1 現在の結界状況
俺はレミナに今日の仕事の相談をしていた。
「作成中の対魔獣結界の様子を見に行こうと思うんだ」
「フレイ様が英霊に命じて作らせている結界ですよね?」
「ああ。進捗状況の確認をするつもりなんだ。よかったら、一緒に来てくれるか」
「わ、私もですか」
レミナの声がうわずった。
俺をジッと見つめている。
レミナって美人だから、あんまりまじまじと見つめられると照れるんだよな……。
特に最近は、こうして見つめられる頻度が高い気がする。
それだけ打ち解けてくれてる、ってことなら嬉しいが――。
「俺一人だとどうしても視点が偏るからな。レミナの目からも見てもらって、意見をもらいたいんだ」
「はい、ご一緒させていただきますっ」
レミナはにっこりとうなずいた。
移動は例によって竜に変身できる英霊――『暁の竜人』ジルに頼んだ。
竜になった彼女の背に乗り、俺とレミナは空路で現場に向かう。
「あなたたち、また一緒なんだ? 仲いいねー。あ、もしかして付き合ってたりする?」
移動の最中、ジルが興味津々といった態度でたずねてくる。
竜形態でも彼女は人型と変わらずに言葉を発することができた。
おしゃべり好きのため、移動中もひっきりなしに話しかけてくる。
「つ、付き合うなんて、そんな……っ」
レミナが口ごもった。
「ジル、俺たちは仕事の同僚だ。あまりそういうことを言うと、彼女に不快な思いをさせてしまうぞ」
「ふ、不快じゃありませんっ。全然ちっともっ!」
俺の言葉にレミナが言った。
えらく力説するなぁ……。
俺や英霊に気を遣ってくれたんだろうか。
あいかわらずレミナは優しくていい人だ。
「ありがとう、レミナ。けど、まあ言ったとおりだよ、ジル」
「ふーん、お似合いだと思うけどなー……ま、とりあえずはツッコまずにいてあげるね」
ジルが含み笑いをした。
「彼女の方はバレバレだけどねー」
「はわわわ」
なぜか焦るレミナ。
「ん、どういうことだ?」
意味が分からず、俺は首をかしげた。
「主の方が鈍感すぎるのがちょっと……ね。ふふ」
だから、どういう意味なんだ……?
「ちなみに、あたしも生前は人間の恋人がいてねー」
と、語るジル。
「人間と……」
レミナがつぶやいた。
「そ。異種族恋愛ってやつ。やっぱり、恋はいいよねー。生きてるうちに、好きな人といっぱい思い出作ってね。応援するから」
「ど、どうもありがとうございます」
「でも、今みたいに主はすごく鈍感だから、女の方からグイグイいかないと気づいてもらえないよ?」
「やっぱり……そうですよね……」
「レミナががんばらないと。ファイトだねっ」
「……はいっ」
レミナが何やら気合いを入れている。
風の音に交じってところどころ聞こえなかったが、二人で何を話していたんだろう……?
『守護翼斧』ライドール。
超一流の結界術師であり、巨大な斧を操る戦士でもある。
外見はたくましい大男で、見事なまでのスキンヘッドだった。
「よう、主。俺がサボってないか見に来たのか? がはは」
豪快に笑うライドール。
いかにも豪放磊落といった雰囲気だが、芸術を愛し、繊細な感性を持った男である。
これから、結界の進捗状況を聞いてみよう――。






