16 魔族の動向
「相手の強敵は二体。魔王と、奴が乗る竜だ。同時に相手取るのが難しければ各個撃破を狙ってくれ」
俺は大まかな指示を出す。
細かな連携は英霊たちに判断させた方がいいだろう。
「それと――ケンカはするなよ」
ついでに言っておく。
「了解」
「喧嘩っ早いのは一部の英霊だけですから」
「主は心配性ですわね」
何人かの英霊が噴き出したようだった。
だって、こいつらすぐに意地を張り合うからな……。
内心でつぶやく俺。
と、
「ほう。追加で随分と呼びだしたな。これで俺を追いつめたつもりか、貴様ら……!」
ラギリムが笑った。
凄絶な笑みだった。
「こんなものは手始めにすぎんのだぞ」
「何……!?」
俺はラギリムを見据えた。
――『手始め』だと?
「どういう意味だ?」
たずねつつ、奴の言葉の裏を読む。
まさか――。
すぐにその考えに行き当たった。
まさか、今回の魔王出現は――。
「感づいたか、小僧。お前がこいつらを操る指揮官だな?」
ラギリムの笑みが深くなった。
「心して英霊たちを使役するがいい。俺の他にも魔王は次々に現れ、人間界全土に侵攻する。とおからず、ここは『人間界』ではなく『第二の魔界』となるであろう――」
「そうはさせない」
俺は静かに言い返した。
「アーシアの宮廷魔術師として、必ず国を守る。そして世界も――」
「ふん、人間ごときが束になったところで魔族に敵うものか」
うなる魔王。
「まあ、いい。まずはこの場で貴様らを蹴散らすとしよう。かかってくるがいい!」
ラギリムが朗々と叫ぶ。
「いけ」
俺は英霊たちに短い命令を下した。
「英霊たちよ、魔王の首を取れ。竜を倒せ」
「了解!」
彼らの返事が唱和する。
五十を超える英霊が一斉に魔王や魔竜と向き合った。
「【邪神の爆炎】!」
「【螺光黒牙弾】!」
「【雷の隕石】!」
「【戦神豪刃斬】!」
「【風王災破】!」
まずは遠距離攻撃だ。
メーヴェやハーヴェルといった魔術師を中心に、大火力呪文が次々に撃ちこまれる。
狙いは――魔王ではなく竜の方だった。
防御力だけでいえば、竜の方がずっと高い。
だから、あの竜を倒すのは簡単ではないが――倒すことさえできれば、もはや魔王の『盾』はなくなる。
その後は圧倒的有利に戦況を進められるだろう。






