4 カイルの報告《追放者SIDE》
キラル王国の宮廷魔術師カイルは、先の魔獣迎撃戦について、国王の前で報告を行っていた。
「なんと――『赤の魔王』とは伝説にある魔界七大魔王の一つ。その配下が攻めてきたというのか」
王が眉を寄せる。
「しかし、それをお前が食い止めたのだな。我が国への侵攻を未然に防いだ功績は大きい。それに魔王に対しても、我が国には容易に攻めこめないという牽制にもなろう。よくやったぞ、カイル・ソーンウィール」
「もったいなきお言葉にございます、王よ」
王のねぎらいに、カイルは恭しく頭を下げた。
「それを指揮した筆頭宮廷魔術師ジューガ・エルガ。お前もよくやった」
「もったいなきお言葉にございます、王よ」
隣でジューガが頭を下げる。
その口元が笑みの形に緩んでいた。
(あんたの手柄じゃないだろ……)
カイルは内心でつぶやく。
もちろん、自分の手柄でもない。
「恐れながら、申し上げたいことがございます。王よ」
「なんだ、申せ」
「お褒めにあずかり恐縮の至り……なれど、先の魔族と魔獣の侵攻を食い止めたのは私ではありません」
「ほう?」
「お、おい、カイル、何を――」
「私や他の宮廷魔術師、魔法戦団はいずれも魔獣の前になすすべがありませんでした。戦力の差は圧倒的といってよかったのです」
カイルが告げる。
「そのとき、他国の魔術師が現れ、私たちを救いました。魔族も魔獣もその者と使い魔が一掃したのです」
「なんと……そのような猛者が、我が国の外におるのか」
王が目を輝かせた。
「ぜひ、その者を召し抱えたいものだ。のう、ジューガ?」
「そ、それはその……」
ジューガの目が泳ぐ。
すでに追放した人間だ、とは言いづらいのだろう。
と、そのジューガがものすごい目でこちらをにらんだ。
余計なことを言いやがって、と視線で訴えかけている。
カイルは彼の視線に対して、軽く会釈した。
それから王に向き直り、
「その者の名は、王もよくご存じかと」
「ほう?」
「高位魔族と魔獣軍団を見事に打ち倒した者の名は――」
「お、おい、やめろ、カイル!」
ジューガの制止も聞かず、カイルは言い放った。
「フレイ・リディア。かつて我が国で宮廷魔術師を務めていた男です」






