8 和やかな職場
「おっはよー」
「なんだ、二人とも早いじゃねーか」
ボルテックとキキが出勤してきた。
「いや、もう出勤時間だし」
「あたしは他のところで一仕事あったんだよ」
無邪気に笑うキキ。
「俺はもともとこの時間からの出勤だからな」
と、ボルテック。
「そうなのか?」
「アーシアは『フレックスタイム制』といって、基本的に出勤時間をある程度本人が決められるんです。部署や役職にもよりますけど……」
レミナが説明した。
「知らなかった。キラルは出勤時間が一律だったからな……」
「俺は夜に酒場に行くことが多いから、朝はどうも苦手なんだよ。だから遅めの出勤にしてもらってる。その分、みんなより遅くまで働くから労働時間は同じだ」
ボルテックが言った。
「もちろん、人手が必要なときとか早出しなきゃいけないときは、そうするがな。俺たちは別にそういう職種でもないし」
「ああ、その辺はボルテックに任せるよ」
「っていうか、あんたは休まなくていいのか、大将?」
「えっ」
ボルテックの言葉にキョトンとする。
予想外の言葉だった。
「昨日、あれだけ活躍したんじゃねーか。ちっとは体を休めろ」
「いや、まあ、仕事があるし」
「まず体を大事にしてくれ。仕事のために体を壊しちゃ、なんにもなんねーだろ」
妙に優しく諭すボルテック。
キラルでは休むことを勧められるなんてなかったな……。
仕事は忙しかったし、有給休暇なんて誰も取っていなかった。
「そうだよ。なんなら、今からでも今日はお休みにしたら? フレイくんの仕事はあたしたちが……えーっと、まあ、やれる範囲でやるし」
「がはは、大将の仕事はなかなか肩代わりは難しいものもあるけど、簡単なことは俺らがやるからよ。休んでくれや」
「ありがとう、二人とも。ただ、俺は本当に大丈夫だ。休むほどの疲労じゃないよ」
俺は二人に礼を言った。
「休むべきだと判断したときは遠慮なく休ませてもらう。キラルじゃ……なかなか休みを言いだせる雰囲気じゃなかったからな」
と、苦笑をもらす。
「休暇は労働者の権利だぜ、大将」
「君はちょっと休みすぎだと思うけどね、ボルテックくん。ふふ」
「あ、そういうこと言うか、お前」
「この前だって飲み会に行くためのコンディションを整える、って一日休んだし」
「ち、ちゃんと最低限の仕事は済ませたからよ!」
「もう。キキちゃんもあまりボルテックさんをからかわないでね」
レミナがクスリと笑う。
「はーい」
にっこりとうなずくキキ。
職場には、和やかな空気が流れていた。






