5 英霊チーム2
「残る魔獣は三体。そしてそれを操る魔族か」
戦いが始まって数分。
すでに十体の魔獣が掃討されていた。
さらに残り三体も、ほどなくして討たれる。
「主、後は魔族だけだな。早く俺に討たせてくれよ」
ゴルが言った。
「待て。まだあいつから聞き出す情報がある」
「まどろっこしいな。どうでもいいから、さっさと殺しちまおうぜ」
「……落ち着け、ゴル」
さすがにゴルは血気盛んだ。
俺は彼をなだめ、空中の魔族に視線を向けた。
「ば、馬鹿な……兄上――いや、『赤の魔王』様から授かった選りすぐりの13体の魔獣が、たった数分でここまで……」
その魔族は、呆然とした顔で俺や英霊たちを見下ろしていた。
「人間に、ここまでの戦闘能力を持つ者たちがいたのか……!?」
確かに、魔族や魔獣は圧倒的な存在だ。
特に上位の存在の力は想像を絶する。
名だたる騎士や魔法使い、あるいは冒険者などであっても、立ち向かえるものはごく一部。
だが、俺の使い魔である英霊たちは――戦闘系の力を持つ者は、ほぼすべてがその『ごく一部』に属する者たちなのだ。
「勝負は見えたな、魔族」
俺は魔族を見上げた。
青い肌をしていることを除けば、人間とほぼ同じ容姿である。
二十代前半くらいの血気盛んな青年、といった外見だった。
「俺の名はギギリム! 栄えある『赤の魔王』ラギリム様の腹心よ!」
「――アーシア王国筆頭宮廷魔術師、フレイ・リディアだ」
魔族ギギリムの名乗りに、俺も名乗り返した。
相手が魔族だろうと、この辺は戦場の礼というやつである。
「お前たちの目的は人間界への侵略か? それとも他に目的でもあるのか?」
たずねる俺。
『赤の魔王』ラギリムの狙いが、前魔王ガルヴェラの命なのか。
それとも純粋に侵略目的なのか。
「侵略、だと」
ギギリムが俺をにらんだ。
すさまじい怒りの形相だ。
「何を白々しい! 侵略は、貴様らの方ではないか!」
「えっ……?」
予想外の言葉に、俺は戸惑った。
「侵略者め……」
ギギリムはあいかわらず俺をにらんでいる。
「人間が、魔王の領土を侵略したというのか……?」
「その準備をしている。大規模な魔界侵攻作戦の準備をな」
ギギリムが言った。
「『青の魔王』や『緑の魔王』辺りは穏健派ゆえ静観のようだが――我が主『赤の魔王』様は違う! あの方は仰せになった。『人間どもを根こそぎに薙ぎ払い、我らが世界に攻め入ろうとしたことを千年先まで後悔させよ』と」
「――だから、お前が派遣された、と?」
「そういうことだ!」
ギギリムが叫ぶ。
「……確かにお前は強い。俺は殺されるかもしれん。だが覚えておけ! 『赤の魔王』様は人間どもに決して臆さぬ! 俺が殺されても、必ずや次の者がやって来る!」
「……経緯はどうあれ、魔王の侵攻が始まるということだな」
「侵攻ではない! 貴様ら人間に対する――侵略者に対する制裁だ!」
「魔族風情がいつまでも語ってるんじゃねーよ」
ゴルが一歩前に出た。
「――!? ゴル、何を――」
嫌な予感を覚え、俺は彼に声をかける。
が、一歩遅かったらしい。
「【光輪の斧】!」
スキルを発動して、巨大な斧を投げつける。
斧は光を発しながら回転し、楕円の軌道を描いて飛んでいき――、
ざんっ!
ギギリムの首を一撃で刎ね飛ばした。






