11 至高と漆黒1
「逆に私からも質問したい。なぜあなたは『最強』にそこまでこだわるのです、メーヴェ様?」
ハーヴェルがたずねた。
「あたしは――魔王を討つために戦ってきた。人間の限界を超える魔力を得て、それでもなお次の限界に、さらに次の限界に――どこまでも力を磨いてきた。すべては魔王を倒すためさ」
答えるメーヴェ。
「そして魔王ガルヴェラと戦った。結果は――あたしの敗北」
その話は以前にも聞いたことがあった。
彼女とガルヴェラとの因縁は根深い。
今も――そのわだかまりは続いているんだろうか。
「その無念があたしの中にずっとくすぶってるんだ。だから今も『最強』を目指し続けている」
「あなたは魔王ガルヴェラを討ちたい、と今でも思っているのですか?」
「さあ、どうだろうね……ガルヴェラが世界侵攻していたのは、大昔だからね。それに結局、それはガルヴェラの意思ではなかったらしいし……今となっては、魔王討伐自体はどうでもいいのかもしれない」
と、メーヴェ。
「ま、ガルヴェラ本人を前にすると、さすがに闘志とか殺意なんかも湧いてくるけど。でも、あたしはただ――過去の自分を乗り越えたいだけかもしれないね。『最強』になれなかった過去を、これから『最強』になることで払拭したい。それはあたしのプライドの問題だ」
「なるほど……あなた自身の誇りのために」
ハーヴェルは深くうなずいた。
「ならば、その誇りをないがしろにするわけにはいきませんね。不詳ハーヴェル。あなたとの勝負を受けさせていただきます」
「ふん、面白くなってきたじゃないか」
メーヴェがツインテールの金髪をかき上げた。
「存分に戦おうか」
そして、模擬戦が始まった。
他の英霊たちも光球の中から息を飲んで観戦しているようだ。
もちろん俺も、この好カードを注視している。
赤いドレスの美女と黒いローブの青年は、10メートルほどの距離を置いて向かい合っていた。
互いの魔力や攻撃力を考えると、至近距離といっていい間合いだ。
「あんたの魔法技術は英霊たちの中でも図抜けている。このあたしより上かもしれない。だけど、しょせん『技』は『技』に過ぎない。圧倒的な『力』の前には吹き散らされるのみ――」
メーヴェが右手の人差し指をまっすぐに向ける。
「吹き飛ばしてあげる――【邪神の爆炎】!」
得意の広範囲高火力魔法だ。
先ほどの模擬戦では、いずれも超一流の魔術師である五人の英霊をまとめて吹っ飛ばした超呪文。
「【邪神の障壁】」
ハーヴェルは魔力の防壁を生み出し、これを弾いた。
いや、弾いたというより、壁の中に爆炎が溶けこみ、消えさったような感じだった。
「何――?」
「あなたの膨大な魔力がこもった呪文を、正面から受け止めるのはさすがに厳しいですからね……受け流させてもらいました」
と、ハーヴェル。
「同じ邪神ザルクの呪文――同質の魔法なら受け流しやすい、ってこと? ふん」
メーヴェが白い歯を見せた。
「なら、受け流せないほどの高火力連続呪文で押し切ってあげる」
「威力ならともかく、発動速度なら私は負けません」
メーヴェはともかく、ハーヴェルも徐々に闘志を高めているようだ。
俺はかたずをのんで対決の続きを見守る――。






