6 ゲーテラ、魔獣迎撃に失敗して王から叱責される《追放者SIDE》
追放者サイドです。次回は主人公サイドに戻ります。
王国南部の森に魔獣が出現したとの報を受け、内務大臣ゲーテラは魔法戦団を迎撃に向かわせた。
が、その結果は――、
「魔獣に大敗しただと? 一体、何をやっている!」
「申し訳ございません、王よ」
王からの叱責に、ゲーテラは深々と頭を下げた。
王の信任厚く、宮廷内の一切を取り仕切る有能な大臣――。
そんな自分が、大勢の大臣の前で叱責されている。
エリート街道をまっすぐ歩いてきたゲーテラにとって、この上ない屈辱だった。
周囲の大臣が自分を見る目も、どことなく冷ややかに思える。
中には笑いをかみ殺しているような者もいた。
いい気味だ、と言わんばかりに。
(おのれ……!)
ゲーテラは横目でそいつをにらみつける。
ビクッとして視線を逸らすその大臣。
とはいえ、他にもほくそ笑んでいる者はいるだろう。
今回のことはゲーテラの珍しい失点だ。
そして、それは他の大臣が代わりに点数稼ぎをするチャンスともいえる。
大臣たちにとっては好機到来ということか。
(図に乗るなよ雑魚どもが……! 宮廷のナンバーワンはこの私だ)
内心の怒りは一向に収まらなかった。
王との謁見を終えると、ゲーテラは筆頭宮廷魔術師のジューガを呼び出した。
「何をやっている! 魔獣くらいさっさと退治せんか!」
怒りに任せて叱責する。
先ほどのうっぷん晴らしだった。
「申し訳ありません。ですが、魔獣はかなり強い部類で、簡単には撃破できそうにないようです」
「今まで、魔獣ごときに手こずったことはないだろう! なぜ、今回に限って苦戦しているのだ!」
「前にも申しましたように、魔獣迎撃の任はフレイ・リディアが一手に担っておりました。完全に任せっきりだったため、奴がどのように魔獣を退治していたのか、よく分からないのです」
「なんだと……?」
ゲーテラは怒りで全身を震わせた。
「筆頭であるお前が、部下の仕事を把握していないということか!」
「面目ございません……フレイが万事よくやってくれていましたので……」
「……フレイが、か」
もちろん、彼が自身の戦闘能力で魔獣を抑えていたわけではあるまい。
上位の魔獣は魔法戦団を数百人そろえても、時には敗走することもある恐るべき敵だ。
だとすれば、国中を覆う対魔獣障壁のおかげで、彼には特に出番がなかった……と考えるべきだろう。
だが、彼が去ったのと同じようなタイミングで障壁にほころびが生じた。
そして、そこから魔獣が侵入してきた。
「とにかく早期に魔獣を片付けねば、陛下の私への信任が揺らいでしまう。なんとしても始末しろ。魔法戦団などいくら使い潰しても構わん」
「は、はい……」
ジューガの声が震える。
さすがに魔法戦団を使い潰せ、などと言われては、平静ではいられなかったのだろう。
もう少し言葉を選ぶべきだった。
が、ゲーテラ自身もまだ頭に血が上っている状態で、そこまで冷静に言葉を選んで話せなかったのだ。
(まあ、いい。今は魔獣迎撃が最優先だ)
たかが魔獣の一体、すぐに退治できる。
ゲーテラは軽く考えていた。
今は、まだ――。






