2 結界術師たち
「いや、サボるなんて……作業お疲れさま。ただ状況を確認しに来ただけだよ」
俺は苦笑しつつ、彼をねぎらう。
「結界の進捗状況はどうだ?」
「二キロ圏内はだいたい覆ったかな。けど、魔獣を阻めるレベルの結界はさすがに時間がかかるぞ。基礎になる結界をまず作った後に、何重にも補強しなくちゃならない。そもそも、基礎自体にかなりの時間と魔力を費やす」
と、ライドールが説明する。
「土木工事なんかと一緒だな。基礎が大事なんだ」
「なるほど……スピードより確実に魔獣を防げるレベルの結界を作ることの方が大事だ。納得がいくまでじっくり作ってくれ」
俺は彼にそう声をかけた。
「結界が完成するまでの間は、魔獣出現を感知するたびに英霊を迎撃に向かわせる」
「そう言ってくれると助かる。結界術師の端くれとして、完璧なものを作ってみせる」
「ああ、頼む」
ライドールをねぎらい、俺は次のポイントに飛ぶ。
「次は結界作り全体の指揮をしている英霊だ。言ってみればプロジェクトリーダーだな」
俺はレミナに説明する。
「プロジェクトリーダー……」
「さっきの英霊はサブリーダーってところだ」
で、いよいよリーダーにお目通りだ。
三十分ほど飛行し、『彼女』のもとにたどり着いた。
『結界の女帝』バーバラ。
それが対魔獣結界作成のリーダーを務める英霊である。
二つ名の通り、結界術に関しては全英霊の中で最高峰の腕前を誇る。
俺とレミナは、そのバーバラの元にやって来た。
「薬草が足りねーんだわ」
開口一番、バーバラが言った。
ドレッドヘアに浅黒い肌、原色系の派手な衣装が特徴的だった。
南方大陸系の顔立ちをした美女だ。
「薬草?」
「あたしの魔法はちょっと特殊でね。いくつかの薬草を使って、自分の魔力を引き上げるのさ。で、ブーストした魔力で一気に結界を作っちまうんだわ」
「何かを摂取することで己の魔力に影響を与える――昔、とある国にそういう魔法技術があったと聞きます。今では失われた技術ですが……」
と、レミナが説明してくれた。
「へえ、俺は初耳だ」
「ま、千五百年も前の話だからね」
笑うバーバラ。
「で、そいつを使って魔力増大、からの結界作成をやってるんだけど、さすがにこうも範囲が広いとね……ストックしていた薬草を使い果たしちまったんだわ」
「じゃあ、その薬草を新たに手に入れれば、また結界を作れるんだな」
「だわ」
彼女がうなずいた。
「ま、あたしが駄目でも他の英霊たちは結界を作ってくれるだろうけど……」
「いや、お前の結界作成技術はハイレベルだ。しかも結界作成の取りまとめをしてくれている。メンバーから抜けるのは痛い」
と、俺。
「よし、その薬草を探してみる。まだ手が空いている英霊はいるし、そいつらに頼んでみるよ」
「任せるんだわ。がんばりな、司令塔」
司令塔、か。
「俺にできるのはお前たちのサポートだけだ。全力で務めさせてもらう」
俺は、俺の役割を果たすんだ。






