1 顔合わせ
「今日から新しく宮廷魔術師として勤務することになったフレイ・リディアです。よろしくお願いします」
俺は他の宮廷魔術師たちに一礼した。
アーシア王国の宮廷魔術師は俺を含めて全部で四人だ。
定員は六人らしいのだが、なり手がいないんだとか。
「最初に、この国における魔法関連の情報を知りたいと思っています。我々宮廷魔術師が取り組むべき課題を教えていただきたい」
「課題といえば、まずは魔獣討伐ですね」
レミナさんが言った。
「とにかく魔獣災害に対処するための人員が足りません。結果、辺境の村や町には少なからず被害が出ています」
「魔獣出現の頻度は?」
「多いところで月に五回程度、少ないところで三、四か月に一度、という感じです。国全体での魔獣出現数は一か月に五十回から六十回ほどですね。負傷者はおおむね、一か月に──」
「あ、いや、そこまで分かれば大丈夫です。ありがとう」
説明するレミナさんに礼を言う俺。
すらすらと数字が出てくる辺り、そういった細かいデータも全部頭の中に入れているということだろう。
「いろいろと教えてくださって助かります」
「そんな、私はこれくらいのことしかできませんし……実戦はからっきしなので」
「いえ、レミナさんは自分のことを『魔法使いとしては才能がない』と言っていましたが、そうやって情報をきちんと把握している方がいるだけで心強いです。実戦は──私が担当します」
俺はレミナさんに言った。
戦いに関しては、英霊たちを使役すればまず負けることはないだろう。
キラル王国にいたころは、他の魔術師に遠慮して、あまり前に出なかったのだが……。
ここではそうも言っていられない。
英霊の力をフルに借りて、この国の魔獣災害を減らしたい。
いや、減らしてみせる──。
「お二人からは何かありませんか?」
俺はレミナさん以外の二人の魔術師に話題を振った。
一人は二十代前半くらいの青年で、かなりの長身だった。
すらりとした体つきに、野性的で整った顔立ちの美青年。
名前はボルテックさんだ。
もう一人は十代後半くらいの少女だった。
綺麗な金髪をポニーテールにして、赤いリボンでまとめている。
明るい顔立ちの美少女だった。
名前はキキさん。
……なんか、宮廷魔術師が三人とも美男美女なんだが。
「んー……課題? 難しいことはよく分からないけど、魔法学園が定員割れを起こしてるんじゃなかったっけ?」
キキさんが言った。
「定員割れ……?」
「生徒が足りないって聞いたよー。ついでに教師も足りない。まー全部足りないんだね。あたしたちの国って弱小だから、あはは」
あっけらかんと笑うキキさん。
「キラルみたいな大国では魔導装置による大規模工事とか、治癒魔法使いを活用した病院施設なんかがが充実してるらしいな。けど、アーシアでは、とてもそんなことはできねぇ」
今度はボルテックさんが言った。
「魔導装置を作り出せる魔法技師も、怪我人を治せる治癒魔法使いも、俺たちの国には全然いないからな、がはは」
「笑い事じゃないよー、ボルテック」
と、キキさん。
「落ちこんでもしょうがねーだろ。だから笑うんだ」
「なるほど、ポジティブ」
「だろ?」
「えらい!」
「がははは」
気楽な二人の会話を聞いていると、こっちまで気持ちが明るくなるようだった。
ま、とりあえず課題は見えてきたな。
「総じて『魔法使いの数が足りない』というのが原因ですか」
俺はため息をついた。
ただ、逆に言えば『優秀な魔法使いの育成』という部分をクリアできれば、諸問題が一気に改善するかもしれない──ということでもある。
「まず最優先されるべきは国民の命です。魔獣災害に対する防備を全面的に確認し、不足があれば対処します。その上で人材育成や他の問題にも当たっていきましょう」
「承知いたしました!」
「りょーかーい」
「何でも言ってくれ、大将!」
三者三様の返事が返ってきた。






