8 主と英霊2
「ふん、協力してもらいたいも何も――いつも通り命令すればいい。そうすれば、この最強魔術師メーヴェがなんでも叶えてあげる」
鼻を鳴らしたのは、『至高の魔術師』メーヴェ。
全英霊中で最大の魔力を持つ魔法使いだ。
かつて魔王ガルヴェラに挑んだ勇者パーティの一員でもある。
「いや、ちょっと待て。最強を名乗るんなら、この俺を倒してからにしてもらいたいもんだな」
「時代が違うし、貴方の強大な魔力は存じているが――簡単に最強を名乗られては困るわね」
「同感です」
「同じく」
などと、魔術師系の英霊たちが言い合い始めた。
いくら相手がメーヴェでも、『最強』という称号にはそれぞれのこだわりがあるんだろう。
彼らは自分たちが生きた時代では、ほぼ全員が最強と呼ばれていただろうから……。
「なら、試してみる? あたしはいくらでも受けて立つ」
メーヴェがまた鼻を鳴らした。
自信に満ちあふれている。
「むむ……」
他の魔術師たちがうなった。
「確かにお前は強いが……」
「俺たちだって、プライドがある……」
気圧されつつも、簡単には引かない感じだ。
うーん、これはどっちも容易には引き下がらないかもしれないな。
英霊同士がもめるのは避けたい。
「模擬戦でもさせるか……」
ふと考える。
が、
「主、彼らはいずれもその時代時代で英雄と呼ばれた者たちです。優劣をつけることはできるかもしれませんが、負けた方は誇りを傷つけられましょう」
ハーヴェルが耳打ちした。
「うーん……俺はちょっと考えが違うな」
「……と仰いますと?」
「彼らだって無敗の英雄ばかりじゃないだろう。強敵に負けたことだってあるだろう。そこから這いあがったからこそ、英雄と呼ばれてるんじゃないのか?」
俺はハーヴェルに言った。
ハーヴェルだけじゃなく他の英霊たちも聞き入っているのが分かる。
「仮に全員がメーヴェに負けたとして――それで凹んで終わり、ってことにはならないんじゃないかな」
「主……」
「モヤモヤしているなら吐き出させるのも手だろう。互いの実力を知ることで、互いに敬意を払えるんじゃないか。勝った方も負けた方も」
「……なるほど」
ハーヴェルがうなずいた。
「忠告はありがたく受け取るよ。でも、ここは彼らのモヤモヤを解消する方を取ろうと思う」
「いえ、主が仰ったことに理があるように思います。何よりも――主の思うままにしていただければ、私は従います」
ハーヴェルが微笑んだ。
「あなたを信じていますから」
「ありがとう、ハーヴェル」
俺も微笑みを返し、みんなに宣言した
「よし、模擬戦だ」
というわけで、唐突ではあるが、英霊同士の戦いが始まる――。






