9 接近
「ところで――主」
グレイスが俺をアイマスク越しに見つめた。
「警告とご指示を仰ぎたく思います」
「えっ」
「主のところに五人の男が近づいてきます。どうやらガーベラ王国の手の者のようですが――」
「ガーベラ……魔王信仰の国じゃないか」
俺は顔をしかめた。
古の魔王ガルヴェラを信仰する邪教の国――。
ちなみに国名の『ガーベラ』は、そのガルヴェラが由来だという。
「彼らの表情には敵意があります。携行している魔導武具も厄介です。身の安全を確保してくださいませ」
「分かった。警告に感謝する」
俺はグレイスに礼を言った。
「じゃあ、いったん異空間に戻ってくれ。後は別の英霊を呼んで対処するよ」
「……戻るんですね」
「? 不満そうな顔だな?」
「もう少し側にいたかったので……」
「えっ」
「……いえ、なんでもありません。次のチャンスを待ちます……また呼んでくださいね」
妙に名残惜しそうにしながら、グレイスは異空間に去って行った。
「一体どうしたんだ……?」
「フレイ様って、少し鈍いところがありますよね」
「えっ」
レミナがジト目で俺を見ていて、ますます意味が分からなかった。
ともあれ、彼女と入れ替わりで別の英霊たちに呼びかける。
「ハーヴェル、スカーレット、待機を」
いざというときのために、二人を迎撃用に待機させた。
攻撃担当の魔術師ハーヴェルと防御担当の僧侶スカーレットだ。
何かあれば、すぐに実体化してここに出てくるよう指示しておく。
と、
ヴ……ンッ!
俺の周囲に赤い光の柱が出現した。
数は、五つ。
「これは――」
俺はハッと身構えた。
光の柱から、それぞれ人影が出現する。
いずれも黒いローブをまとった妖しい連中だ。
「短距離空間転移魔法、か」
うめく俺。
もともと空間転移系の術はコントロールが難しく、長距離移動より短距離移動の方が難易度がより高いとされている。
それをこうも正確に、しかも仮にも魔法防御が敷かれた執務室内に……。
「突然の来訪、失礼いたします」
彼らが言った。
フードの奥からのぞく顔は、いずれも中年男性のもの。
全員がニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
「何者だ、お前たちは」
俺はレミナをかばうようにして身構えた。
当然、問答無用で襲われても大丈夫なように、英霊たちに自動で迎撃させるモードに設定してある。
「フレイ・リディア殿、あなたを我が国にお迎えしたい」
彼らは恭しく一礼した。






