立ち回れるかもしれません」
「ですが、それはあなた様がこの国で十全に腕を揮うことができれば、の話」
使者たちが告げる。
「先ごろは、第二王女のメルティナ殿下があなたを失脚させようと動いている、という報告も入っておりますよ」
「何……?」
「そう、確かこの国を追放された宮廷魔術師と懇意にしていたという王女でしたな」
「フレイか……」
彼の姿を思い浮かべ、ゲーテラは苦い顔をした。
なぜだろう、彼を追放してから、あらゆる状況が自分に牙をむいている気がする――。
「キラル国王からあなたへの信頼も薄れているのではありませんか?」
「あなた自身もそう実感しておられませんか、ゲーテラ閣下」
「むう……」
それは言われるまでもなく、感じ取っていることだった。
キラル王国内での自分の立場が崩れようとしている。
そして、その崩壊は日を追うごとに加速している。
王からの不信。
腹心である筆頭宮廷魔術師ジューガの無能さ。
さらに、宮廷魔術師の一人、カイルが自分のことを探っているという話も聞いていた。
このまま簡単に失脚するつもりはないが、しかし――。
「あなたのお立場は確実に悪い方向へと向かっています。その流れに抗う自信がおありですか?」
「抗えなかった場合――不遇を囲って一生を終えるつもりですか?」
「むうううう」
ゲーテラはうなった。
総合的に考え、悪い状況であることは確かだ。
だが、状況が悪いというのはピンチではあるが、チャンスでもあるのだ。
「この国に残っても目がない……しかも、国自体がどうなるか分からない――」
頭の中で思考が目まぐるしく巡る。
キラルに残るべきか。
キラルを出るべきか。
やがて、頭の中で一つの想いが固まっていく。
「俺は、もっと大きな舞台で活躍できる男だ……!」
ゲーテラの瞳が妖しく輝いた。
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