4 魔獣の暴走を自動的に解決する
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「ここがアーシア王国か……」
キラル王国を出て三日、俺はアーシア王国に入った。
各国の宮廷魔術師の交流会などで、いくつもの国を巡った俺だが、この国に来るのは初めてだった。
大国同士の交流からはカヤの外。
そんな小国である。
華美でせわしない雰囲気のキラル王国とは違い、のんびりとした雰囲気のある国だった。
道行く人々の顔も穏やかだ。
「俺はこういう雰囲気のほうが好きだな……」
来て間もないところだが、早くもアーシアが好きになりかけていた。
……といっても、ここで就職できるとは限らない。
と、そのときだった。
「スタンピードだ~!」
誰かが血相を変えて走ってきた。
「町外れの森から魔物の群れがこっちに向かってきてるってよ!」
「数百体もいるらしいぞ!」
「王国の騎士団は来てくれるのか!?」
「こんな辺境まで騎士団が来るわけないだろ! 冒険者ギルドに頼みに行くぞ!」
町の人たちはパニック寸前だった。
「暴走、か」
その名の通り、モンスターが理性を失い、破壊衝動のまま滅茶苦茶に暴れまわる現象だ。
特に集団でこれが起きると、一つの都市が壊滅することさえ、ある。
そのスタンピードが街はずれで発生したようだった。
耳を澄ますと、地響きが聞こえてくる。
無数のモンスターの足音だ。
「規模によっては、かなり厄介なことになるぞ……」
つぶやいたとたん、
『【全自動・英霊召喚】が発動しました。結果を表示しますか?』
空中から声が響いた。
「頼む」
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自動召喚種別:迎撃
召喚英霊 :獣操者ガドローア
英霊種別 :支援型
英霊等級 :S
自動行動結果:暴走モンスター328体すべてを手なずけ、待機中
──────────────────────
『ガドローアは当主の指示を仰いでいます。連絡しますか?』
あの一瞬でもうスタンピードを止めてしまったのか。
確かに、さっきまでの地響きが消えている。
「ああ、彼女との通信魔導回線を開いてくれ」
英霊たちは自動的に召喚されて、俺があらかじめ設定した方針に従い、独自の意思で行動する。
ただし、その方針に照らし合わせただけでは判断に迷う事態も、当然ある。
そんなとき英霊は俺に指示を求めてくるのだ。
「聞こえるか、ガドローア――」
※
SIDE 【自動召喚・獣操者ガドローア】
まばゆく輝く光球が一直線に空を翔ける。
しばらく進んだところで、その光球が弾け散った。
「ふうっ」
輝きの中から現れたのは、一人の女だった。
外見は二十代後半くらいか。
なまめかしい太ももがあらわな緑色の衣装にマント。
長い黒髪に白い肌の美女──。
千年ほど前に活躍した最強クラスの獣操術師ガドローアだ。
「現世には久しぶりに呼ばれたな」
空中に浮いたまま、ガドローアがつぶやく。
眼下には土煙が上がっていた。
300体以上のモンスターが猛スピードで接近しているのだ。
ぐがあああああああああああおおおおおおおおおおおおっ!
無数の雄たけびが聞こえる。
強烈な敵意と破壊衝動。
常人なら気絶しかねない数百単位のモンスターの雄たけびも、ガドローアにとっては小鳥の鳴き声に等しい。
すべての魔獣を統べる力を持つガドローアにとっては。
「あの男は、我ら英霊の力をできる限り使わないようにしていたようだが……方針を変えたのか? まあいい」
呼び出されたからには、それに見合う活躍をするだけだ。
「主のために一肌脱ぐとしよう。獣操者ガドローアの名に懸けて──」
彼女は白い指先で眼下を指さした。
「【テイム】」
唱えたのは、基本となる最下級のテイム呪文。
ただし、最強テイマーであるガドローアが唱えれば、最下級といえども絶大な威力を発揮する。
うおおおおおお……おお……ぉぉぉぉ……んっ。
モンスターたちの声は次第に小さく、穏やかになっていく。
数分後、暴走状態だったモンスターたちは完全におとなしくなった。
「これで無力化は完了、と。さて、ここから先の行動は主に判断を仰ぐとしよう」
ガドローアはふんと鼻を鳴らした。






