7 レミナとお仕事
「今のも英霊の力なんですね……すごいです」
レミナは感嘆した様子だ。
「マドックは七百年ほど前、とある王国の文官をしていた。歴代最高の頭脳と事務処理能力を誇った……っていう話だ。だから書類仕事はお手の物だよ」
説明する俺。
「レミナやボルテック、キキの書類仕事もマドックに頼んでみるか」
「えっ、いいんですか?」
「マドックが了承してくれれば、だけど」
英霊は使い魔だけど、奴隷じゃない。
彼ら自身の意思がある。
俺は主として彼らに強制するための力を持っているけど――使いたくはなかった。
「どうだろう、マドック?」
本人に確認を取るため、英霊を直接召喚する。
「もちろん構わない。私は事務仕事大好き人間なのでな」
現れたのは、五十歳くらいの眼鏡をかけた男だった。
理知的な容貌で、眼鏡の奥の瞳は爛々と輝いている。
「死んでからが事務仕事がなくなってつまらん。私にもっと書類をよこせ。課題をよこせ。難題をよこせ。どんなトラブルも解決策を見出してみせよう」
さらに目を爛々とさせる。
「ああ、それは助かる……じゃあ、まず宮廷魔術師関連の書類を一通り見てもらって、気づいたことや提案があれば、後でまとめて俺に報告してほしい」
「心得た。このマドックに万事お任せあれ」
眼鏡をクイッと上げるマドック。
俺は事務仕事がそれほど得意じゃないから、本当に頼もしい。
「では、少しの間、書類を確認させてもらう。ついでにこの国についても深く知りたいのだが……」
と、マドック。
「この国のことを知ってこそ、よりよい提案ができるというもの」
「じゃあ、書庫に案内するよ。そこで仕事を頼めるか」
「心得た」
ということで、マドックにはしばらく書庫にこもってもらった。
書類自体はすぐ終わるそうだが、書庫の資料に一通り目を通したい、ということだ。
あの調子だと数時間くらい書庫にこもるかもしれないな……。
俺は書庫からレミナの待つ執務室に戻ってきた。
「よかったな。マドックも嬉しそうだし、レミナたちの負担も減るし」
「はい、ありがとうございます!」
レミナは俺の手をそっと握った。
「ん?」
「あっ、す、すみません! 私、どうして手なんて握って……嬉しくて、つい……」
慌てたように手を離すレミナ。
「本当に申し訳ありません……こんなこと、他の方にしたことなかったのに……」
「いや、そこまで謝らなくても」
「馴れ馴れしい態度を取ってしまったかと……」
さっきからレミナは恐縮しまくっている。
「その、フレイ様の奥様に怒られてしまいますね」
「? 俺は独身だが」
「ほ、本当ですか!」
レミナがパッと顔を輝かせた。
「あ、でも、決まったお相手はいますよね?」
「いないぞ」
「本当ですか!」
さらに顔を輝かせるレミナ。
いや、喜びすぎだろう。






